抗菌、防カビ、って本当は?

投稿者: | 投稿日時: 2009年07月01日 23:50

このところ、梅雨ということもあって、カビや酵母について取り上げています。その中でふと気になったのが、近年増えている“抗菌”や“防カビ”といった加工が施された商品のこと。対象となっているのは、お風呂場やトイレ、台所用品といった水周りの品々から、靴下やタオルなどの繊維製品、はたまた机や文房具などのオフィス用品など、実にさまざまなものがあります。


しかし、「抗菌」というのは、何に対して“抗う”効果があるのか、細菌?カビなどの菌類?それともウイルスにも効果があるのでしょうか?そしてどんな効果があるのか?さらに、「防カビ」という言葉もよく聞きますが、そう謳っていれば決してカビが生えることはないのでしょうか?


そもそも抗菌や防カビ以外にも、滅菌、殺菌など、似たような言葉が溢れていますが、それらの違いについてはあまり深く考えたことがありませんでした。ということで、こうした言葉の定義について明らかにしてみたいと思います。

探したところ、抗菌の定義について正式に議論され、公式見解がまとめられたのは今からおよそ10年前のこと。通商産業省(現・経済産業省)の「生活産業局生活文化産業企画官付生活関連新機能加工製品懇談会」なるものが開かれ、「生活関連新機能加工製品懇談会報告書(抗菌加工製品)」がまとめられました。


その<第一部>抗菌加工製品の現状/3.各業界分野における状況/3-1.「抗菌」の定義によると、当時から、「殺菌」「滅菌」等の見解の一部として「抗菌」についても各産業界が独自の定義づけがされていたようです。ただし、「各関係業界団体における『抗菌』の定義は、おおよそ『細菌の増殖を抑制する』としているが、その内容の表現には若干の違いがみられる。」との報告がなされています。


こうした言葉について、報告書では法令上の定義にも触れているので引用してみると、

●日本薬局方(薬事法第41条に基づき、医薬品及び製剤を収めた告示):
「滅菌」とはすべての微生物を殺滅させるか除去すること、「殺菌」とは微生物を死滅させること、「消毒」とは人畜に対して有害な微生物又は目的とする対象微生物だけを殺滅することと定義している。

●薬事法(施行令):
「抗菌」は抗生物質等の薬物としての意味で使用されている。

とのこと。


さらに、専門書のなかには「殺菌、滅菌、消毒、除菌、静菌、サニタイズなどすべてを意味する」などというのもあったようで、報告書では、「関係業界団体、法令、専門誌等において『抗菌』の定義はそれぞれ異なっている。特に、抗菌加工製品の販売元であるメーカーでは、すべての業界統一的な定義がなされていない。」と当時の状況について結論付けています。


そうした上で、報告書<第二部>新機能加工製品に関する自主的ルール作りの取組に向けてのガイドラインの中では、次のように「抗菌」について定義づけがなされています。


「抗菌加工製品」における「抗菌」とは、「当該製品の表面における細菌(※)の増殖を抑制すること」とする。(中略)ここでは、細菌に関してのみ限定して定義し、また、「製品の表面」に限定して定義することによって、「抗菌加工製品」の機能に対して適切な表示を行い、消費者の適切な商品選択を可能とするための環境整備を図るものである。なお、黒ずみ等の原因であるカビ等の「真菌類」は、「抗菌加工製品」における「抗菌」が対象とする細菌には含めないものとする。

※については、同報告書の指示する方法で別途種類を定める必要があるとしています。


つまり、「抗菌加工」を謳った製品は、「細菌」について、しかもその「製品の表面」のみに関して、「増殖を抑制」するような措置が施されている。ただし、カビ等の菌類についての効果は示していないと考えてよいようですね。

ですから、“抗菌コート”などと宣伝している商品も、一度ついてしまった細菌が死滅したり、減ったりするわけではないのです。大量についたりすれば、それが増えないというだけで、“抗菌コート”のお陰で常にその製品が清潔に保たれているということはありません。


ちなみに、ウイルスは“抗菌”の対象外ではありますが、ノロウイルスなどの例外を除いて、基本的には人の体の中でしか生きられないため、外に出されてしまうと紫外線などの影響により、だんだんと死滅していくそうです。


なお、「抗菌」以外でこれに似た「滅菌」「殺菌」「消毒」「除菌」などの数々の言葉については、現在もメーカーによってその表現が微妙に異なる部分が多いようです。個人的な興味からもいろいろ見てみましたが、数あるサイトのなかでも、読んでいてなんとなく感覚的に腑に落ちるような説明が載っていたのは次の2つでした。ただし、これらはあくまでメーカーや協会独自の定義なので、ほかに通用するとは限りません。「抗菌」については通産省のガイドラインができましたが、その他についてはいわゆる“通念上”の定義で通ってきているのですね。そのあたりは一応頭に置いておいてもいいかもしれません。


●防カビ 抗菌 定義とは (有限会社クリーンアート)

●消毒・殺菌・抗菌…言葉の違いについて (社団法人 浄化槽システム協会)


なお、前者では、気になっていた「防カビ」の定義についても言及しています。
⇒(数種類の)カビの繁殖を防止するもの [ 数種類以外のカビには効果がない ]


ポイントは、どうやら“数種類”ということらしいです。というのも、「防カビ剤」としてJIS認定を受けた商品であっても、その根拠について「かび抵抗性試験方法」(規格番号 JISZ2911)を見ると、そこで指定された13菌のうち、2~5菌の結果で合否を決めるようです。しかも、浴室や台所といったカビの発生しやすい実際の生活空間とは違った試験環境での結果です。私たちの住む一般の建物に発生しやすいカビは、実際にはもっと多いようですし、またそれぞれの建物の立っている状況等によって、防カビ剤の効力がどれだけ発揮されるかが違ってくることも想像に難くありません。


要は、「防カビ」を謳っていても、実際にはカビは生えることもある、ということですね。


さて、ここで見てきたような言葉とその定義を踏まえて、やっぱり気になるのは、「では身の回りのものをどうやって“除菌”“消毒”するのがいいか?」ということではないでしょうか。以前から「清潔、清潔と神経質になる必要はない!」といったことも書かせていただいているので矛盾するようではありますが、何事も“適度”がいいわけで、度を越えた“不潔”“汚染”状態はやっぱり健康を害するキケンも大。ということで、除菌・消毒についてはまた次回、書いてみたいと思います。

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