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「地域」って、何?

■ 「病棟単位でカチッと認定すると動きづらい」 ─ 鈴木課長
 

[高木安雄分科会長代理(慶應義塾大大学院教授)]
 (前略)「(「慢性期入院医療の在り方の)総合的検討(に資する検証)」の中で、「地域特性」と書いてありますが、精神病床がたくさんあると、認知症は精神病床の方でもできるから介護療養(病床)とかね、他の施設に依存する割合は小さくなるわけですよね。

 「地域特性」というのをどのように考えていくかは結構しんどくて、例えば、「地域」って47都道府県なのか、いや、東と西なのか......ね?
 という議論をやっていくと、「地域って何だ?」っていう話になっちゃうんですよね。確かに、九州とか西日本......、特に九州なんか精神病床が多いですよ。で、この「地域特性」というのはどういうイメージで考えているんですか?

 特に、介護との接点が近くなると、例えば、「地域包括ケア研究会」(の報告書)だと、(おおむね30分以内に必要なサービスが提供される圏域として)「中学校区に1つ」って言っているわけですよ。医療圏って、(地域保健法で)「一次医療圏は市町村単位」って言っちゃっているわけですよね。

 (医療法では)「医療圏は二次で考えましょう」というアプローチです。しかも、精神病床って、医療計画では都道府県単位で三次ですからね。その辺、「地域特性」って、どの辺をイメージしてるのかなっていうのが、少し、調査を始める前に議論しておいた方がいいかなと思います。

[保険局医療課・鈴木康裕課長]
 (前略)「地域特性」の話ですが、直接、精神病床の「地域特性」ということではなく、この場合の「地域特性」というのは、例えば、かなりの規模の都会であれば一定程度、病床が機能分化している余地がある。例えば、「急性期」「亜急性期」「慢性期」ですね。

 ところが、地域によっては、医療機関の数があまりなくて、恐らくは1つの病院なり病棟で、かなり多種な患者さんに対応せざるを得ないという所がたぶんあるのではないか。

 そうであるとすると、あまりにもこう......、病棟単位でカチッと構造的に支払いなりを認定してしまうと動きづらい部分があるとすれば、そういう所にはどうしていくか、我々の問題意識と、もう1つ、中医協の総会(委員ら)の問題意識もあると思います。それ以外にも問題意識があれば教えていただければと思います。

 ▼ 会議終了後、鈴木課長は発言の意味をこう語った。
 「一定程度の病院がたくさんあって、病院の規模が大きかったりして、かつたくさんの病院で機能を分担していけば、例えば、『この病棟は超急性期』、『この病棟は亜急性期』、『この病棟は慢性期』と分けられる。
 ところが、病院の数や病棟の数が少なければ、例えば、20床や10床単位で病棟をつくるわけにはいかない。やっぱり、40床、50床になりますよね。そうすると、その病棟の中で、急性期的な患者さんも来れば、亜急性期的な人も慢性期的な人も来るような地域もあるでしょう。そういう実態があるために、医政局はどう考えて、我々(保険局)は(診療報酬の)払いとしてどう考えるか。『医療区分』をどう考えるのか。
 つまり、武久さん(日本慢性期医療協会会長)がおっしゃったような(一般病床に慢性期の患者が入院している看護配置15対1などの)区分というのは、他に医療療養病床があって、そこで患者さんがきちっとできるのにそこに患者さんが入ってるから......という前提があるわけです。(機能分化が)できる世界での話。できない世界でどうするかということです」
 このほか一問一答は次の通り。

── 「地域特性」の課題として、看護配置を中心に検討するのか。
 看護の配置の問題もあるかもしれないし、平均在院日数もあるかもしれないし、払いの額かもしれないし、いろんな変数があり得る。

── コストについてどう考えるか。
 コストを全体的に見たときに、必ずしも、「田舎が安いのか」というと、医師だったら絶対的に地方の方が高い。かつ、介護と違って医療の場合には医師が占める人件費の割合が結構高い。6割が人件費として、半分ぐらい、3割ぐらいが医師でしょう。これが高いか低いかは結構大きい。

── 土地代は地方が安いのではないか。
 土地代は安いが、診療報酬では購入を見ません。あと、物品はどうかと言うと、都会の方が安い。サプライがたくさんあるから。そう考えると、田舎の方が本当に安いのかというと、必ずしもそんなことはない。むしろ、田舎の特性というのは、先ほど言ったように、「うまく分化ができない」とか、「従業員を集めにくい」という所にある可能性はある。だとしたらどうするかということです。

── 平成22年度改定に向けた審議の中で、遠藤会長が「地域特性は奥深い」と指摘したが、課長はどのような点を「奥深い」と考えるか。
 言葉を聞いたときにイメージするものが人によって違うことではないでしょうか。「地域特性」として、我々は何に着目して考えなきゃいけないのかをデータを基にみんなで議論するということでしょうね。
 アプリオリに、医療課としてこうしよう、あーしようと言っているわけではないけれども、ちゃんと、「本当にやるべき所」と、「巷で言われているけれども実態を見てみたらそうでもない所」といくつかあるので、そこを見ていくことでしょう。

 (この記事へのコメントはこちら


【目次】
 P2 → 「地域特性」とは?
 P3 → 「病棟単位でカチッと認定すると動きづらい」 ─ 鈴木課長

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