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「急性期」って、どういう意味?

■ 急性期の定義、「医療ニーズは考慮していない」 ─ 厚労省
 

○ 「急性期」の定義について議論した9月9日の「慢性期入院医療の包括評価調査分科会」(分科会長=池上直己・慶大医学部教授)から。「一般病床の一部に医療区分を導入するか」という問題との関連で議論された。

[池上直己分科会長(慶應義塾大医学部医療政策・管理学教授)]
 ちょっと事実を確認したい。「急性」「慢性」という表現を今の議論から解釈すると、病態が「急性」「慢性」というよりも、医療ニーズが非常に高くて医師や看護師の管理が必要だという意味で「急性」という言葉を使っていると解釈したが、もしそうであれば、「医療区分」と割合に近い概念ではないかと感じた。まず、そうであるかどうかということが第一の課題だと思う。

 もう1つの課題は、こういうことが分かった上で、今、「一般病床」である所でも、医療療養病床で採用されている「医療区分」「ADL区分」に基づく慢性期包括評価という報酬体系を「一般病床」においても90日超において適用するのかどうか。もし、適用されるのだとしたら、必ずしも当該病棟から追い出されるということはなくて......。

 もともと包括評価というのは、病棟の基準に基づいて決めるのではなく患者特性に基づいて決めるという考え方なので、この数値を見て、(一般病床の一部と医療療養病棟が)「似ている」とか「似ていない」という議論をしてもあまり生産的ではないと思ったので、まず「急性」というのは、「医療ニーズの程度」というふうに置き換えてよろしいかどうか。

[元厚労省・佐栁進委員(国立病院機構関門医療センター院長)]
 その要素と、もう1つはやはり(治療を)急がなければいけないのか、少し様子を見ながらやれるものなのかということが、(急性と慢性の)根本的な差だと思う。(中略)
 「時間経過」という要素が加味されないと、なかなか(結論が)出てこない話だという気がする。

 (宇都宮企画官が佐々木補佐に指示を出している)

[池上分科会長(慶大教授)]
 いや、あの......、ただそれは、私が2番目に提示した課題と結び付いてくるわけで、「一般病床」の中で、こういう包括評価の体系を併用するということであれば、そういう患者は「一般病床」の区分の出来高に戻るということが、常にできるかどうかは分からないが......。
 これは、施設基準をつくるということではなく、こういう分類に基づいた支払い体系が良いか悪いかではなくて、その可能性を提示しているだけなので......。2番目の課題について、事務局(保険局医療課)の考えを......。

[保険局医療課・佐々木健課長補佐]
 すいません、DPCの分科会では、急性期の定義をして議論をしているので、ちょっとご紹介する。「急性期」とは、患者の病態が不安定な状態から、治療によりある程度安定した状態に至るまでということで、そういう(患者の)状態を指して定義付けをしている。参考までに紹介した。

 ▼ 「急性期」の定義をめぐっては、大学病院など高度な医療を提供する「特定機能病院」を優遇する「DPC2階建て構想」を視野に入れた議論の中で問題になった。
 2007年10月22日の中医協・DPC評価分科会で、厚労省は「患者の病態が非常に重くて重度な急性期としての治療が必要な場合」(パターンA)と、「患者の病態が重度ではなく、軽度な急性期の治療でよい場合のような病態をたどる場合」(パターンB)という区分を提案したが、池上直己委員(慶大教授)が異論を唱え、頓挫した。最終的に、「急性期とは、患者の病態が不安定な状態から、治療によりある程度安定した状態に至るまで」という幅広い定義にとどまった。

[池上分科会長(慶大教授)]
 ありがとうございました。じゃ、不安定な間は「急性期」ということでよろしい?

[医療課・佐々木補佐]
 はい。

[池上分科会長(慶大教授)]
 じゃ、不安定な間は特に期間を決めずに、不安定である限り「急性期」ということでよろしいですか。

[医療課・佐々木補佐]
 特に、「何日まで」ということは決めていない。

[保険局医療課・宇都宮啓企画官]
 補足いたしますと、今、分科会長がおっしゃったように、「ある程度安定するまで」ということで、その安定の状態は治癒もあれば、軽快も緩解もある。どのレベルであっても、「ある程度安定するまで」ということで考えている。ですから、今おっしゃったように不安定な状態の時はまだ「急性期」の中にあるということが1点。

 それから、先ほど(分科会長から)医療ニーズのお話があったが、(DPC分科会で審議した急性期の)定義においては、医療ニーズということは考慮していない。あくまで、「病気の状態がある程度安定するまで」ということ。

 これは、(中医協下部組織の)DPC評価分科会(分科会長=西岡清・横浜市立みなと赤十字病院長)として、こういう定義を提案して、(中医協・診療報酬)基本問題小委員会で了承されているので、もし、こちらの慢性期分科会で、「そういった定義とまた別の角度から定義を変えたい」ということであれば、それは基本問題小委員会で定義し直すとか、調整などが必要になると思う。

[武久洋三委員(日本慢性期医療協会会長、博愛記念病院理事長)]
 平成19年度のDPC分科会で「急性期」の定義がなされており、概略はそれでいいと思うが、問題は85歳、90歳の人がいろいろな病気になったとき、「ある程度安定した状態」にいつなるのか。これが40歳、50歳なら分かる。

 安定した状態が来なければずーっと急性期でいるかというと、そうでもないと思う。そのために、(一般病床の入院が)90日という縛りがあるんだろうと思う。

 「急性期」の定義を曖昧にしておいたほうがいいのか、じゃ、「高度急性期」はまた違うのかとか。(委員ら、笑い) そういうことになってくると、非常に分かりにくくなって......。

 われわれは一応、急性期の処置が終わって、しばらく経てば急性期の処置はいらないのだから、次のステップに行くのではないかと私は理解していた。
 手術などいろいろな治療をしてある程度良くなったけれども、「またちょっと悪くなるかも分からないな、安定していないな、じゃ、(病院に)1年間おろうか」ということじゃ、宇都宮さんの(急性期の定義)と違うと思うが、そういうふうに取られかねない定義になっていると思う。

 われわれ、(急性期病院から患者を)受ける(慢性期病院の)立場としては、急性期病院(を退院して)から1週間で、また術後5日で(医療療養病棟に)来る。「抜糸はそっちでしてくれ」と。そうすると、われわれ(慢性期病院)は急性期(の患者)を診ているということになる。

 その辺のところは病院によって違うと思うが、どんどん(ベッドが)回転している所は、そんなことよりも(先進医療や臨床研究など)もっとレベルの高いことをやっていると思うが、地域の中小病院の「地域一般病床」みたいな所では、今の(厚労省の曖昧な)定義でいいと思うが、たぶんDPC(病院)で(急性期を)定義すると、慢性期はないんじゃないかと心配する。

 DPC(分科会)でそういう定義をしているのだから、われわれはそれに文句を言うわけではないが、現実問題として、急性期と慢性期の見方は難しいし、また急性期の患者さんを回復期や亜急性期や慢性期(の病院)で受けているケースもある。
 「急性期病床」というと、また違うのかな。「急性期医療」というのはここまでで、「慢性期医療」というのは......。境界域の所にかなりの幅があるのではないかと思う。現実に、医療療養病床でも急性期の治療が十分に終わっていない人をたくさん受けている病院もあるので、その辺......。あまり、(急性期と慢性期を)ピシャッと整理できないと思う。(中略)

 「医療区分」を「一般病床」の「13:1」「15:1」に入れることによって、無理に退院する必要がなくなってくるので、そういう方向で......。今の出来高でいつまでも行くよりは、ある程度(一般病床に)「医療区分」を入れて、ただ、それにはお医者さんの数とか、看護師さんの数が相対的に多いことを加味して点数(設定)はなされると思うが、そういう方式を......。

 いわゆる、(発症直後の急性期を経過した)「ポスト・アキュート」的なところには、「医療区分」「患者分類」の妥当性がある程度評価されているので、(医療区分を一般病床の「13:1」「15:1」に入れるという)そういう方向に行く......、そのほうが理解を得られると思っている。

[佐栁委員(関門医療センター院長)]
 「急性期」と一概に......。実は、本当に悩みきっている話。急性期病院で救命救急センターを動かしているような所で......。85歳で全身どこもここも悪くなっているという状態で、むしろ特定の機能に特化した病院ではもう診られない。だから、(2次救急で対応できずに)一番高度な(医療を提供する3次救急の)所に回ってくる。

 以前、「70歳を超えたら手術はしない」と言っていた時代の急性期と、今の、(高齢者にも)対応している急性期とは相当違ったものができている。

 85歳の高齢者を手術して、その人のQOLは確かに上がる。その段階では。単なる延命医療ということではなく、それをやらなかったらもうお亡くなりになっているでしょうし。それなりのことはやっている。

 (高齢者の延命医療など)非常に重い課題を、実は「急性期」の中に背負い込んでいる。そこのところを......、だから、あまりクリアカットにしてしまうと......、クリアカットで押し付けてしまうといろいろなところで矛盾が出てくる。
 極端に言えば、「何歳以上の急性期」という形で、小児救急があるように「高齢者救急」というのが別途あるとか、それぐらいクリアーにできるなら、それも1つのやり方かもしれない。それはたぶん失礼な話になる。個々の患者さんにとってみれば。(中略)

 施設を類型化して分けるのか、診療報酬点数の1つの枠として(医療区分を)入れていくのか、いろいろ手法はあると思うが、十分慎重にしないと、一面だけで見ていくと非常に危険な状況がある。

[池上分科会長(慶大教授)]
 すみません、ちょっと申し訳ございませんが、ここで「急性」「慢性」の議論をすると......。(委員ら、笑い)
 なかなか結論が出ないと思うので、ちょっと申し訳ないが、時間の関係で、ここでは何を「急性」「慢性」とするかの解釈を出すことはできても、実際の診療報酬に結び付く形での結論を出すことはできない。(以下略)
 
 

 
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