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これからは個別化医療の時代。

 去る10月、日本の大手製薬メーカーが、「今後は個別化医療に力を入れていく」と表明しました。ここ数年、個別化医療への注目と期待がますます高まりを見せています。
 この「個別化医療」、またの名を「オーダーメイド医療」ともいいます。
 洋服を思い出してください。皆さんは通常、お店で既製服を買いますよね。その場合、SMLやウエストの大きさでサイズを大まかに選んでいるはずです。でも、試着しないで買ったら、実は体のラインに合っていなくて不恰好だった、なんていう経験はないでしょうか。これまでの医療も実はこれと同じようなもの、と言ったら驚くでしょうか。
64-1.3.JPG 例えばがんの治療にしても、ある抗がん剤は20~30%程度の患者さんにしか効かないことが分かっていながら、それでも投薬が普通に行われています。その結果、効き目がなくても強い副作用だけは容赦なく襲い掛かっている、というのが現状です。
 でもこれは、洋服で言ったら、そもそも20~30%のお客さんにしか合わない服を着せて「しかたない。あとはお客さんの体形の問題だから」と言うのと同じこと。ちょっと考えられないですよね。
 一方、オーダーメイドの洋服だったらそういうことはありえません。なぜならまず最初にお客さんありき、一人ひとり体型を測定して、それに基づいて洋服を作るからです。
 これと同じことを医療で行おうというのが、その名の通り「オーダーメイド医療」というわけです。治療を受ける人ごとに薬の効きやすさや副作用を見極めてから、最もふさわしい医療・投薬を実践します。この手法を創薬や予防に活かす試みも進んでいます。
 その際によりどころとなるのが、「ゲノム」なのです。
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ゲノムから始まる

 繰り返しになりますが、私たちの体はたんぱく質からできています。骨や筋肉などの組織だけでなく、それらを機能させ、バランスをはかり、生命を維持させるのに必要なさまざまなホルモンや酵素もたんぱく質です。ですから、そのタンパク質合成のレシピいかんで、ある程度その人の体質も決まってくるのです。あるいは、そのレシピに予期せぬ変更が生じたり、読み間違ったりすれば、体に障害が出ることまでも容易に想像がつきます。
 ですからDNA上に暗号化されたたんぱく質のいわば「レシピ」である遺伝子と、その大もとであるゲノムを知ることは、今までの医療のあり方を根底から変えることになるのです。
 これまでは多くの試行錯誤の中からより大多数の人、大多数の症状に効果のある治療や薬が採用され、病名ごとに施術・処方が行われてきました。そこには個人の特性や個人差はほとんど加味されてこなかったのです。風邪などのように一過性だったり、原因が明らかで特効薬がある病気ならそれでいいかもしれません。しかし、メカニズムが複雑で治療が困難な病気の場合、その手法は既に壁にぶち当たっています。
 患者一人ひとりのゲノムそして遺伝子の情報が明らかになれば、そこを出発点として、治療や薬の処方を組み立てていくことが可能になります。
 そうなれば、一番初めにお話したドラッグラグや薬価問題にも、一つの解決策が見えてきます。必ずしも海外の高価な新薬に頼らずとも、今ある安い薬を体質に応じて使い分けることで、高い効果が得られるようになるからです。
 というわけで、ゲノムは間違いなく21世紀の医療のキーワードになりそうです。次回は、ゲノムと体質・病気の関係について見ていきたいと思います。

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