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がんの分子標的④ がんの外にあるもの

200-2-1.png がん細胞そのものでなく、その周りにある分子を狙うアプローチもあります。代表例が、血管新生阻害剤です。

200-2.1.png 前回まで見てきた分子標的薬は、がん細胞そのもの(膜上~核内)をターゲットとしていました。

 しかし近年、がん組織内にはがん細胞の他にそれを取り囲む間質細胞(主役の細胞間を埋め、支える細胞)が多く存在し、がん細胞を中心として相互に作用しあう「微小環境」を形成していることが明らかになってきました。そこで、がん本体でなく、間質細胞に分子標的を見出そうという試みも進められています。

 代表例が、「血管新生」を妨げるアプローチです。

 血管新生とは、既存の血管から新たな血管が発芽・枝分かれして伸びていく現象です。腫瘍が1〜2mm(がん細胞数で約100万個)以上の大きさに育つには、血管が腫瘍内に入り込んで栄養や酸素を届け、老廃物や代謝物を運び出す必要があります。そのため、がん細胞自身が血管新生因子を放出し、血管を誘導しているのです。これを妨害できれば、がんに対する兵糧攻めになるのでないかと考えられました。
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標的VEGF

「世界に先駆けて、腫瘍周辺~内部に血管を作らせなければ、がん細胞は栄養や酸素を得られず餓死するはずだと主張したのは、米国のフォルクマン氏です」と解説するのは、がん研有明病院消化器内科の篠崎英司化学療法担当医長(化学療法科医長兼務)。

 1970年代初頭に出たこの説が広く支持されるようになったのは、1990年代後半に入ってから。そして2004年、「米国で、初の血管新生阻害薬となるアバスチン(一般名ベバシズマブ)が認可されました。がん細胞が盛んに分泌する血管新生因子の『血管内皮細胞増殖因子』(VEGF)に取り付いて作用を失わせる抗体医薬です。抗がん剤と併用することで、抗がん剤単独より生存期間伸長を期待できます」。

 抗がん剤が、新生した異常な血管網に阻まれて腫瘍まで到達しにくいのを、「アバスチンが血管を正常化、抗がん剤の効果を増すと考えられています」。

 再発または手術のできない大腸がんや乳がん、進行・再発非小細胞肺がん(扁平上皮がんを除く)、悪性神経膠腫に適応があります。

 「VEGFを標的とする血管新生阻害剤は他に、一般名アフリバセプトが海外では使用可能で、本邦でも臨床試験が行われています。VEGFを捉える受容体タンパク質を人工的に組み込んだ、融合タンパク質です」。抗がん剤との併用で、手術のできない進行・再発の大腸がんに効果が確認されました。アバスチンと異なり大腸がん以外での効果は示されませんでした。

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