中小病院の収支改善が狙い? ─ 再診料問題の嘘と虚構、光と影
■ 200床以上は「大病院」? ─ 日経報道
日経報道の翌2月8日、再診料について集中審議するために中医協が開催されたが、「680~690円」でまとまる気配はなかった。
再診料の審議を開始してから約1時間半、会議の終了予定時刻になって嘉山孝正委員(山形大学医学部長)が日経報道について指摘した。
これに厚労省の担当者が「情報管理を徹底している。憶測記事が出ることもある」などと釈明した後、鈴木邦彦委員(茨城県医師会理事、日本医療法人協会副会長)がこう述べた。
「記事のタイトルが『中小病院(の再診料)』を(680円~690円に)上げるとなっている。『日経が中小病院の味方か』って言うと、決してそうではない。そういう誤解をされるのは我々中小病院として心外だし、診療所にとっても辛い」
遠藤会長は「嘘の記事だからいいじゃないか」などと日経報道をめぐる議論を収めたが、疑問はまだ残る。2月7日付の日経新聞3面の「再診料」の解説によると、200床未満の病院を「中小病院」、200床以上を「大病院」としている。病院の再診料を引き上げることは中小病院を救うという理屈だが、これは嘘と虚構ではないか。
厚労省大臣官房統計情報部の「平成20年受療行動調査の概況」では、▽病床規模が500床以上の病院を「大病院」 ▽100~499床を「中病院」 ▽20床~99床を「小病院」─などと説明している。この分類に従えば、200床以上の病院のうち、201~499床の病院は「中病院」になる。
今回の改定は、高度な医療を提供する大病院に手厚く、中小病院に不利といわれている。その批判をかわす口実として、「病院の再診料引き上げ」を使いたい厚労省の思惑が見え隠れする。
しかし、今回の改定で経営が厳しくなるのは200~300床規模の「中病院」との声も既に出ている。「病院の再診料を引き上げて中小病院の収支を改善させる」というのは虚構であり、2010年度改定の"光"の影に置き去りにされた地域医療があるのではないか。
もちろん、診療所と病院の格差是正の根拠とされる「開業医の年収は病院勤務医の1.7倍」、これこそがまさに「再診料問題の嘘と虚構」という見方もあるだろう。. なお、日経報道をめぐる2月8日の議論は次ページ以下を参照。
【目次】
P2 → 200床以上は「大病院」? ─ 日経報道
P3 → 「佐藤君! どうなってんのかね、これ」 ─ 嘉山委員
P4 → 「憶測記事が出ることもある」 ─ 厚労省
P5 → 「誰が書いたんだか、手を挙げなさいよ!」 ─ 嘉山委員
P6 → 「我々の心構え一つだと言える」 ─ 遠藤会長
P7 → 「日経が中小病院の味方か」 ─ 鈴木委員