ビジョン具体化・中間とりまとめ

投稿者: 川口恭 | 投稿日時: 2008年09月22日 17:03

この間までご報告を続けていた
「安心と希望の医療確保ビジョン」具体化に関する検討会
(ビジョン新検討会)の中間とりまとめが出ました。
なかなか興味深い文言が並んでいて
でもマスコミには一部しか出ないし
厚労省のサイトに上がるまでにも時間がかかりそうなので
全文掲載してしまいます。


本検討会は、国民が地域で安心して医療を受けられるよう、医療を守り質を高めるために必要な具体的な方策について、国民・患者や現場の視点に立って7回16時間を超える時間にわたり議論を重ねてきた。
 厚生労働省においては、こうした議論を踏まえて、関係省庁とも協力し、下記の事項及び検討会で出された現場の知恵ともいうべき提案について積極的に取り組むことを要請する。
併せて、医療者、特に指導者たる病院長・医学部長等においては、真に国民の信頼を得るため、徹底した情報開示を含めた自浄作用への取り組みが求められる。
更に、 医療費の対GDP比がOECD30カ国の中でも21位と低い水準にあることを踏まえ、より質の高い医療の実現とそれに必要な医療費のあり方について国民的な議論が行われることを期待する。

1 医師養成数

産科や救急などの診療科では勤務医の不足から厳しい状況におかれ、また、地域によってはその他の診療科も含め医師が不足する事態となっている。こうした勤務医等の待遇等の状況を改善するとともに、さらに医療の質を高めるため、医師養成数については増加させるべきである。
○来年度においては、医学部教育・地域医療に支障を来さないよう配慮しつつ、少なくとも過去最大の医学部定員(8,360人)を上回る程度を目指すべきである。
○我が国の人口10万対の医師数はOECD30カ国中26位と低いこと、OECDの平均医師数が我が国のそれの約1.5倍であることも考慮し、医学部教育・地域医療に支障を来さないよう配慮しつつ、将来的には50%程度医師養成数を増加させることを目指すべきである。その後医師需要をみながら適切に養成数を調整する必要がある。こうした医師需要を検証する観点から厚生労働省において必要な医師数について推計し直すべきである。その際、少子高齢化の進展や国民の医療に対するニーズや意識が変化していることを踏まえ、あるべき医療の姿もイメージしつつ、高齢化の状況、患者の診療動向、女性医師の増加や働き方に関する意識の変化、医師の勤務実態、世代別の状況、医療提供体制のあり方など様々なパラメータをできるだけ考慮した専門的な推計を行うべきである。

2 医師の偏在と教育

 現下の医師不足問題は、診療科の偏在と地域の偏在という「2つの偏在」によって深刻さを増している。国民が地域において確実に必要な医療が受けられるようにするためには、医師の数を増やすだけでなく、こうした偏在の問題に的確に取り組む必要がある。
○診療科の偏在の問題については、特に病院に勤務する医師が減少傾向にある診療科や救急医療においては、時間内でも時間外でも厳しい勤務を求められることが多いことを踏まえて、その働きを評価し、医師が魅力あると思うようなインセンティブを付与することが重要である。外科系の診療科をはじめ医師の技術を適切に評価するため、ドクターフィーについても検討する必要がある。
○地域の偏在の問題については、へき地などで働く医師へのインセンティブの付与、へき地などへ派遣された医師を様々な面でサポートする体制の整備、医学部の定員を増やす場合に地方出身者が地元の医学部に入学しやすくする方策が必要である。また、専門医としての総合医・家庭医の養成とともに、他の専門医が総合医・家庭医となって地域医療を担うようなキャリアパス、再教育のプログラムが必要である。
○当面、上記のインセンティブの一つとして、産科、救急、へき地などで勤務する医師等に対して手当を支給し、その働きを評価すべきである。また、通常の勤務に加え、当直やオンコール対応など厳しい状況に置かれた勤務医の勤務条件を短時間正規雇用などにより改善を図るべきである。
○また、2つの偏在の問題に対応し、また、医療の質を高めていくため、現場の意見を十分聴取・検証し、国民・社会特に患者の声を聞きながら、諸外国の例を参考にしつつ、初期臨床研修制度や専門医トレーニング(後期研修制度)のあり方を見直すべきである。
○より質の高い医師を効果的に養成する観点から、医師の卒前・卒後教育の連携をはじめとした臨床研修制度のあり方について、文部科学省と厚生労働省との合同の検討会を早急に立ち上げ、対策の具体化を図るべきである。

3 コメディカル等の専門性の発揮とチーム医療

 よりよい医療を実現するためには、治療にあたるチームを構成する医師のみならず各コメディカルが専門性を発揮していくことが重要である。
○コメディカルが専門性を持ち、キャリアアップできる仕組みが必要であり、そうしたことへのインセンティブの付与や支援が必要である。同時に、コメディカルの数を増加させることについて具体的な検討が必要である。
○チーム医療を実践することや各職種が専門性を発揮し、患者のためのよりよい医療が行われる体制がとられることを前提に、その職種でなくても行いうる業務を他の職種に担わせるスキルミックスを進めるべきである。
○患者の安全性向上のため、4年制大学への移行も視野に、看護師基礎教育の充実を図るべきである。
○医療者と患者間の真の協働関係を樹立するためには、医療従事者が全体として、患者の立場を十分に配慮するという施設の「文化」を醸成する必要がある。そのためには管理者の姿勢が重要である。諸外国の例を参考にしながら、医療における院内メディエーターの活用も今後の検討課題とすべきである。

4 地域医療・救急医療体制支援

○ 地域医療の担い手の一つとして、専門医としての総合医・家庭医のあり方等について検討を進めるべきである。
○ がんなどの在宅医療や看取りまで行う在宅医療・在宅医の専門性を評価すべきである。訪問看護について、医師の標準的指示書や個別的約束指示の下で看護師の裁量性を認めることや、訪問看護のあり方を検討すべきである。
○ 地域全体の病院医師や診療所医師の連携を円滑に進め、診療所医師が病院での診療に携わることを進めるためには、病院における医療に対する診療報酬を、ホスピタルフィーとドクターフィーに区別することを検討する必要がある。また、地域全体の病院医師や診療所医師の連携を円滑に進め、患者の入退院・転院を円滑に進めるためには、地域の医療機関における電子カルテの情報共有が必要である。また、医療の透明化を図るため患者が無料で明細書(診療内容がわかる領収書)を受け取ることができるようにする必要がある。

○ 救急医療において、患者が適切な医療を受けられるようにするためには、最も重症の者を受け入れる第三次救急の体制を堅固なものとすると同時に、軽症者も含め多くを受け入れている二次救急を支える体制を構築することが重要である。その際、地域医療を現在保っているネットワークを活用するよう、各地域の実情を十分把握する必要がある。
○ このため、数多く救急患者を受け入れた医療機関・医師を評価すること、地域によっては二次救急が福祉的なニーズを持った患者を相当数受け入れているケースがあることから福祉関係の行政機関をはじめ関係機関が協力して受け止められる体制を構築すること、医師以外にも適切なトリアージができる看護師を養成すること、が必要である。
○ 医療と消防の連携を円滑化し、消防防災ヘリコプターの救急搬送における活用を推進するべきである。

5 患者・住民の参画

○ 地域の限られた医療資源を活用し、必要な人が必要な医療を受けられるようにするため、かかりつけ医を持つことを呼びかける、病院受診前に自分の状態をチェックするためのフローチャートを作成・配布する、医療に関する住民主催の勉強を開催する、といった地域住民による主体的な取り組みが行われている。各地のこうした取り組みを支援し、住民とともに地域医療を守ることが重要である。
○ 患者・住民に関わることを決める場合には、患者・住民とともに議論し、考えるという視点が重要である。

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コメント

言っている事は正しい方向にはあると思いますが。
結局、何やるにしても、金がかかりますからねー。
医療費を削減しても、これが全部できる、って事は絶対にないので。

一時的に、医療費削減を凍結。
ではなくて、大幅にアップする、という事を決めないと。
所詮は、机上の空論でしょう。

>DR.I先生
コメントありがとうございます。
おっしゃる通りで
これからが本番ですね。

医療崩壊ー地域医療の崩壊は、今国民的な関心になっていると思いますが、わたしの知人の開業医の先生が最近、このテーマで執筆されています。
この本によると、その崩壊の主な責任は、医療行政の問題にあると指摘しています。つまり、医療費など年間2200億円削減のしわ寄せを、地域の医療現場に押しつけているとのことです。
このような、一開業の方々を含めて、現場の医療関係者から様々な議論が巻き起こってくることを期待したいところです。
『医は仁術か算術か―田舎医者モノ申す』(定塚甫著・社会批評社・1500円)
http://www.alpha-net.ne.jp/users2/shakai/top/80-9.htm

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