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情報はすべてロハス・メディカル本誌発行時点のものを掲載しております。
特に監修者の肩書などは、変わっている可能性があります。

長く続く肩コリ、原因は肩じゃない~それって本当?

慢性的に肩が凝って、いくら揉んでも治らない、という人、それは筋膜性疼痛症候群(MPS)かもしれません。筋膜のよじれをほぐす「筋膜リリース」で改善可能です。

専任編集委員 堀米香奈子(米ミシガン大学環境学修士)

 長年ひどい肩コリに悩まされていて、整形外科でレントゲンやMRIを撮り、血液検査までしたけれど何の異常も見つからなかった、という場合にMPSの疑いがあります。筋肉を包む「筋膜」に出来た硬結(よじれ、しこり)から、痛みが生じる病気です。

 パソコン作業など肩を固定した体勢で長時間いると、その間、肩回りの筋肉はずっと収縮していて、中の血管が圧迫され、血行が悪くなります。酸素不足に陥る結果、筋肉の弛緩に必要なエネルギー産生が充分行えず、筋肉は収縮したまま固まってしまいます。これが、いわゆる肩コリです。この場合、体勢を崩して肩を揉んだり、回すなどして硬くなった筋肉をほぐし、血行を回復させれば、一過性で済みます。

関節を越えて痛む

 一過性で済まなくなったのがMPSです。

 筋肉への負荷を繰り返していると、充分に回復できず、影響が筋膜まで及びます。筋膜のヨレが集まってトリガーポイントが出現し、筋肉の周りにある水性成分がゼリー状になってこわばるなどし、自己回復は難しくなります。筋膜のよじれが密集し痛みも生じます。こうしてMPSになります。筋膜の密集が痛みを生む所を協調中心(CC)あるいは融合中心(CF)と呼びます。

 問題は、痛い所とCCとFCとが、同じ場所とは限らないこと。

 「CCとCFは全身に400カ所ほどあり、専門家であればそのコリを触診で判別できます。ただ、全身の筋膜どうしは、体幹を交差して14通りにつながっており、どこかの筋膜に問題が生じているせいで肩に影響が出ていることもあるのです」と解説するのは、首都大学東京健康福祉学部理学療法学科の竹井仁教授です。

 例えば、手首の手術後に肩コリを発症した、あるいは足首の捻挫をかばって歩いていたら腰痛になり、さらには肩コリにも苦しむようになった、というようなことがあり得ます。こうなると、竹井教授曰く「肩コリだからと肩ばかり施術したところで、一瞬楽になった気がしても、またすぐ症状が出てしまいます」とのこと。正しく診断して、筋膜のよじれをほぐさないことには、治らないのです。

 1980年代に米国で発行された医学書には既に載っているのですが、冒頭に挙げたような一般的な検査では特段の所見が見られないため、その存在すらあまり知られてきませんでした。今日でも、多くの医療機関では診断・治療が困難で、五十肩などと誤診される場合すらあります。

 思い当たる、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。

筋膜をほぐす

 さて、筋膜のよじれをほぐすって、一体どうすればよいのでしょう?

 竹井教授が勧めるのが、イタリアで発案された「筋膜マニピュレーション」による施術です。解剖学や組織学に基づき、筋肉や骨の障害に筋膜がどう関わっているかを明らかにしてきた学問で、患者の身体状態の変化を臨機応変に捉えながら、筋膜のよじれをほぐしていく治療手技を発達させてきました。

 また、それをベースに竹井教授が考案した自宅版「筋膜リリース」を行うことで、自力でも症状改善できる可能性があります(コラム参照)。元々は、専門家による筋膜マニピュレーションや筋膜リリース施術の後、よじれが戻らないように自宅でその効果を維持していくためのものでしたが、それ単体で行っても一定の効果は得られるようです。

 ただし、MPSかどうか、どの筋膜のつながりに問題が生じているのか、といった判断は素人には難しいものです。思い当たる節があり、本格的な治療を受けたい方は、竹井教授が管理する「Fascial Manipulation Japan」のフェイスブックページにある「筋膜マニピュレーション治療を受けられる病院一覧」を参考に、受診してみてください。

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