全国医師連盟

投稿者: 川口恭 | 投稿日時: 2008年06月08日 18:01

本日、設立総会とその後の記念講演会があったので
記念講演会にお邪魔してきた。
終わった後で会見もあった。
1月の総決起集会の時は
会場に集まった医師たちの熱気とは裏腹に
会見に出てきた人たちが、どうも歯切れが悪くて
「こんなんで大丈夫なのかな」と正直心配になったが
今日は別人のように堂々としていた。
期待して今後を見守りたい。


記念講演会に関しては、誰がしゃべったかだけご紹介する。
これだけのメンバーが
(医療界のリーダーではないかもしれないが、それぞれ活動がユニーク。
 活動の詳細は全員についてリンクを張ったので、そちらをどうぞ)
ネットワークを組む、それだけでも面白いことが起きそうな予感はする。
壇上でしゃべったのは、前から順に
黒川衛代表挨拶
来賓の上昌広氏祝辞
1)佐藤一樹氏(東京女子医大事件被告・HN「紫色の顔の友達を助けたい」)
2)川嵜真氏(HN「いのげ」)
3)中原のり子氏(過労自殺した小児科医の妻)
4)江原朗氏
5)澤田石順氏(リハビリ行政訴訟原告)
6)木田博隆氏(メディカルコンパス事務局長)


講演のスライドなどは医師連盟のサイトにアップされるそうなので
それを見ていただくことにして会見のやりとりをご報告したい。


黒川代表
「医師会や学会とは異なる医師組織として誕生した。医療崩壊局面にあって、既存組織が解決への方向性を示さない現状があり、現場の医師による新しい組織が必要と考える。活動の重点項目は三つ。診療環境の改善、医療情報の発信、医療の法的倫理的側面の解決である。

現在、150名の実名公表できる発起人がおり、会員数は740人。午前中の総会で規約を確定させ、既存の組織と異なるユニークな点として会員全員による投票で役員を選出した。

我々は日本の医学・医療に自信がある。医療費はムダ金ではなく、国民の幸せをつくるための政策予算であること、日本の国力増進につながることを申し上げたい」


連合通信(連合の機関紙かな)ワタナベ記者
「ドクターズユニオンについて今後の予定は?」


角田鉄太郎執行部
「最初から3本柱の1つとして位置づけてやっていく。形態は1人ずつ加盟するプロ野球選手労組のようなクラフトマンズユニオンを想定している。いつ、ということは今申し上げられないが、今から具体的に詰めていく段階であり、具体的にどのような勤務実態にあるのか調査したい。また自ら労働基準監督署に行くような方もいるが、不当な労働環境改善に取り組もうとする方はサポートしたい」


日経ヘルスケア・野村記者
(メディカルから異動しても取材に来た。さらに質問までした。エライなあ)
「舛添厚生労働大臣が医師数を増やすと行っているが、それについてどう考えるか。もし内部で意見がまとまっているなら教えてほしい。もう一つ後期高齢者医療制度についてもスタンスを教えてほしい」


黒川代表
「勤務医は圧倒的に足りない。看護師も足りない。それは間違いない。しかし、今の医療体制のまま、単に医指数を増やしても、敗戦時に若年層まで兵士として動員したようなもので意味がない。しっかりした研修を積める裏付け、そのための予算が手当てされないままに今のキツイ労働環境の医師を増やすのは反対。後期高齢者医療制度については、長寿医療制度の名にふさわしいものであれば歓迎する。しかしながら骨太の方針以来の流れとして弱者への医療費がムダ金であるかのような発想が見え隠れするところに問題があると思う」


フリー・辰濃記者(前回の会見の際1人で延々と質問し続けた人)
「一番大切な課題は財源なんだという話があったが、それには国民運動にならないと難しいのだろう。国民を巻き込む形として、患者さん、医療過誤被害者の意見をすくいながら共にやっていくことが欠落しているのでないか。(後略)」


黒川代表
「医療者は皆、患者さんが思わぬ形で亡くなった時の家族の悲しみを見ている。過誤があろうがなかろうが、そうした方々は社会的に救済することが必要だと思う。社会がそのような取り組みをする際には真剣に協力していきたい。医師の勤務が苛酷という話だけをしたいのではない。財政の話は素人には分かりづらいが、医療費は弱者が幸せに生きていくために必要な政策的予算であるということを申し上げたい。つまり連続している。医療側での反省がないわけではない。まだ勉強の足りない部分もあるだろう。反省が問われているのは十分承知しており、厳しく自問自答しながら、一方で労働条件について国民的議論を呼びたいと思っている」


坂口志朗執行部
「過誤に限っていえば、大きく取り上げられるようになったのは横浜市大取り違え事件と都立広尾病院事件からだと思う。どちらも巨大化したシステムの中で起きたことだったが、システムの改善は進まずに個人の責任追及で終わっている。現在でもシステムエラーを発見し改善するのは難しいことではあるが、とにかく信頼感を取り戻さないと始まらない。そのために自律的組織をつくって対応したい。決してマスメディアや被害者、市民と対立するつもりはない」


医事新報・イワダイラ記者
「日本医師会とどういう関係にするのかのスタンスを教えてほしい。また会員数はどの程度をめざすのか。活動範囲をさらに広げるつもりはあるのか」


黒川代表
「歴史的には医師の同業者組織もいろいろあって日本医師会にしても全国医学部長病院長会議にしても、それぞれに実績や貢献があったと思う。そういった先輩組織を見習いながらということになるが、医療崩壊に関して先輩組織がきっちり対峙して解決の旗印を掲げているようには見えない。我々は平均45歳と比較すれば若いので新しい成果を得ることができると思う。医師会とは是々非々で連携していきたい。会員数は医師会が医師26万人のうち16万人、我々が740人。数は千人に届いたなら次は1万人をめざして、活動も社会的実績を積み重ねていきたい」


角田執行部
「ユニオンのことで言い忘れた。現場で本当に忙しい人は今日来れていない。医師連盟の存在そのものすら知らないかもしれない。その人たちに地道な活動を通じて我々の存在を知らせ、その後は本人たちに声を挙げてもらわないといけない。自分たちの労働環境を守ることは、ひいては患者さんを守ることになるのだという意識を早く持ってもらうようにしたい」


辰濃記者
「1月の時点では会員が千人になったら正式発足という話だったはずだが、なぜ740人の段階での発足なのか。それから日医と対立するものではないという話だったが、今回は代議員制でなく直接投票だとか医療崩壊と対峙してないとか、言い回しが微妙に変わっている。スタンスに変化はあったのか」


遠山義浩執行部
「たしかに1000人メドとは言ってきたが、会員内からの声があった。1月も、6月から7月をメドとは言っていた。日本医師会との是々非々のスタンスには全く変化がない。会員の中に医師会の会員もかなり入っている。末端の医師会会員の声がなかなか日本医師会に届かないという欲求不満があるからだ。対立という気持ちは全然ない」


黒川代表
「医学会や医師会は現場と違う高みから発言している印象がある。我々は平均45歳で、まさに現場を任されている人間たちの声として、功なり名を遂げた人とは違うよい声を届けられると思う」


じほう・タベイ記者
「当面優先する課題を3つくらい、担当執行部と併せて教えてほしい」


黒川代表
「診療環境の改善は、ユニオンレベルの対応と医師連盟としての対応があると思うが、ユニオンについては角田執行部が担当する。医療情報の発信・啓発については三輪執行部が担当する。市民からの質問を気軽に受けて答えるような仕組みにしたい。その市民の中には記者も含まれる」


タベイ記者
「その辺は環境整備的なことで、効果が出るまでに時間がかかるのでないか」


黒川代表
「あまり明らかになってなかった部分がまだ多い。現場の実態を分かってもらったうえで、これでいいのかという国民的議論を呼びたい。そのためにまず調査して、それを公表する。それをどう使うかは我々の範疇ではなく、市民や政治家がどう判断するかだと思う。まずは実態を知ってもらいたい」


リベラルタイム・クリハラ記者
「医療費の問題で、医療者や医療機関が大変なのに、製薬会社や医療機器メーカーが火の粉をかぶっていない印象があるのだが」


黒川代表
「予算がパイの奪い合いになったらいかんと思う。日本の医療従事者はそれなりの競争を抜けて資源投入されている。これを生かさない手はないと思う。もう少し私たち医療者の力を見込んで、私たちが力を発揮し、国の富を増やすことをさせてほしい。どこかを削ってどうこうというより、もう少し私たちに力を発揮させてもらえないだろうか、ということ」


質問が絶え、普通は「では会見を終わります」となるのだと思うのだが
ご愛嬌で、黒川代表がさらに最後の挨拶をすることになった。
「歴史が組織を作る。今、医師にとって必要な組織をつくっている実感がある。医療崩壊のさなかに必要な組織が産声をあげたという意義は非常に大きいし、この誕生は歴史の必然と言っても過言でないと思う」


(了)

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