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新型インフルの混乱 「健康局長の責任」木村盛世検疫官


 これだけ失敗を繰り返してくれば、普通は学習する。だから今回、他の国では水際作戦をやらなかった。日本と中国だけか、なぜか固執した。

 そもそもなんでこんなことになってしまうかというと、検疫法が悪い。野口英世の時代の法律だ。最初は浦賀の検疫所の所に措置所というのがあって船で体調を崩した人が出ると留め置いて、治ってから出てねという。船だと乗ってくる間に2ヵ月とか3ヵ月とか期間があるから、チフスとかコレラとかに、そういうことが有効だった。今や飛行機の時代で、空に国境なしという言葉がある。

 2007年にマーガレット・チャン(WHO事務局長)は『もはや健康問題は安全でない』と言った。バイオテロに備えなさいと言った。人間の動線を考えると同時多発的にアウトブレイクが起こりうる、と。こういう状況で、そもそも水際で備えようと考えることがおかしい。

 あまりにも水際検疫に人とお金を注ぎ込んだために国内が手薄になってしまった。これが今回最大の問題だと思う。

 そもそも日本の病院は強病原性の感染症が来た時には対応できないし、そもそも日常でヒイヒイ言っていて、1割患者が増えただけであっぷあっぷになる。陰圧室など施設整備だけでも1病院1億円必要だ。そういう時に、先生方の中にも検疫に駆り出された人がいるのでないか。貴重な現場の人を引っぺがして検疫所に持っていくというバカなことをした。精神的なサポートはしてあげるけどお手当はなしよ、で。

 国民はあの姿を見て、恐らく「やってるな」と思ったことだろう。しかし内情は、単に歴史から学んでなかっただけ。世界を見渡しても日本と中国だけ。WHOは中国を名指しで非難したけれど、あの時、日本も自分たちも非難されていると気づかないといけない。

 新型インフルエンザの騒動は今も続いているし、今後も続くだろう。でも、そもそもたかがインフルエンザだ。何年かしたらA北米型とかAメキシコ型とか季節性になる。それなのに政府がパニックになってしまった。舛添さんが深夜に記者会見して、私はテロが起きたのかと思った。ただでさえ医療崩壊の進んでいる現場に過剰な負担を押しつけ、崩壊を加速させてしまった。

 新しいウイルスが入ってきた時に最初にすべきは、それが人為的なものか自然発生のものかを確かめること。CDCが早々に自然発生と発表しているのだから、少なくとも何年かすれば収まるものとして落ちついて対応すれば十分だった。

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