文字の大きさ

ニュース〜医療の今がわかる

「地域」って、何?

■ 「地域特性」とは?
 

 現在、病院のベッドは患者の状態に応じて「一般病床」「療養病床」などに区分されており(医療法7条)、看護師の数などによって入院料が違う。看護師を多く確保できれば高い診療報酬を得られるので、もともと看護師が不足している地域の病院は経営が苦しいとの指摘もある。

 平成22年度改定に向けた議論の中では、看護師不足の地域にある病院に救済措置を講じるよう医療側の代表から意見が出されたが、診療報酬を支払う側から「同じサービスなのに地域によって料金が違うのは一物一価に反する」などの反論があり、最終的に合意できなかった。

 今年2月、中医協が改定案を厚労大臣に答申した際の附帯帯意見には、「地域特性を踏まえた診療報酬の在り方について検討を行う」と書かれ、「地域特性」の論点は継続審議となった。しかし、「地域」の範囲はもちろん、「地域特性」をどのような観点から考慮するのかもまだ議論されていない。

 都道府県の医療計画では、「二次医療圏」を1つの範囲として必要なベッド数(基準病床数)などを定めている。また、急性期病院と回復期病院などの連携(地域連携クリティカルパス)や災害拠点病院の配置なども「二次医療圏」を1つの目安にする。(東京都の「二次医療圏」はこちらを参照)

 しかし、例えば埼玉県内の病院から千葉県内の病院に転院する場合もある。患者の居住地が県境の場合など、「二次医療圏」の中で医療が完結するわけではない。

 また、「医師不足」とか「医師の地域偏在」という場合、具体的にどの地域で不足しているのか分からない。例えば、75歳以上の高齢者しかいない離島に産科の病院がなくても、「産科医不足」とは言えない。
 全国のどの地域にどのような疾病が多いのか、患者の特性がどのように違うのか、それらを分析するデータが不足していることも問題になっている。

 こうした中、「医療と介護の連携」や「地域特性」といったフレーズが中医協の資料にたびたび顔を出すが、厚労省は「地域特性」をどのように考慮するのか、まだ明らかにしていない。

 ただ、1つのヒントになるだろうか、診療報酬改定の基礎資料とするために実施する「医療経済実態調査」のスケジュールなどを審議した11月26日の中医協・調査実施小委員会で、厚労省は「国家公務員の地域手当に係る級地区分」を示している。

 「医療経済実態調査」は、開業医が勤務医よりも収入が多い根拠として使われるため開業医らの不評を買っている。次回も、「開業医と勤務医の収入比較」に関心が集まることは必至だが、新たな分析手法として「全国を国家公務員の地域手当における級地区分の6区分とその他の地域に分類し、この区分によって行う」としている点が注目される。
 
 鈴木課長は12月21日の慢性期分科会が閉会した後、記者らに対しこう語った。

 「コストを全体的に見たときに、田舎が安いかというと、医師だったら絶対的に地方の方が高い。かつ、介護と違って医療の場合には医師が占める人件費の割合が結構高い。6割が人件費として、半分ぐらい、3割ぐらいが医師。これが高いか低いかは結構大きい。物品はどうかと言うと、都会の方が安い。サプライがたくさんある。そう考えると、田舎の方が本当に安いのかというと、必ずしもそんなことはない。むしろ、田舎の特性というのは、『うまく分化ができない』とか、『従業員を集めにくい』という所にある可能性はある」

 鈴木課長の発言について、詳しくは3ページを参照。


【目次】
 P2 → 「地域特性」とは?
 P3 → 「病棟単位でカチッと認定すると動きづらい」 ─ 鈴木課長


 1  | 2 |  3 
  • MRICメールマガジンby医療ガバナンス学会
loading ...
月別インデックス