探検隊、遭難!?~リン酸探検隊最終回
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文・堀米香奈子 本誌専任編集委員。米ミシガン大学大学院環境学修士
これまで、加工食品へのリン酸やリン酸塩の使用量を調べてきました。リンが飲食物から過剰に吸収されると、排泄の際に腎臓を傷めるので、尿からの排泄量を1日1000mg未満にしたい、との考え方からです。
おさらいしますと、食材由来の有機リンは、吸収される割合も低く、神経質になる必要はありません。一方、食品添加物の無機リンは、ほぼ100%吸収されると考えておくべきです。日本人は通常、食材から1日約1000mgのリンを摂っており、その半分程度が尿から排泄されると見られます。添加物から摂ってよい無機リンは、差し引き500mg程度まで、となります。
無機リンは何%?
今回は、よくある一日の献立から、合計どれくらいの無機リンを摂っているか調べてみようと試みました。しかし目論見は早々に頓挫しました。食品メーカーの協力が、ほとんど得られなかったためです。
原材料の配合が味などに関わるために企業秘密なのかもしれませんし、もしリン酸塩の過剰摂取と結びつけられれば商品イメージに差し障ると判断したためかもしれません。
文科省の「食品成分データベース」で、代表的な加工食品のリン含有量は分かります。しかし、その何%が食材由来の有機リンで、何%が添加物由来の無機リンかは不明です。
このコーナーでは、加工食品は「あると便利、でも必須ではない」と考え、「食材由来の有機リンも含んでいても、安全のため全部尿から排泄されるとしてカウントする」スタンスでした。
しかし毎日の生活を思い浮かべた時、加工食品はもはや「なくてはならない」もの。それ抜きでは献立を立てることすら難しいのです。その含有リンがすべて無機リンと考えるのも、無理があります。
リン過剰で腎臓が壊れないよう、加工食品からの摂取量を把握したい、と始まった本企画。しかし、有機リンを多く含む食品でも無機リンと区別なく「1日500㎎以下」を貫くのは、やり過ぎです。そこでいったん中断し、また有機リンと無機リンを分けて把握できるようになったら再挑戦したいと思います。
振れ幅の中で
大前提として、リンは細胞の材料で、生命活動に必須の栄養素です。でも過剰が続けば腎臓が壊れていき、排泄が滞ります。全身の血管が石灰化するなど、様々な弊害を生じます。ホメオスタシス(生き物が生まれ持つ、体の中の状態を一定の範囲内に収めようとする働き)の破綻です。
ただ、添加物の無機リンも、500㎎以下なら上手にメリットを享受しうるわけですし、マグネシウム摂取で悪影響を和らげることもできます。
ホメオスタシスも、ある程度の振れ幅を持って維持されていますから、過度に神経質になる必要はありません。適度に気を遣いながら、食を楽しみたいですね。