「"墨東"と同じ事起きたら、仕分け人は責任取れるのか」-田村正徳未熟児新生児学会理事
「これでまた"墨東"の悲劇が起きた時に仕分け人はどう責任を取るのか」-。「事業仕分け」でNICU(新生児集中治療管理室)不足を解消するための支援策を盛り込んだ周産期医療に関する補助金が削減される判定が出たことについて、日本未熟児新生児学会の田村正徳理事(埼玉医科大総合医療センター小児科教授)に聞いた。(熊田梨恵)
--今回の「事業仕分け」で、「医師確保、救急・周産期対策の補助金等」事業(573億9700万円)に「半額計上」の判定が出ました。これをどう見ますか。
一言で言うと、これでまた"墨東"の悲劇【編注】が起きた時に、「仕分け人」はどう責任を取るのかというのが私の気持ちです。「半額」になったと言いますが、この事業の中には継続して行われているものも含まれていますので、そういう事業を途中でやめることはできないでしょう。新規事業であるNICU関連の補助金は「半額カット」ではなく、実際は「ゼロ」になると思います。
【編注】...2008年10月に東京都で起こった、脳出血を起こした妊婦が都立墨東病院を含む8つの病院に受け入れを断られ、最終的に受け入れられた墨東病院で死亡した問題
--補助金が「ゼロ」になった場合、その影響は。
例えば、東京は私のいる埼玉などに比べるとベッド数は多い方ですが、それでも年間1床あたり750万円の赤字なのです。元々補助金というのは、赤字を補てんするために付けられているものであって、黒字にするようにはできていません。NICUの医療は元々が赤字になるような診療報酬体系の上、NICUや、NICUを出た赤ちゃんが入る後方ベッドのGCU(継続保育室)にはこれまで補助金がついていませんでした。病院経営からすれば完全に不採算で、経営者にとってはやりたくない部門です。本当なら、NICUを持たないで正常分娩だけを扱うようにしていれば、病院は黒字なんです。でもそれでは、地域の周産期医療を担う周産期センターとしての使命を果たせないでしょう。だから赤字でも皆頑張ってきたのです。
--NICUを増やすどころか、NICUの赤字体質が今後も続いていくということですね。