新型インフル 「厚生労働省を信じてはいけない」
ここまでメチャクチャな議論が通ってしまうのは、そのようなシナリオを厚生労働省の医系技官が書いていて、出席者たちはそのシナリオに従って動いているだけだから。現在のインフルエンザ対策のトップは上田博三・健康局長という人。SARSの時にもちょうど課長で対応にあたったので『自分は感染症対策のエースだ』と言っているらしい。バカを言ってはいけない。ローテーションで2年かそこら回るだけのポストにいる時にたまたま遭遇した、それだけでエースになれるのだったら、世の中に専門家など必要ない。注意してほしいのは、その能力があると認められてポストに就くのではなくて、役職に権限がくっついていて、皆がその権限に思考停止状態でひれ伏していること。
こういう医系技官たちの暴走を、意外かもしれないが、前の舛添大臣はかなりストップしていた。ところが民主党に代わって制御が効かなくなったので今は医系技官がやりたい放題だ。舛添さんの時を100とすると長妻さんは10しかない。足立信也政務官が孤軍奮闘して50位まで引き上げているけれど、しかし最後は大臣次第なので、医系技官の暴走を止められていない。政権交代前には、まさかこんなことになるとは思わなかった。
厚生労働行政の問題を挙げ始めるとキリがない。とにかく場当たり的だ。ワクチンが足りない、しかも現場への供給が遅い、我々もそれを批判してきた。そうしたら突如として10ミリバイアルとか1回打ちとか、現場の感覚では信じられないことが出てきて、打てる人の数が増えました、と。
新型インフルエンザの予防接種に1人6000円も負担させる先進国は日本しかない。どうして税金を使わないのか。全部で5000億円程度の話。全体で90兆円を超える概算要求をするような時に、どうして何万人も死ぬものに対して、国民の命を守るためのお金が出てこないのか。実は簡単。鳩山首相の所まで話が伝わってない。こういう数千億円規模の予算は省内で捻り出すのは無理で、大臣が総理と折衝する必要がある。舛添さんが実現した医師養成数の増員の時は福田総理に話をつけた。
輸入ワクチンが危ない危ないという話も盛んに医系技官からされた。これも根拠がない。輸入ワクチンは今回国内で治験を行っている。当然だ。ところが国産ワクチンは特例承認といって治験なしになっている。これでなぜ国産は安全で輸入は危険だ、などということが言えるのか。なぜこんな連中が科学の仮面をかぶってやりたい放題しているのに、医療者たちは黙っているのか。
補償制度もヒドイもの。ここまで国が完全に管理してやってきたにも関わらず、最後は民民の契約になっている。訴訟リスクを現場に押しつけるためだけだ。そして免責が盛りこまれなかったので被害が出た人は訴訟を起こさないと救済されないことになってしまった。免責を盛りこまないのなら、せめて法定接種にして、国が責任を引き受けるべきだった。
皆さん、このような役人のサボタージュの現実を知っていただきたい。そして日本医師会がその共犯だから、恐らく信じてはいけないだろうと最初に言った。幸いにして新型インフルエンザに関しては、まだ方針に過ぎない。また、年明けに予防接種法改正の議論も行われる。役人のやりたい放題を許さないためにも、ぜひとも医療界を挙げての議論をいただければ幸いだ。