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がん医療を拓く⑰ 放射線皮膚炎を緩和 乳がん治療用肌着

109-2-1.jpg乳がんは、手術後に放射線照射した方が長期生存率を上げられます。しかし、乳房への放射線照射は皮膚炎につながり、生活に支障をきたしがちです。この治療中の不快さを和らげる専用インナーウェアが、がん研究会と東レによって共同開発され、実用化目前です。

がん研・東レが共同開発

109-2.1.jpg 乳がんでは、長期生存率の向上に手術後の放射線照射が有効です(コラム)。ただ、がん細胞は体表近くに残っている可能性が高く、見えないがん細胞を叩くため、広い範囲の皮膚に大量の放射線を当てることになり、副作用の放射線皮膚炎が出ます。

 その症状はやけどに似ていて、皮膚が赤くなってヒリヒリ痛み、患者によっては水膨れになったり皮がむけたりします。図で示した部位すべてがただれ、ちょっとした刺激にも敏感になります。

"縄文時代"の対策

 対処法としては、患部に軟膏を塗って布をあてがうことになります。がん研有明病院では、リント布と呼ばれる片側が起毛した医療用の布を用いて保護しています。

 軟膏処置中は通常の肌着は着にくいので、同病院放射線治療部の小口正彦担当部長は患者のため、弾性包帯を切って肌着を作っていました。

 「布に穴を開けただけの、縄文時代の貫頭衣みたいなものです。海外でも探しましたが、どこにも適当な製品がなく、仕方がないので小学校で家庭科の成績は2だった私が、はさみで布をチョキチョキ切っていたんですよ」

 やがて「切りっぱなし」の部分を、患者の家族やボランティアがロックミシンでかがってくれるようになったものの、それでも服の首元などから覗く〝貫頭衣〟は、決して見栄えがいいものではありません。

 さらに問題なのは、患部からの浸出液や軟膏が〝貫頭衣〟も通り抜けて洋服を汚してしまうこと。また、いわばワンサイズものなので体格に合わず、皮膚を刺激したり、リント布がずれたりということもあります。
109-2.2.jpg
いきなり"明治維新"

 放射線照射は2カ月弱の間、基本的に毎平日、外来で行われます。休まず継続しないと、照射の効果が不十分になるので、きちんと通院するのが大切なことです。

 一方で多くの人が、開始約1カ月後から照射終了後1~4週間まで、皮膚炎に悩まされるようになります。皮膚炎と付き合わなければならない1カ月強の間、治療以外の通常の生活をなるべく快適に過ごし、通院を確実に継続するため、安全性、機能性、デザイン性を備えた肌着があったらどんなに良いだろう――。そんな小口部長の思いが、東レとつながり、共同で専用のインナーウェアを企画・開発することになりました。既に特許出願済みで、現在は3回目の試作品を患者が試着するという段階まで来ており、2015年の販売開始をめざしています。

 「最先端の繊維メーカーという黒船が来航して、縄文時代から、いきなり明治維新が起きたんです」

再発予防に有効

 術後放射線治療は、乳房温存術の場合、以前から標準治療でした。一方、乳房全摘の場合、リンパ節転移が4カ所以上の場合に適応とされてきましたが、1~3カ所の場合は手術後5年追跡しただけでは、照射した場合としない場合とでハッキリと差が出なかったため、標準治療にはなっていませんでした。
 近年になって、10~20年を経て再発することもあるという乳がんの性質を考慮し、もっと長い時間追跡したところ、やはり照射した方が成績は良いという結果になりました。
 全摘で1~3カ所のリンパ節に転移があった場合も放射線照射すると、10年間の追跡で再発が約12%減り(約46%→約34%)、20年間の追跡で死亡が約8%減少(約50%→約42%)しました。


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