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ストップ!! 医療崩壊3 医療者が足りない

無理が通れば安全引っこむ。

 さて、医療者の数が少ないと何が起きるか。想像することは、そんなに難しくないはずです。そして、その想像を裏付けるような科学的な研究も数多く行われています。ご紹介しましょう。
31-2.3.JPG まず患者にとって最も身近な存在の看護師について考えます。ベッドあたりに直すと、英米独伊4カ国平均の4分の1の人数しかいません。そして、看護師1人あたりの受け持ち患者が1人増えるごとに、何と患者の死亡率が7%ずつ上がるという恐ろしい研究報告があります(図参照)。
 日本では、看護師を多く配置している病院は、診療報酬で優遇されます。ただし、その最高ランクは、看護師1人あたり7人の患者を担当するという7対1です。この研究で見れば、むしろ看護師が少なくて危険な方になりますね。
 しかも、この7対1へ看護師を増やすことすら容易でなく、病院間で看護師の争奪戦が起きて、結果として特に地方の病院で病棟閉鎖に追い込まれるような事例があったのは記憶に新しいところです。
 いずれにせよ、研究結果に従うならば、もっとはるかに多くの看護師が必要なのです。
 続いて薬剤師です。比べられるような先進国平均はありませんでしたが、米国と比べると、やはり4分の1の人数しかいません。薬剤師数が少ないと危険であることは間違いありませんし、他国では薬剤師のするようなことを医師・看護師でカバーしていることも見逃せません。つまり、医師・看護師の勤務を、より複雑で厳しくしているのです。
 医師の場合、シフト制勤務の看護師や薬剤師と異なり、数が少ないこともさることながら、いろいろな人手不足の帳尻合わせのため、長時間労働を強いられています。勤務医にとって労働基準法など有名無実。みな過労死寸前です。
最も分かりやすいのが、普通に日中の勤務を行った後で当直に入り、翌日もまた日中勤務を行うという連続32~36時間勤務です。当直明けに帰宅させると医師が足りなくなるので、夕方まで働くわけです。
 ピンと来ないかもしれませんが、一般的に当直というのは、急変患者への対応や夜間救急患者への対応をするので、ほとんど眠れません。
そして睡眠不足だからといって、勤務が軽くなったりもしません。日本外科学会が昨年行った調査では、実に回答者全体の7割、40代までの9割が当直明けに手術を行っています。
 またしても、恐ろしい研究報告があります。24時間連続で起きていた人の注意力は、ビール大瓶2本飲んでほろ酔いになった時と同程度しかないそうです。車の運転をしては、いけないレベルです。そんな注意力の低下した人たちが、普通に診療したり手術したりしているのです。
 当直のない病院の医師はたっぷり寝ているから大丈夫と思ったら大間違いです。当直のない病院では、オン・コールという体制が一般的です。何かあると、間に合わせの電話がかかってきたり、呼び出されたりします。診療科で1人しか医師がいなかったりすると、24時間365日拘束されることになります。
 これだけ、いつ事故が起きても不思議のない綱渡りの勤務を強いられ、しかも何かあったら厳しく非難され、時として犯罪者扱いされるというのでは、医療者の心が折れるのも理解できるのではないでしょうか。

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