誌面アーカイブ

情報はすべてロハス・メディカル本誌発行時点のものを掲載しております。特に監修者の肩書などは、変わっている可能性があります。

医師組織の構図

39-2-1.JPG医師には、腕一本どこででも独りで働けるイメージがあります。
一方で医師の組織がどうしたこうしたという話もよく耳にします。
医師の組織って何をしてるんでしょうか。必要なんでしょうか。

監修/小松秀樹 虎の門病院部長
    上昌広 東京大学医科学研究所特任准教授

アカデミズム

 組織があって、そこに所属する人がいる。それは、所属を命じる決まりがあるか、所属するとメリットがあるか、どちらかのはずです。医師として働くには厚生労働大臣へ2年に1度届出が必要ですけれど、どこかに所属を命じる決まりはあません。つまり医師が組織に属するのは自発的なことで、何らかのメリットがあるものと考えて間違いなさそうです。
 『ロハス・メディカル』は基幹病院向けの冊子なので、皆さんも基幹病院を受診している前提で話を進めます。さて問題です。あなたの主治医は、どこに所属しているでしょう?
 はい、まず病院に勤務していますね。当たり前です。ただ、この場合は組織より職場という呼び方がふさわしいかもしれません。そして一般の人には分かりづらい話ですが、病院と医師との雇用関係を、通常の企業と社員の関係のように帰属意識が強いものと考えたら大間違い。一部のブランド病院など例外はあるものの、たいていは派遣社員に近いイメージです。常勤であっても、若い間は何年か経つと異動していなくなります。
 であれば、一般で言うところの派遣会社もあることになります。それが大学の医局です。勤務医の多くが自分の本籍と認識しており、市中病院に勤務するのも医局の指示なら、大学へ戻るのも医局の指示です。
 医局と言われてもピンと来ないと思います。これは、大学の教室(研究室)と大学病院の診療科とが渾然一体となったものを指します(06年9月号参照)。専門的な患者の診療と併行して、医師の教育と職の斡旋、そして医学研究が行われる場です。
 研修を終えた新米医師は、たいていどこかの医局へ入局します。一般社会で言うところの企業へ入るのに近いものです。
 ほとんどの医師が入局するのは、一人前になるまで先輩に教えてもらう必要があるからです。どこで誰に教わるか重大な問題であることはお分かりいただけると思います。たいていの施設や指導層の医師が医局と関連づけられていたので、入局するのが自然の流れでした。医局にいれば働き口を紹介してもらえるというメリットもあります(ただし、たとえば僻地へイヤイヤ行かされるデメリットも)。
 04年度に新臨床研修制度(08年3月号参照)が導入されて以降、卒業した大学以外へ入局する医師や入局しない医師が増え、それが地域バランスを崩していると問題になっています。しかし、全体から見ればまだ少数であること、今回の話の本筋でないことから、ここでは触れません。
 医局は診療科ごと、つまり医療分野ごとにあることになります。この専門分野というくくりで医局横断的に組織されているのが学会です。最新の医学知識や互いの経験を共有したり、標準的な治療指針を定めたりしています。専門医の資格認定・付与をするところもあります。学会に所属していると、専門家としての技量や知識の維持向上をサポートしてもらえることになります。
 ただし、一つに所属していれば大丈夫というものでもなく、主要な学会が集まっている日本医学会傘下に105団体(主に基礎系)、日本専門医制評価・認定機構に69団体(主に臨床系)あることからも(08年10月現在)、かなり細かく分かれていて、医師全体を包含するようにはなっていないことが分かると思います。

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