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ニュース〜医療の今がわかる

"10mlバイアルなら国産3000万人分" 9日のワクチン意見交換会


 篠田敏雄・日本透析医会
「基礎疾患を持つ患者の中に透析患者28万人を入れていただけるのでないかと考えており、嬉しく思っている。透析患者は数が明らかなうえに個々の施設で接種することも容易だ。一方で透析に関与する医療従事者も8万6千人いる。沖縄のデータでは、先々週まで透析患者の罹患が20人に対してスタッフは30人。スタッフの方が多い。もしスタッフが1週間から2週間を自宅待機するようなことになると通常の透析医療に支障が出る。都内でも既に散発的に透析患者の罹患が出ているが幸い今のところ各施設が冷静に対応してパニックにはなってない。5月に学会と医会でガイドラインと緊急提言を出したのが浸透しているのだと思っている。インフルエンザが重症化した場合、感染症の治療施設でかつ透析も行えるというような所は少ないので殺到したら機械が足りなくなる。そうした施設に対する何らかの援助も期待したい」

 横田俊平・日本小児学会理事長
「全体としては妥当な案。ただインフルエンザ対策は必ずしもワクチンだけではないし、ワクチンに関して日本は遅れている。抗インフルエンザ薬の使用も始まっており、行政の備蓄分放出も同時に考えてほしい。現状は小康状態になっているが、南半球からウイルスが戻ってきて次のピークになるとすると10月中旬や下旬がピークになるだろう。重症軽症を分けて、重症患者を診るネットワークを早くつくりたいところだが、中心になると思われる大学病院や国立病院ではICUを管理するドクターたちの中に感染症を持ち込まれたら困るという意識もあるようだ。治療場所を確保するために何ら課の形で公的に宣言してほしい。沖縄では定点あたり50人の患者数で5人が呼吸器に乗って1人は血液浄化までしている。私どものいる神奈川にこのデータを当てはめると33人が呼吸器に乗ることになる。機器の準備も必要だろう

ワクチンの接種順位が概ね決着したら今度はワクチン配布をどうするかが問題になる。疾患によって差があるだろう。9月4日にCDCから報告があったものによれば米国で死亡した18歳以下の36人(?)のうち22人が発達障害。彼らは肺の中にバクテリアが住んでいるので二次感染に注意が必要だ。

それから大臣との意見交換会の際に小児については無料にしてほしいとお願いした。経済的状況で打てない子供がいないようにしてほしい。2人も3人も子供がいる家庭もある。それからワクチン政策に反省点がなかったかという点では、私は以前から官と民が定期的に会合を持つべきだと主張してきた。米国のACIPのように。今回の議論は、50年前にポリオでソ連から緊急にワクチンを輸入しなければならなかった時と同じだ。50年間、何も進歩してこなかったと言える」

 席順から言うと、田代眞人・国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター長の番なのだが、なぜか順番が飛ばされる。田代氏も、あらかじめ承知していたかのように流す。

 稲末孝思・東京都健康長寿医療センター病院感染症科部長
「高齢者の院内感染とインフルエンザワクチンの副反応について述べる。スタッフが罹患すれば容易に院内感染する。しかし出勤停止にすると病院の機能が落ちてしまう。とにかく病院の機能を維持して医療を提供したい。だから医療者が最優先なんだというところが国民にきちんと伝わっていないのでないか。情報発信する際には国民レベルの理解度を高めてほしい。

副反応に関して怖いのが、紛れ込み事故。ワクチンを打った日に急に亡くなった場合、ワクチンのせいだと思ってしまう。ギラン・バレーが出ても同様。76年の米国の事件は、いまだに教科書的にはワクチンのせいでギラン・バレーの発症が増えたことになっているが、その後の調査ではどうも違うようだ。それなのになぜ間違ったことが定説になったかというと、マスコミの騒ぎに巻き込まれてそうなっちゃった。否定できないと言っているうちに本当になっちゃったというヤツだ。こうしたことを考えると、輸入ワクチンの安全性を確かめる時、最初に事故を起こしやすい高齢者に使うのはやめた方がよい。年間100万人亡くなるうちの大多数は高齢者だから、必ず接種したその日に亡くなる人が出てくる。マスコミの餌食になることのないように治験計画は組んでほしい」

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