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【特別公開】梅村聡の目 3党の妥協に失望せず、税・社会保障の議論に参加を

 本日、野田内閣の不信任決議案と問責決議案が衆参両院に提出されたようです。以下に公開する記事は、9月号(8月20日発行)に掲載するものですが、このまま解散総選挙になったとすると、大変にピントのボケた記事になってしまう可能性もあることから、一足先にwebで公開いたします。各党の振る舞いを評価する上でも、面白い視座を与えてくれるのでないかと考えます。(川口恭)

【ロハス・メディカル9月号掲載 筆者は梅村聡参院議員です】

 民主、自民、公明の3党合意を経て衆院を通過した「消費税率引き上げ法案」に、様々な批判をいただいていますが、同時に通過した年金・子育て・社会保障全般に関わる法案に示されているように、社会保障の拡充と消費税の引き上げはセットです。そして中身の勝負はこれからなので、ぜひ皆さんにも参加していただきたいと思います。

 消費税率引き上げ法案は、3党協議後に大幅な修正が加わり、民主党が主張していた所得税の最高税率の引き上げや、相続税の基礎控除の引き下げと最高税率の引き上げなどが削除されました。このため「税金を払える余裕のある人から取らないで、所得の少ない人に負担が大きくなる」、「国民への説明もなしに永田町だけで通したのはパターナリズムで、自民党政権時代と何も変わらない」など、様々な批判をいただいています。
 消費税は、基本的に低所得者ほど負担感が強くなる税なので、私自身も諸手を挙げて引き上げに賛成しているわけではありません。しかし、それでもなお、国民負担をお願いすべきと思っています。
 与党として、「満点ではないかもしれないが合格点をめざして」合意した状態です。これを「満点だ」と言ってしまうと、国民も鼻白むと思います。「合格点をめざして妥協した部分がある」と、国民に対して、きちんと説明する姿勢こそ政治家に求められると思っています。

税率引き上げは必要

 今の日本の社会保障制度は、団塊の世代が後期高齢者にさしかかる時期(今後15~20年)を乗り切らねばならないという課題を抱えています。「消費税引き上げの前にやることがあるのでは」という意見もありますが、「行財政改革」「無駄の削減」と「国民負担のお願い」は同時に進めるべきだと思います。「無駄の削減」はこれからも常にしなければいけないですし、片方が完成しないと、もう片方を議論してはいけないということになれば、社会保障の立て直しに間に合わない可能性があります。
 また別の視点から言うと、今年の診療報酬や介護報酬のプラスは、社会保障を充実させることですから、何らかの財源確保が必要です。社会保障の財源を確保するには、自己負担、税、保険料のどれかでお願いすることになります。自己負担と保険料を、これ以上大きく上げるのは実際問題として難しいので、税でお願いすることになるかと思います。ただしこれから労働人口が減るわけですから、所得税に頼り過ぎることは避けるべきです。法人税も、今は企業の海外進出に対するハードルが下がっているため、上げると海外へ流出してしまって国内の雇用が減る懸念があります。税収が景気に左右されにくい消費税は、相対的に社会保障の財源に向いていると考えられるのです。
 診療報酬の引き上げをはじめとする社会保障の充実策を推進した私は、消費税率引き上げも必要だという立場です。
 なお、今回の消費税率引き上げ法案や税・社会保障一体改革法案だけで3党合意が行われたような報道がされていますが、そもそも野党の一部が合意しないと法案は参院を通過しませんから、他の多くの法案でも与野党合意が行われています。

自助のためにも社会保障

 今回、国民負担のお願いができるのであれば、今後約15~20年を乗り切っていくための一歩は踏み出せると思います。しかし、それだけでは全く十分でなく、崩れてしまっている日本の「自助、公助、共助」のバランスを取り直すことが必要です。
 自助が成立するためには、セーフティーネットとしての共助と公助が必要で、持続可能な仕組みへと作り直さないといけません。これまでの連載でお伝えしてきたことはすべて、個人が自立・自律するため、公助と共助の仕組みを整えようという改革なのです。
 そして、それらの改革の大前提は、国民の主体的な参加です。

ぜひ政治に関与して

 よく「○○を選挙で選んだのに」と言われます。しかし「選挙をしたら終わり」ではないと思います。政治的なことに関わらないようにしている方が多いように感じます。でも、ぜひ関わってください。
 選挙で選ぶのは単なる「代表者」ではありません。政治家を選んだら、そのアフターフォローも国民の責務だと思います。常に国民が自分たちで問題意識を持ち、それを「代弁者」である政治家に伝えていかなければなりません。この3党合意で失望して「国民は何もできない」と思ってしまったら、それこそ権力者や官僚の思うツボです。
 というのも、今回の法案はあくまで財源確保の道筋を付けたものであって、細かい部分は詰め切れていません。これからが勝負なのです。
 例えば消費税でも、海外で実施されているような食品や日用品などの税率を下げる軽減税率を導入するのかしないのか、給付付き税額控除制度を導入するならば所得把握をどのように行うのか、消費税増税分を価格に転嫁できない立場の弱い中小企業をどうやって助けていくのか、以前、このコーナーでも紹介した医療機関の控除対象外消費税の問題をどう解決するのか等、いくつもの論点が残っています。国民の皆さんにも議論に参加していただきたいのです。
 地元の国会議員にメールやファクスを送っていただいても結構です。以前の連載でお伝えしたように、数人の市民が集まれば国会議員は喜んで足を運ぶと思います。政治への働きかけなしに、別の政治勢力に期待したとしても、結局は同じことの繰り返しになるだけです。
 ぜひ今回を契機に、政治を動かしてください。自分たちで制度を変えられるということを肌で感じていただきたいし、この時代を乗り切るため、民意で政治を変えていっていただきたいと思っています。市民が自発的に集まって行われている原発再稼動反対デモの盛り上がりを見ていると、民意が本当に政治を動かす時代も近いと肌で感じます。
 もちろん、民意を伝える最も大きなイベントは「選挙」です。今回の社会保障・税一体改革の審議・採決が終われば、すぐに解散・総選挙を行うことが、最も「民意」を反映するものだと私は感じています。候補者の考え方や人柄、これまでの実績等をできるかぎり具体的に検証して、このイベントに参加していただければと思います。

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