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ニュース〜医療の今がわかる

「医療崩壊は基本法成立へのエネルギーになる」 ─ 医療基本法シンポ

■ 「全国民対策より、少数の熱い想いの人をつくる」 ─ 埴岡氏
 

[埴岡健一氏(日本医療政策機構理事)]
 最初から全議員対策をしたり、全国民対策というよりは、少数の熱い想いの人をそれぞれのセクターにつくるということがポイントかもしれない。本当にコアなる少数のリードする人と、反対しないで理解していただく方々を多くつくるという両面だと思います。

[田中秀一氏(読売新聞医療情報部長)]
 それは大変参考になると思う。ただ、「がん(対策基本法)」と「医療基本法」が違うのは、がんはですね、「がん医療を良くしよう」ということを誰も反対できないわけですね。
 ところが、「医療基本法」は非常に幅広い分野にわたります。(ここで、埴岡氏が発言をさえぎる)

[埴岡氏・日本医療政策機構]
 そうっすね。(発言を打ち切ろうとするが、田中氏が続ける)

[田中氏(読売新聞)]
 例えば、医師配置問題にしても、恐らく医師会はですね、賛成はしないんだろうと思います。そういったところに、いかに合意を取り付けていくかということが非常に重要なことなので、えー......。
 政治家だけではなくてですね、医師会であるとか、学会に対するアプローチというのも非常に重要だなと思います。

[埴岡氏・日本医療政策機構]
 ありがとうございます。ポイントですね。長谷川さん、いかがでしょうか?

[長谷川三枝子氏(患者の声を医療政策に反映させるあり方協議会会長)]
 私は、医療の問題はすべての人の問題だと思うんですけど、皆さん、とても遠くにいるように......、普段の生活の中にあるんですね。国民全体の問題なんですけど、それをどんなふうに考えていけるのか。
 私がたまたま病気になって、長期の......、患者会にかかわっていく中で医療の中にどっぷりいるんですけども、一般の人にとっては明日、病気になる、けがをするか分からないけど、医療というのはとても遠いところ。そこら辺の......、私はもうちょっと国民が医療に対して責任を持たないと。
 実は、私が住んでいる市でも、公立病院の収入がとても......。(診療費を)払えない人が多いんですね。それを私は「払えない人が多いのか」「払わないのか」というところで大変あの......。自分の病気が治ったら、お金を払わずに病院から逃げてしまう。そこら辺の考え方......。
 一般的に私は、「医療基本法」というのは、(埴岡氏が主張するように)一部の人がつくる......、出発点はそうであっていいんですけど、もっと国民全体の問題として考えていかなければ、今までと同じような医療に対する考え方というのが続くのかなあと......。

[埴岡氏・日本医療政策機構]
 (不機嫌そうな顔で)ありがとうございます。あと3人の方に1分ずつぐらいでお願いします。

[伊藤雅治氏(元厚労省医政局長、全国社会保険協会連合会理事長)]
 やはり、「がん対策基本法」は非常に分かりやすい話なんですけれど、「医療基本法」はですね、やっぱりかなり抽象的で、自分の医療にどう関係してくるのかという、そこがなかなか難しいと思う。

 それで、例えば医師の偏在の問題を(解消する強制配置を)法律でやろうとしたときに、内閣法制局は「職業選択の自由(憲法22条)との関係で疑義がある」と、これは私が現役の時に言われているんですね。
 ですからそれを「医療基本法」の中で、ある程度、医師を、医師にかかわらず強制的に配置をするような仕組みを導入することが、国民的な観点から賛成か反対かという、医師会の反対だけじゃなくて、国民に対してそういうボールを投げて議論しながら決着を付ける。ですから、いかに医療基本法の中身を国民の目に見える形で議論していくか、それが(医療基本法成立への)プロセスとして重要ではないかと思う。

[埴岡氏・日本医療政策機構]
 渡邊さん、お願いします。

[渡邊清高氏(国立がんセンターがん対策情報センター・がん医療情報サービス室長)]
 2点あってですね、まず1つは、「(医療)基本法」ができることで、今までは厚労省だけで医師の研修制度を考えていたのが、昨年から文科省と厚労省が合同で、「医師の研修制度について、在り方を検討しましょう」という会議が開かれました。そういうことによって、例えば卒前教育と卒後教育、その後の研修ということで連続的に議論ができるようになった。

 そういうことで、地域の住民がどういうお医者さん、どういう医療体制を求めているかという視点から、医師がどういうふうに配置されるかという議論が始まっていかないと、ただ数合わせをして充足されれば、じゃ、「その後の10年後にそのお医者さんはどうなるんですか」ということを考えたときに、それが本当に永続していく仕組みなのかどうかということは考え......、議論されなければいけない。

 もう1つ、「医療者と患者」という視点で言われますが、医療者も患者になりますし、患者さんも医療者以上の影響を持つようなこともあります。患者会を通してとか、患者さん自身も情報発信をされるようになっている。
そういったことで、「国民全体として、これからの医療をどうするのか」というときに、議論に耐えるようなものでないといけない。

 ▼ 埴岡氏、まずい展開。表情が曇っている。小西氏に流れを変えてほしいところ。

[埴岡氏・日本医療政策機構]
 (ため息混じりに)小西さん、いかがでしょーかー......。

[小西洋之氏(総務省)]
 「(医療)基本法」成立の進め方ですが、医療がこれだけ問題があって前に進まないのに、関係者で議論する場がない。まず、議論する場をすぐにつくろうということ。医療だけが基本法がない。そして、とにかく、とにかくつくったらいい。
 基本法というのは、「教育基本法」のように条文が20ぐらいのものから、農水省の「(農業)基本法」のように50ぐらいのものもある。いろいろその、薄いものまでいろいろあるんです。
 とりあえず、「(医療)基本法」をつくればですね、そういう、議論する場ができるんです。そうすると今度は、議論する場の活性化、あるいは実質的な中身の問題に......、我々の攻撃が......、攻撃じゃないですね、追及が......、場が移りますので、とりあえず、そういう(計画配置などの)仕組みを(法律で)つくる。
 仕組みをつくるプロセスとしては、「まずみんなで議論する場が必要だね」「医療だけが基本法がないね」ということを社会の中で大きく声を出していくことだと思います。

 ▼ ごちゃごちゃ言わせる前に、とにかく法律をつくってしまえということ。「各論は後で議論すればいい」ということ。埴岡氏に笑顔が戻る。

[埴岡氏・日本医療政策機構]
 ありがとうございます。(中略。「がん対策基本法」について補足したい旨を述べた後で)がんの場合はやはり、「がん難民問題」とか、格差の問題がかなりマスコミの間で広がっていたということで、国民が知るところになっていたということがあるんですが......。
 現在、「医療基本法」というベースでそれを考えると、いわゆる「医療崩壊」ですとか、救急・産科の(受け入れ困難)問題とかで、多くの人が「医療に問題がある」と認識している。
 これは裏返せば、「(医療)基本法」成立へのエネルギーになるという部分がある。それをうまく普及、"見える化"、情報提供するのがプラスになると思いました。
 (討論の)時間がなくなってしまったんですが、こういう流れで、「医療基本法」の必要性を確認した上で、「医療基本法」のアラアラの枠組みを確認し、そして(医療基本法を)つくる場合の政治的な側面の最短距離、どうなるのかというイメージを少し考え、それから、国民全体を巻き込む、あるいは重要なステークホルダーを巻き込むための協働のプロセスということを考えて、全体を概観してみました。
 あと15分ございまして、ここからはですね、フロアーの(一般傍聴の)方々にご意見を伺って、あるいは前の(パネリストの)方々に質問していただきたいと思うんですけども......。(中略。発言上のポイントを説明) 
 お1人、1分弱ぐらいで簡潔にお話をお願いします。(会場から挙手あり) どうぞ。


【目次】
 P2 → 「全国民対策より、少数の熱い想いの人をつくる」 ─ 埴岡健一氏(日本医療政策機構)
 P3 → 「医療は医療従事者の人間性によって支えられる」 ─ 小西洋之氏(総務省)


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