文字の大きさ

過去記事検索

情報はすべてロハス・メディカル本誌発行時点のものを掲載しております。
特に監修者の肩書などは、変わっている可能性があります。

あなたの悩みにお答えします⑨

病気の子どもに口うるさく言って、ケンカになってしまいます。どうしたらよいでしょうか?

答える人 高橋織さん(40代女性 アレルギーの子どもを持つ母)
聞き書き 武田飛呂城・NPO法人日本慢性疾患セルフマネジメント協会事務局長
 病気の子どもとの関係、難しいですね。

 私の子どもは2000年生まれで今年17歳になります。生後6カ月の時、離乳食を食べさせたところ、ひどいアレルギー症状であるアナフィラキシーショックを起こし、救急車で病院に運ばれました。

 病院に着き、医師からの第一声は「お母さん、何食べさせたの!?」でした。頭が真っ白になりました。それ以降、子どものことで自分が知らないことがあってはならないという強迫観念から、子どものすべてを管理しなければいけないと思い、子どもが何を食べて、いつ排便・排尿して、熱は何度でと、すべてをノートに書き留めるようになりました。今から考えると異常なほどとも思いますが、病気の子を持っていると、社会から子どもの説明を求められることが日常になっていたので、特に異常とも思わず、子どもが小学校を卒業するまで、その状態が続きました。

 子どもは様々な食材にアレルギーがあり、食事の準備が大変なのはもちろんですが、最も困ったのは飲み薬(錠剤)の基材として使われているトウモロコシにアレルギーがあり、ほとんどの飲み薬を飲めないということでした。風邪をひいても薬が飲めないので、よく風邪をこじらせて肺炎を起こし、入院しました。当時はアレルギー対応の入院食を出してもらえなかったので、入院の度、3食分を作って持っていきました。夜も付き添いが必要で、父親が病棟の床にアルミシートを敷いて眠り、朝になったら私が食事を持って行って代わるというような生活もしました。

 病気は、本人が一番つらいと思います。でも、親も本当に大変です。病気のことは怒れませんが、ストレスはたまります。そのストレスが、病気以外で手のかかることに対して爆発することもあります。でも、怒るというのも大切なことです。母は生身なんだと知ればよいのです。また、子どもの方も、病気によって普段から様々なことを我慢しています。病気のない子に比べて、ストレスもたまっているでしょう。母のように感情を吐き出して良いと、知ってもらいたいとも思います。

 うちの子どもは、病気があっても小さい頃からやんちゃで、冷や冷やすることもたくさんありました。でも、小さい頃に管理し過ぎ、必要以上に密接な関係になってしまったという思いから、自分の側から離し、子どもを自由にさせなくてはと、行動範囲を少しずつ広げるようにしました。最初は自転車で行ける範囲の自由を作り、徐々に範囲を広くして、中学校は電車で通う場所に入学させました。ちょうどその中学校の近くに、アレルギー専門外来をもつ病院があったことも幸運でした。

 子どもから目を離す時、不安でたまらない自分ではいけません。子どもから目を離すのを罪だと思わないこと。それは自分にも練習がいることでした。

 昨年、子どもはスキーの合宿で、私と離れて海外にも行きました。他の人からは「何かあったらどうするの?」と言われることもあります。でも、考えてみてください。子どもが自分で対処して、周りに助けてもらう練習をしなかったら、どうやって生きていけばよいのでしょう。取り返しのつかない失敗をしないように、少しずつ失敗すればよいのです。

 最近、子どもと言い争いになっても、最後には「思った通りにやってみなさい」と言うようになりました。病気にこれだけ縛られているんだから、もう充分でしょう。正しくても、間違っていてもいい。君は自由になれ。母はそう思っています。
  • MRICメールマガジンby医療ガバナンス学会
掲載号別アーカイブ