予防接種の医療機関取り締まり、結論持ち越し
日本医師会が厚労省の意を受け医療機関を取り締まるのか、と物議を醸したワクチン接種の優先順位遵守に関して、日本医師会の飯沼雅朗常任理事は9日の検討会で大きく見解を「後退」させ、結果としてどのように提言に書き込むかの結論も出なかった。(川口恭)
この日は『第4回厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会』(委員長・加藤達夫成育医療センター総長)が開かれ、通常国会での法改正を睨んだ提言に向けて論点整理が行われた。(資料はこちらから)
色々と意見は出ながらも「事務局原案通りに了承」とされるものが多い中、論点2ー3と2−4が再度練り直しとなった。議論が連続していたので、そこの部分だけ簡単に再現する。
黒岩祐治委員(ジャーナリスト・国際医療福祉大教授)
「協力を求めるとは、どういう意味か。命令でもない。世の中に必要とされているものならば、ビジネスの世界では売れるから作るのが当然。わざわざ書き込む必要があるのか疑問だ」
これまで「とりあえずの議論なんだから」と抑え込まれてきた黒岩委員が、この日は何度となくそもそも論を繰り返した。記者としての勘が、そろそろ言っておかないと危ないと告げているのかもしれない。
事務局
「やはりこういうことをやるなら、法律なりに書き込んでご協力いただくのを明確化するというのが筋だろう」
黒岩
「基本的に色々なものを書き込みすぎじゃないか。既に教訓は得られているのだし、それを生かしてどうするかは政治の判断。法律に細かく書き込む必要はない」
加藤座長
「その通り。我々は法律を作っているのではない。提言をするために自由にご議論をいただいている」
櫻井敬子委員(学習院大法学部教授)
「実務上、協力を求めることの根拠となる法律があれば楽というのはあるので、書いておいたらよいのでないか。また相手に負担をかけるのであれば、それをみるというのも入れておいた方がよろしいか、と」
櫻井委員は、製薬業界と厚生労働省の力関係を知っているのだろうか。それでなくても国民が殺気立っている局面で、国から協力要請されて断るようなことなどあるはずない(8日の未承認薬・適応外薬の検討会でも製薬企業は無理難題を押しつけられていた)。
すかさず座長、次の議題に移る。
「論点2ー4だが飯沼先生」
飯沼
「この項目に関して各都道府県医師会に聞き取りをしたところ、8割以上の回答が何を言うかというものだった。前回も言ったように自浄作用でやるべき話であって、法律の文章に入れるのは納得できないというのが会員の意見だった。だから資料3の(4)、今日はまだ議論しないのかもしれないが、こんな『国が定めた優先順位に従わずに接種を行う医療機関が見られたところである』という文章を会員が見たら怒る。片手にも満たないような事例を元に、こういう書き方の文章が出てきたら、アンケートでも『それでは予防接種に協力できなくなる』という意見もあった。これは脅迫になるからあまり言わないが。この文言は全面的にぜひとも再考をお願いしたい」
加藤
「前回とだいぶ違うことを言っているのか。個人としてはあれだが、統計を取ってみたらこうだったということか」
飯沼
「前回も自浄作用でやると言った」
(中略)
加藤
「論点2の3と4だが、ワクチンの安定供給と予防接種の適正な実施はどちらも必要だ。メーカーに対する協力の要請と医療機関からの報告の徴収は両者のバランスを考慮する必要があるので今回はいったん保留して、事務局でその辺を十分に整理して次回案として出すように」
もし医療機関への「査察」を書き込まないなら、企業への協力要請も書き込めないというロジックになる。事務局はどうするのか、ちょっと面白い展開になってきた。