「病院は植民地じゃない」・・・幕内・広尾日赤院長吼える
大嶽
「がんセンターの独法化後の経営の課題を述べるならば、それは何を目的にするかにもよるのだろう。赤字の返済を最大の目的にするのならば、それなりの診療で帳尻を合わせることになるだろうが、恐らくそれでは許してもらえないはず。ミッションをきちんと果たした場合には、むしろこういうことをやるから、やったから赤字になる、そこの部分は税金を投入してほしいと求めることになるのでないか」
幕内
「何だかんだ言って収支を合わせることは大切。収入はそんなに大して変わらないと思う。だからいかに出を抑えるかが非常に大事。要するに、買うものはなるべくすべて、院長か事務長で決済する。僕らは今リバースオークションというのをやっている。競争入札で一番低い価格を出した所から購入する。そうすれば相当金は浮いて、経営は一気に改善する。今まで何もやってなくて、裏では必ず悪い奴らが談合している。薬なんかも一件一件やっていくと協定を結んでいることは明らか。それで時々怒る、お前らやってるな、と。証拠のないのが困ったところなんだけれど(略)」
土屋
「先ほど大嶽先生が言われたように、国立がんセンターは何のためにあるのかという問いかけが大事になってくる。厚労省が悪いとだけ言うつもりはなくて、がんセンター自体にそれを世の中にきちんと問うてこなかった責任があると思っている。
では、がんセンターの目的とは何ぞや。病院があって、研究所があって。他にもいっぱい病院があるのに、がんセンターがなぜ病院を持たなければならないのか。私は一言で言えば、がんの医療政策の素案を立案して厚生労働大臣に具申するために、ここにがんセンターがあるんだと思っている。なぜかと言えば、保険診療の部分は他の病院と何も変わりがない。だったら、がんに対する治療法・診断法の新しいものを開発するために、この病院を使わないと意味がない。それについて多少の持ち出しがあっても、新しく開発するという目的が明確で、しかも成果が上がれば、国民は税金をここに使う価値があると判断してくれる。
研究所はどうかと言えば、全国に80医科大学あって、がんの生物学をやっている学者はゴマンといる。ウチがこれだけ少人数の研究所で生物学をやっても、ゲノムをやっても医科研には中村祐輔という有名な人がいる。じゃあウチは何をやるのかということになると、がんの医療学を立てるためだと思う。それが今何もない。それから大学を見ると医工連携がほとんどされていない。東大は医学部の隣に工学部があるけれど、ほとんど大学としてやっているとは思えない。むしろウチの方が東大工学部の先生と一緒にやってる。これをもっと大きくしていく。今、補正予算でサイバーナイフ棟というのを入れようとしているが、会計課に任せていたら600平米で作るというのを、知り合いの建築家に言ったら建築基準法で940平米までできるというので、そのお金でつくれるのなら目いっぱい作ってくれと。そうすれば4室増やせる。600だと3つか2つしかできない。機械を1個しか買えなくても、空いている部屋に東芝、島津、日立と共同研究用のプロトタイプを入れて研究すればいい。薬事法の承認が取れたら、そのまま病院に鞍替えしてやる。空いたところはまた研究所としてやる、というような位のダイナミックなことをやって世界で初めての機械を開発していけば国民がそこに税金をつぎ込んでもよろしいと言ってくれる。
運営局は、行政官が来るわけだから研究所の医療学を実際に応用するにはどうしたらよいか。病院と研究所と運営局が一体になって、がんの明日の医療はこうだ、という政策立案をしていく。本省の優秀な官僚が、医系技官を除くけれど、優秀な人たちがそれを他の政策との優先順位を考え、財政的なものを財務省と交渉して、全国のがんの病院にはあまねくどうしたらよいのかということを普遍的にやって、診療体制を変えていくというようなことに関して、我々が知恵袋となる。となれば普通の診療報酬に加えて税金を投入する価値があってナショナルセンターとして生きていけるのでないかと思っている」