グリーフケアってなに?

投稿者: | 投稿日時: 2009年02月25日 11:45

昨日、くい止める会で行っている募金活動について、事の始まりを振り返りましたが、それとともに事務局が注目しているもののひとつが、グリーフケアだといいます。「グリーフケア?」皆さんは聞いたことがあるでしょうか。


グリーフ(grief)とは、夫や妻、子ども、父、母、きょうだいなど、大切な人を亡くした深い悲しみ、喪失感をいいます。医療においては、医師の懸命の努力にも関わらず不幸な転帰をとられることも、残念ながらめずらしいことではありません。そしてどんな場合でも、ご遺族の心痛は計り知れないものがあります。まして突然の死、想定外の死であれば、そのショックはさらに大きいことでしょう。


そこからの立ち直りをサポートしていこうというのがグリーフケア(grief care)です。


通常、人は大切な人との死別から精神的に立ち直るまで、いくつかの段階を経ていくといわれています。たいていは1年から数年かかるそうです。私が目にしたことがあるのは、悲しみの表れの推移を、急性期(ショックの段階)、中期(死・死者への執着段階)、回復期(精神的自立の段階)の三段階に分ける説です。

急性期には、頭が真っ白になって、「彼は死んでいない」と現実を否定するなど、死の事実を受け止められない状況に陥ることが多く、これは突然のあまりに大きな悲しみに対する自己防衛反応だそうです。そしてその後、深い悲しみが押し寄せます。ここで思い切り泣くことも、立ち直りを助けるといいます。

中期は、たいていの人が数年間かけて通過します。長い人はなかなか抜け出せないとも言います。一見ふつうの人と変わらなくても、不眠、食事が食べられない、倦怠感、うつ症状といった状態が続いていたりします。特徴的なのは、怒りや恨みです。自分に向けられれば自責の念となります。ものすごく些細なことや過去にさかのぼって、「あの時私がこうしていれば…」などと、因果関係がないに等しいことまで大切な人の死と結びつけて、自分を責めるのです。自分以外へ向くこともしばしばです。矛先が死者本人や世間一般のこともありますが、医療者に向けられることが多いのも事実です。


そして医療の場合、怒りの気持ちを呼び起こす直接的原因が実際にあることも多いのです。大切な人が死に至った経緯が明らかでなかったり、そこに疑問があって納得できない場合です。遺族が大変苦しみ、それを知りたいと思うのは当然です。現時点では裁判で明らかにする以外に手段がないという理由から、訴訟件数はうなぎのぼりです。しかし、裁判で確認される「法的事実」は、遺族側が知りたい「医学的事実」と異なることも多く、たとえ勝訴しても満足できないことも珍しくありません。

そこで最近注目されているのが「対話型ADR(裁判外紛争処理)」というものです。くい止める会の事務局が置かれている研究室でも、海外の事例などから日本おける実施に関心を持っています。(詳しい話は別の機会に♪)


一方、悲しみの自然な推移として表れる怒りや恨みも、その感情を無理に押し殺さず、上手に発散させることが大事です。それには周囲のサポートも欠かせません。ただしそれは、なにも励ますこととは限りません。「頑張って」という言葉さえ、ときにはプレッシャーにしかならないものです。ただ傍に寄り添って、話を聞き、受け止め、折を見て現実的なアドバイスをする。その役は家族や友人が担えることもありますが、専門家(グリーフ・カウンセラー)も少しずつ増えています。

くい止める会でも、募金のあり方とあわせ、そうした取り組みに協力できることがないか、今日も議論が交わされています。

<<前の記事:募金活動は“Yes, We Can”?    子育ては不衛生に?!:次の記事>>