新型インフル 「マスコミ報道に憤り。議論続け、逐語で公開を」 森兼氏
ワクチン接種回数に関する厚生労働省の迷走は、足立信也政務官が政治の力で科学をねじ伏せた結果であるかのようにマスメディアで報道されバッシングされている。しかし19日の会合の内容は、科学的根拠のない行政決断に政務官が疑問を呈し、専門家もそれを支持したというものであり、傍聴していた身からすると、一連の報道内容には違和感を禁じえない。19日に出席した専門家の1人である森兼啓太・東北大大学院講師も同じ思いのようだ。簡単にインタビューした。(川口恭)
――19日に厚生労働省で行なわれた意見交換会、お疲れさまでした。先生の「尾身先生の主張は、科学ではない」との発言で全体の流れが決まったような気がしました。ところで、あの交換会の招集はいつかかったのですか。
森兼 足立政務官担当の事務官から連絡が入ったのが、当日のお昼ごろです。私に夕方までの所用があり、それを済ませた後で仙台から駆けつけたので、あのような遅い時間の開催になってしまい出席の方々には申し訳ないと思っております。
――そうでしたか。意見交換会の後で足立政務官をはじめとする政務三役が16日の専門家会議の方針に一部待ったをかけたところ、マスコミに大バッシングを受け、29日の衆院厚生労働委員会では自民党の大村秀章氏が集中審議を求めました。
森兼 意見交換会の中身をちゃんと聴いていたら、足立政務官の判断の方が科学的に妥当だというのは理解できたはずです。16日の専門家会議をおまとめになった尾身先生も、19日の議論の場では最終的に16日の方針を変更することに反対されませんでした。政治の力で科学判断を覆したかのようなマスコミの報道内容に対しては、憤りを覚えています。
――記者たちは、自分たちが先走って書いちゃった記事を"誤報"にされて、社内的な言い訳として政務官が悪いことにしないといけなくなったんだと思います。
森兼 記者の側の事情は知りませんが、こんなに捻じ曲げて書くんだなというのが分かって驚いています。書かれっぱなしだと、一般の人には足立政務官が悪いという印象だけが残ってしまうので、そうではないんだという情報発信を私も行なっておりますし、あちこちでお願いもしております。
――その通りですね。
森兼 新型インフルをめぐる状況は刻々と変化します。政務官も、19日から20日にかけて表に出られたわけですが、路線を変えることなくさらにフォローすることが大切ではないでしょうか。具体的には、16日や19日に集まった専門家をはじめとする様々な人々との会合を定期化していただいて、週1回程度、新型インフルの現状分析とワクチンに関する最新情報の共有、それに基づいた接種回数や優先順位の議論を行なうことが必要だと思います。
8月から9月にかけて行なわれたワクチンの優先順位に関する議論は、相当多くの方々の意見を聞きながら決定されましたので、その方式を政党が変わっても踏襲するよう事務方に働きかけて頂きたいと思います。また、会議の形式は公開の対面方式がベストですが、メール・電話会議などで行って、その内容を逐語で公開することでも構わないかもしれません。逐語にしないとマスコミに捻じ曲げられますから。政務官も、お忙しいとは思うのですが、元外科医の政治家として、他の政治家とはひと味違うというところを是非見せてほしいです。