細菌性髄膜炎を知ってますか-5歳未満乳幼児に発症、重度後遺症多く
英国のものすごいデータがあります。2007年のADC(Archives of Diseases of Childhood)に報告されているが、「comprehensive school」(総合中等学校)に通っている、細菌性髄膜炎に罹患した患者の半分が、グレードがAからDあるテストのCランクに不合格です。髄膜炎にかかってない人を対象にするとこちらは25%が不合格。この差がいかに大きいかお分かりいただけると思います。罹患年齢には関係はありませんでした。治療がよくなって助かる人が増えたからいいと言っても、本当にそうかどうかは、確実性をはじめ、日本でもそうかどうか調べて頂きたいです。いずれにしろこうなるので、かからないことが大事なのです。

小児用肺炎球菌ワクチンが欧米では10年前から使われ、劇的な効果を出している。肺炎球菌ワクチンにいは「ニューモバックス」というのがあるが、これは高齢者の肺炎予防なので、子どもには効きません。小児用の肺炎球菌ワクチン「プレベナール」が5年前に発売されていれば、約1000人の子どもが髄膜炎にならずに済んだ、こういうことをしっかりと覚えておいて頂きたいです。
■ヒブ感染者、フィンランドゼロ、米22人、日本約800人


■定期接種が小児科医も助ける
みんなが両方接種を受ければ、子どもが細菌性髄膜件にかかる率が大変低くなります。救急外来の受診者の多くは発熱ですので、医師も髄膜炎を見落としちゃいけないという気持ちがあるので、小児科医以外しか診られないと言われるが、こういう状況になれば小児科医以外でも対応可能になります。私の後輩ももう3人過労死していますけども、小児科医の志望者も増えてきます。医師も責任追及されたくないからといって、抗生剤を申し訳のつもりで無駄に出している方が多いが、そういうのが減ると耐性菌も減ります。高齢者の肺炎球菌感染症も減り、国全体として医療費が減る。この達成のためには、定期接種化して多くの人が打たないと効果が出ません。
■助けられる命助けないのは虐待
私が小児科で長くやってきて感じたことは、やはり子どもの命は、大人の命もそうですが、二度とと戻って参りません。小児がんでさえ私が医者になったころは一回診断を付けると3-6か月でほとんど亡くなっていた。それがアメリカ中心に治療法が向上して、70%が薬をやめられるほどよくなっています。そういう時代に、ワクチンさえ打っていれば防げる病気で苦しめたり、障害を残させたり、死亡させることはネグレクトです。保護しないという「虐待」であるということをご理解いただきたいと思います。通りでヨチヨチ歩きの子どもがお母さんの手から離れて車の間に入っていったらみんな助けると思います。保護すべきを保護するということ。それに対して、ワクチンが欧米に大幅に遅れているということはネグレクトといえると思います。この時に覚えて頂きたいことは、保護者の方は悪くない。保護者の方がなぜ受けなかったかというと、正しい情報が出ていないから。紙切れ一枚の接種票が来ても、必要性があるか分かりません。ワクチンは怖いものだと思っていると受けない。これは社会による虐待。例えば麻疹になったらお子さんも可哀そうだが、親御さんもワクチン受けさせておけばよかったと悩みます。SIDS(乳幼児突然死症候群)もそう。なぜあれは社会的に認められたかというと、お子さんを亡くした悲しみの上に、なぜ親がいたのに死なせたのかと実際に牢獄に入れられた人もたくさんいた。こんなおかしいことがあってはいけないと、アメリカの小児科医がSIDSと、ちゃんと見つけてやりました。これと同じこと。
■日本はワクチン後進国

日本の定期接種は8種類(破傷風、百日咳、ジフテリア、ポリオ、BCG、麻疹・風疹、日本脳炎)。任意接種は、ヒブ、B型肝炎、おたふくかぜ、水ぼうそう、インフルエンザ。それだけでなく未発売のものに小児用肺炎球菌、ロタウイルス、子宮頸癌、A型肝炎、髄膜炎菌。アメリカは実質上は定期接種、事実上の義務接種で、貧困者は無料です。お金ない方へのセーフティーネットがあります。アメリカでも国が持つべきだと思うが、たくさんの種類があるのでこうなっています。
WHOはワクチンに関して重要な勧告を出しています。世界200カ国を相手にしているから、必ずしも先進国相手ではないのです。どんな貧しい国でも定期接種にして国が守るようにと言っています。はしかや三種混合もそうですが、日本でやってこなかった最重要ワクチンが、ヒブ、小児用肺炎球菌、B型肝炎、ロタウイルスワクチン、HPV(子宮頸癌のワクチン)です。

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