医療再生 やっぱり母は強し!

投稿者: | 投稿日時: 2009年03月08日 13:34

来る3月28日、京都で、

「今の医療、こんなんで委員会」シンポジウム

というものが開かれるそうです(詳細は一番下にも引用してあります)。
テーマは「妊婦のエチケット 医者のマナー」ということで、今回はとくに産科を取り上げ、医療現場での妊婦と医師の信頼関係の構築、そのためのコミュニケーションについて議論を深めるとのことです。

その中のシンポジストの一覧を見ると、「医療サポーター養成所」代表の山根さんという方がいらっしゃいます。ちょっと気になっていたところ、くい止める会の事務局の先生から、親交があるとの話を聞きました。

何でも、山根さんは、これまでくい止める会の募金活動にもご協力いただいている”お母さん”とのこと。医療の現状に危機感を持って、医療側と患者側に横たわっている意識や認識のギャップを解消しようと、患者側からの歩みよりを実践すべく動かれている方のようです。


少しずつですが、最近、こうした患者側からの草の根的な動きが全国に芽生え始めているという話が、あちらこちらから伝わってくるようになりました。代表的なのはやはり、兵庫県の「県立柏原病院の小児科を守る会」でしょうか。


「守る会」は、子育て中のお母さんたちによって平成19年春に結成されました。皆さん、妊娠、出産、子育てを通じて柏原病院を受診していたところ、新聞報道で同院の産科・小児科が閉鎖の危機にあることを知りました。閉鎖の原因は、お察しのとおり、医師不足です。過酷な勤務状況に、産科・小児科の現場は限界ぎりぎりでした。お母さんたちは、なんとか閉鎖を阻止すべく、「先生の役に立ちたい!私たちにできることをしていこう!」と、自ら時間外の受診を自粛し、広く呼びかけるべく立ち上がったのです。

守る会のホームページでは3つのスローガンが掲げられています。
1.コンビニ受診を控えよう
2.かかりつけ医を持とう
3.お医者さんに感謝の気持ちを伝えよう

時間外の不必要な受診が医師を疲労させているという事実を多くの人に理解してもらう一方、不安な母親には適切な受診のタイミングを教えるなど、啓蒙活動
も行いました。そして実際に人々の受診行動を変えて、見事に産科・小児科の再生を実現させたのです。


そうした守る会の活動の中で、私がはっとさせられたのは、「医師に感謝の気持ちを伝えよう」という呼びかけと実践です。

「感謝の気持ちを相手に伝える」というのは、人間同士のコミュニケーションの基本です。それがたとえ医師と患者という関係であったとしても、生身の人間同士である以上、”以心伝心”なはず。基本は変わりません。なのになぜか、それを忘れてしまう。診察室に入る前から、「患者は医師に思いやってもらって当たり前」になっている。コンビニ受診ばかりしていれば相手のことはいつまでたってもわかりませんし、そんな相手をこちらが「思いやろう」というふうにはならないでしょうから、「自分は自分は」となるのも当然かもしれません。だからこそのスローガンの1・2でもあるのですね。


守る会の活動に対し、県立柏原病院からも「感謝しています」というメッセージが病院ホームページに掲載されています。こうした良好な関係づくり、プラスの双方向コミュニケーションこそ、地域医療の崩壊をくいとめる第一歩に違いありません。これからも第2、第3の「守る会」が現れて、医師と患者が人と人として向き合う医療現場が少しずつ広まっていけば・・・そう願わずにいられません。


===冒頭でご紹介したシンポジウム詳細は以下のとおりです===


「今の医療、こんなんで委員会」シンポジウム 
妊婦のエチケット 医者のマナー

●と き 3月28日(土)午後2時~午後4時
●ところ 京都新聞文化ホール(地下鉄丸太町駅⑦出口すぐ)
●テーマ 妊婦のエチケット 医者のマナー
「医療崩壊」と言われる現在-今こそ、市民と医療関係者との間にある意識の差をなくしていくことが先決です。京都府医師会では今回、産科を取り上げ、医療の現場に必要な信頼関係やエチケットについて考えます。

●内 容
第1部 講演
「医療とコミュニケーション」 余語真夫氏(同志社大学心理学部・教授)

第2部 シンポジウム
シンポジスト:
①産科医師(第二足立病院院長 大坪一夫氏)
②助産師(足立病院看護部長 秋葉秀美氏)
③一般府民(医療サポーター養成所代表 山根希美氏)
④マスコミ関係者(京都新聞社文化報道部次長 栗山圭子氏)

●定 員 先着300名・入場無料(申込制)
参加ご希望の場合は、住所、氏名、電話番号、参加人数を明記の上、京都府医師会「今の医療、こんなんで委員会」係へ、FAX(075-314-5042)、ハガキ又はEメール(konnande@kyoto.med.or.jp)にてお申込ください。

(主催 京都府医師会  後援 京都新聞社)

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コメント

 堀米さま

はじめまして
シンポジウムについて、ご紹介いただき、本当にありがとうございます。

「医療サポーター養成所」代表などと名乗っていますが、これは広告や配布物を作るにあたって、何か肩書きがあったほうがいいんじゃないかということで、急遽つけましたもので、かなりお恥ずかしい限りです。
mixiのなかで同名のコミュニティを管理しているだけの、本当にただの一主婦です。
シンポジウムでは、自分が出産時に経験したことと「妊娠の心得11か条」について紹介させていただこうとおもっています。そのなかで、周産期医療崩壊を食い止める会のご活動についてもお話させていただければと事務局のM先生にご相談させていただきました。

シンポジストのお一人である助産師の秋葉さんも、「お母さん」のお一人です。年間1500件の分娩を扱う足立病院で、そのすべての妊婦さんが作成されるバースプランをもとに、妊婦さんたち一人一人に寄り添いながら、出産のリスクや医療の限界などへの理解を促し、より良い「子育て」のスタートを切れるように、賢いお母さんになってもらえるようにがんばってらっしゃいます。
そのお話を聞けるのを、わたし自身とても楽しみにさせていただいています
(もちろん、他の先生方のお話もとても貴重な内容ですが、「お母さん」のお一人としてご紹介させていただきました。)


丹波市柏原病院小児科を守る会の方とも、交流させていただいており、また知ろう!小児医療、守ろう!子供たちの会にも参加させていただき、色々と勉強させていただいている最中です。
どちらの「お母さん」たちも、パワフルだけど普通の「お母さん」で、同志であるとともに「ママ友」だと思わせていただいています。
私は、賢い女性や妊婦は、いずれ賢い「お母さん」となり、やがて逞しい介護の担い手になり、そんなお母さんたちが育てた子供もまた、医療資源を守り育てる「サポーター」になると考えています。
近頃、モンスターペイシェントとかモンスターペアレントと次々に問題になりましたが、その反面にそれらを反省しようという動きが、医療だけでなくさまざまなところで感じられるようになりました。
学童保育の保護者のなかにも、施設が痛んでいるとか遊び道具が不足だと行政に訴えるだけでなく、子供たちに公共の施設や公共物を丁寧に使うこと、他所の子をどうこういうより、まずは自分の子供のしつけをちゃんとしようという声がでたり、お世話になっている指導員の先生方の待遇や職場の環境の改善も一緒に考えようという意見もでていますし、小学校のPTAでも、なんでも先生へ丸投げの実態を考え直そうという話がでてきています。
こうして「お母さん」たちの意識が少しずつ変わってくれば、いつか大きな流れになるのではないかと希望を持っています。

で、このお母さんたちを動かしているものはなんでしょう。
お母さんたちのパワーの源は、お得で美味しいランチや甘いお菓子とおしゃべりです。丹波市柏原病院小児科を守る会も、丹波新聞の足立記者の呼びかけで、美味しいケーキ屋さんで集まったのが最初です。それがもし、公民館や集会場だったら、「小児科を守る会」は生まれていなかったとおっしゃっていました(笑
世の男性の皆さんは、奥さんや女性たちが、いつもそうやって集まっているのを見て、「暇でいいなー」とかおもってらっしゃるかもしれませんが、そういうところから、実は色々なことが始まっているので、どうか暖かく見守っていただけたらなあとおもいます。

長々とすみません。今後とも、よろしくお願いいたします。


>山根さん
(←恐縮ながら「さま」をつけていただいたので、本当は「山根さま」なのですが、ここでは「さん」で統一させていただいていますのでご容赦ください。)

さらなる情報提供をありがとうございました!
私も「お母さん」の一員として、もっともっと賢くなり、良くも悪くも自分の背中を見ているわが子の手本とならねば、と痛感いたしました。

>丹波市柏原病院小児科を守る会も…美味しいケーキ屋さんで集まったのが最初です。それがもし、公民館や集会場だったら、「小児科を守る会」は生まれていなかったとおっしゃっていました(笑

これは存じ上げませんでした。でも、たしかにリラックスした環境での“おしゃべり”は、堅苦しい「検
討会」なんかよりよっぽど大事な意見が出たりするんですよね。「意見」というかしこまった形ではなく、“本音トーク”というかたちで。

そう考えると、「有識者」と呼ばれる先生方を集めた行政の審議会なんかよりずっと有意義なトークが、日本各地のファミレスで展開されているのかもしれませんね。あとはどうやってそれを目に見えるものにするか・・・ちょっと考えると、やっぱり大変なことかも、と思えてきます。でもきっとそれがいけない。要は、大げさに考えないことが大事なのかな、と山根さんのお話を伺っていても、またくい止める会の活動を見ていても思います。やっぱり、「自分ができることから、まずは始める」ということなんですね!

>やっぱり、「自分ができることから、まずは始める」ということなんですね!

全くそのとおりだとおもいます。
前衛的な主婦が、駅前で拡声器片手に「コンビニ受診をやめよう」と訴えるのは無理だわとおもっても、公園や買い物の途中の井戸端会議でおしゃべりなら出来るんじゃないでしょうか。拡声器もってどれだけ訴えても人の心になかなか届きませんが、おかあさんたちの口コミのチカラは強力です。

「お母さん」たちが、医療問題になじむのは、妊娠出産や子育てで、産科や小児科問題に身近に接しているということが一番だとおもうのですが、もうひとつ、世の「お母さん」たちの悩みと、お医者さんたちの悩みは、それぞれ「家庭」と「病院」という舞台の違いがあっても本質的に似ているからかなとおもいます。

まず、新生児は寝ません。2時間~3時間おきに起きてお世話しなくちゃいけません。お母さんは皆連続して眠れない辛さも、次の日も連続お母さん業務が続くしんどさを知っています。
赤ちゃんの世話は、どんなに大変でもやめると死んじゃうのでやめられないし、責任重大。すごいプレッシャーですが、もうちょっと大きい上の子も、もっと大きい夫も「おかあさんおかあさん」と何でもお母さん頼りで大忙し。
子供の世話で自分の食事もトイレにゆっくり入れずストレスフル
家族全員のために毎日家事をこなしても、褒められもせず感謝もされないばかりか、このおかずは嫌いだの、味付けがどうのと文句ばっかりいわれ
夫に愚痴ると「誰のおかげで暮らせると思っているんだ」とか、「お前が好きで俺と結婚し、欲しくて子供つくったんだから文句いうな」と怒られ、年寄りからは「私たちのときはもっと大変だった」としかられ
子供が不良になったり、ひきこもりになったら、「母親の育て方が悪い」と世間から責められ・・・
なんとなく、境遇が似てると思いませんか?だから、お医者さんたちの大変さに共感できる人が多いんじゃないかなあと思っています。
そんなお母さんたちをどんどん巻き込んで、地に足のついた取り組みをしていくことが大切なんだとおもいます。

>山根さん

考えれば考えるほど、境遇が似ていますね。なんだか私にとっても本当に他人事ではありません。(苦笑)

ゼロから何かアクションを起こすにあたって、そういう“人間レベル”での共感って、実はかなり大切じゃないかと思っています。「頭でわかる」という段階では実はまだ本当にわかってはいなくて(たとえば、「頭ではわかるけど・・・」というのはわかってないときに使いますよね?)、「心でわかる」「心からわかる」という感覚が人間を動かすのではないかと思うのです。

だからやっぱり「口コミ」なのかもしれないですね。顔と中身がわかる相手からの情報は信頼できるし、共感しやすいですものね。私も前衛的な主婦にはなれないので、非常に参考になりました。

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