「民主党のマニフェストでは医療問題を解決できない」 ─ 医療基本法シンポ
「民主党のマニフェストでは、残念ながら医療問題を解決できない」─。医師の計画配置や患者の義務を盛り込んだ「医療基本法」の成立を目指すシンポジウムで、現役の官僚がついに声を上げた。「自民党の時はもっと自由に言えた」としながらも、来年夏の参院選で「民主党なり最大野党の自民党のマニフェストに書いてもらえば成立は現実化する」と訴えた。(新井裕充)
日本医療・病院管理学会(理事長=池上直己・慶應義塾大教授)は10月17、18の両日、東京女子医科大で学術総会を開催した。2日目の市民公開シンポジウムで、パネリストとして参加した総務省の小西洋之氏は次のように述べた。
「現役の官僚、"制度屋"としての観点から言うと、こういうのはやっぱり、ある政局の局面によって一気にできることってよくある。次の局面といえば参議院選挙。民主党のマニフェストでは、残念ながら医療問題を解決できない。そうすると、解決できないことについて、世の中でいろいろ声を上げて、申し訳ないですけど、メディアがですね、『民主党の医療制度はどうなっているんだ!?』と言えば、民主党のほうも選挙に負けるわけにはいきませんから、マニフェストに『医療基本法』の成立を掲げる」
パネルディスカッションの司会を務めた埴岡健一氏(日本医療政策機構理事)は自身がかかわった「がん対策基本法」を例に挙げながら、「政策が大きく揺れ動いて波風が立っている時に、大きいものが通るかもしれないということはよくある」と賛同した。つまり、政権交代後のドサクサに紛れて一気に通してしまおうというシナリオ。小西氏が自信ありげな表情で、こう続けた。
「できれば、一刻も早いほうが......、(医療基本法は)必要ですので、次期通常国会ですか、残り2~3か月の間に一気に行けばいいんですけどれも、それが無理でも、一番技術的なのは、参議院選のマニフェストに民主党なり、最大野党の自民党のマニフェストに書いてもらう。書くときには、患者の立場、あるいは医療提供者の立場、あるいはメディアの立場、それぞれのステークホルダーの中に、『(医療)基本法』の具体的な必要性のイメージを、ぼんやりでいいですから、イメージをみんなで共有するようにする。そういうマニフェストの記載が整えば成立は現実化する」
一方、パネリストの1人である元厚生労働省医政局長の伊藤雅治氏は「患者、市民の政党への働きかけが一番、今急がれている」とした上で、患者団体の統一した行動をつくる重要性を訴えた。「上手に患者団体を取り込んでいく」という意味だろう。読売新聞医療情報部長の田中秀一氏も、次のように述べた。
「がん対策基本法をつくった過程というのは非常に参考になる。こういった場から発信していって巻き込んでいく、あるいは政権を巻き込んでいくという形になるのではないか」
パネルディスカッションでは、▽患者団体を巻き込む ▽メディアを使って盛り上げる ▽来年夏の参院選のマニフェストに「医療基本法」の制定を記載させる─などの方針を確認した。埴岡氏は「マニフェストに全党、書いてもらって合意してもらうというド真ん中の打ち込み」などと、ご満悦の様子だった。詳しくは次ページ以下を参照。
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【目次】
P2 → 「巻き込んでいく」 ─ 田中秀一氏(読売新聞医療情報部長)
P3 → 「患者団体の統一行動が一番重要」 ─ 伊藤雅治氏(元厚労省医政局長)
P4 → 「マニフェストに書いてもらう」 ─ 小西洋之氏(総務省)