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ニュース〜医療の今がわかる

「医療は医師や患者の勝手になるものではない」 ─ 医療基本法シンポ

■ 救急の"たらい回し"などが不況の原因
 

[田中秀一氏(読売新聞医療情報部長)]
 皆さん、こんにちは。読売新聞の田中と申します。それでは、早速スライドに入りたいと思います。(中略)

 ▼ 医療をめぐる重要課題として、▽医師不足の解消 ▽救急医療の危機とフリーアクセス ▽医療の質と安全の保障 ▽医療情報の開示 ▽医療の財源確保─の5点を挙げた。

 今日は時間の関係で、医師不足と救急医療、それから財源のことに絞ってお話ししたいと思います。(ここで、「医師を全国に計画配置」という見出しの記事を貼り付けたスライドを示す)

 これは昨年、私どもで医療改革についての提言というのを行いました。一番重要なのはやはり医師不足問題であって、それを解決するために、「医師を全国に計画的に配置してはどうか」という提案を行っています。
 そのほかにも、"たらい回し"の問題とか、"介護難民"のことも書いてます。"名ばかり専門医"のことも触れていますし、財源のことも触れています。

 ▼ マスコミは、"たらい回し"という言葉を使わないようにしたと思っていたのだが......。

 えー......、前提として、今あの、非常に医療や介護に不安が大きいということがあります。これはまず医師不足で病院が閉まってしまうとか、救急の"たらい回し"が起きているとか、介護が十分に受けられない、そのような不安が非常に強い。
 どういう問題が起きてるかって言うと、えー......、そういう不安が実はまあ、不況の原因になっているのではないかという認識をしております。

 ▼ 医療や介護が不十分だから不況だという理屈なのだろうか......。

 これ、伊藤元重さんという東大教授が言っていることですが、「年金や医療費、子どもも当てにしてはいけない。長生きすればそれだけ生活費も必要になる。そうした不安を抱えながら、懸命に貯蓄に励む国民が多い。年金や医療制度が信頼できるのであれば、無理に貯め込むよりは消費に回すことができる。今の日本では、将来への不安─消費抑制─景気低迷─さらなる不安、という悪循環が起きている。この悪循環を断ち切らない限り、日本の景気を根本から良くすることはできない」ということで......。

 景気であるとか、全体の状況も閉塞感に覆われていると思いますけれども、そういったものを良くしていくためにも、医療・介護の不安を解決しなければならない。そのためにも医療改革が必要であるというふうに認識しております。
 その中でも、最大の当面の課題は医師不足を解消して、安定した医療提供体制を確立することだと考えております。まず、医師不足問題ですが......。 (中略。医師不足の現状などを説明)

 なぜ、医師不足が起きてるかということで、現在の臨床研修制度がやり玉に挙げられることがよくあります。新しい研修(制度)によって、大学病院から都市部の病院に若い医師が集中してしまったと、だからこんなものはやめるべきだということを主張する大学教授もいるんですが、それ(臨床研修制度)はきっかけにすぎないと考えています。本当の医師不足の原因は医師が少なすぎること、そして病院が多すぎることであると思います。

 ▼ 「医師不足の原因は医師が少なすぎること」という説明は分かりにくいが、「絶対数不足」と言いたいのだろうか。とすると、医師不足対策として最優先すべき課題は「医師数の増加」になるはずだが、どうも違うらしい。
 一方、「病院が多すぎる」という理屈は厚労省も大好き。「病床数当たりの医師数は多い」と言う場合もある。つまり、「あちらこちらの病院に医師や看護師が分散している」→「拠点化・集約化を図る」→「地域連携を進める」という理屈。厚労省が馬鹿の1つ覚えのように、「医療機能の分化と連携」というフレーズを使うのは、そういう理由がある。しかし、このような「医療機能の分化と連携」という考え方は、さまざまな機能を持った病院が乱立している都市部を念頭に置いている。病院間の移動に車で数時間かかるような地方では、連携もへったくれもない。「病院が多いから」という理由で中小病院を切り捨てた結果、「地方で唯一の病院が閉鎖してしまった」ということにならないか。


【目次】
 P2 → 救急の"たらい回し"などが不況の原因
 P3 → 研修先や診療先を自由選択に任せずに計画配置
 P4 → 医療は医師や患者の勝手になるものではない

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