エコナはだめで、マーガリンは本当に安心なの? |
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投稿者: | 投稿日時: 2009年10月08日 19:17 |
花王が特定保健用食品(特保)に認定されている「エコナクッキングオイル」関連製品の一時販売自粛を発表したのは先月のことです。そして今日、自主的に特保認定を返上したとのこと。
●エコナの特保認定返上=花王、新製品で再申請へ(時事通信 2009年10月8日)
報道ではつい先日、新しく発足した消費者庁の「食品SOS対応プロジェクト」が、特保の取り消しも視野に入れて花王の担当者からヒアリングを行っていたといいます。
●花王「エコナ」特保取り消しも 消費者庁政務官
(2009年10月6日 東京新聞)
我が家ではそもそもエコナを使用していなかったので、この問題にはあまり神経質になってはいませんでしたが、食用油脂の問題でもっと気になるのは「トランス脂肪酸」のほうです。一時騒がれたことがありましたが、その後、積極的に対応に乗り出している企業があまりに少ないように思えてしまうのです。大丈夫なのでしょうか・・・?
ちなみにエコナについては、一般的な感覚としては、「安心」して使用できないものに『特保』が謳われているのは、なんともちぐはぐです。確かにホームページでは、「安全」とは明言していますが、一方で同時に、「消費者の皆さまに、より安心してお使いいただくために、製品中に含まれるグリシドール脂肪酸エステルを一般食用油と同等レベルに低減することとし、それまで一時販売自粛を行う」としています。決して現在の製品のままで「ご安心ください」とはしていないのです。となればやはり、特保認定についても見直されて、また返上という自主対応も、致し方ないだろうというのが至極“ふつう”の感覚かなあと思います。
さて、もっと気になっている「トランス脂肪酸」について。噂を含め、これまでに私の認識していたところでは、
●マーガリンやショートニングなど、人工的に精製された「常温でも固体の油脂」に多く含まれている。
●多量に摂取すると悪玉コレステロールを増加させ心臓疾患のリスクを高めるといわれ、認知機能障害や不妊などにも関連するといわれる。
●アメリカやヨーロッパなどで、トランス脂肪酸を含む製品の使用を規制する国が増えている。
●ファーストフードなどの揚げ油は、ショートニングが使われていることが多い。
●アメリカのケンタッキーフライドチキン(KFC)やスターバックスなどでは自主的に油をトランス脂肪酸の少ないものに切り替えているが、日本では特別な措置はされていない。
●あくまで噂だが、そのためアメリカの店舗で使えないことになった油脂が日本の店舗に回されてきている、という話。
●日本にある身近なファーストフードでは、ミスタードーナツがトランス脂肪酸の多い油の使用をやめたことを、テレビCMでも謳っていた(ホームページにもありました)。しかしその後、それに他のファーストフード店が続いたという話はほとんど聞かない。
といった感じです。
(マーガリンの噂にいたっては、「何年放置しておいても、カビも生えない、昆虫が卵を産みつけることもない、ネズミやゴキブリが寄ってきて食べるようなこともない」などという恐ろしげな話も耳にしたこともあります・・・。)
しかしいずれにしても、やはりきちんとしたことが知りたい。そう思って調べると、農林水産省がホームページ上で情報を公開していました。
要点を挙げると、
●トランス脂肪酸を過剰に摂取すると、血液中悪玉コレステロールが増加し、善玉コレステロールが減少するため、冠動脈性心疾患のリスクが高まる。
●2003年の「食事、栄養及び慢性疾患予防に関するWHO/FAO合同専門家会合」では、トランス脂肪酸の摂取量は、一日当りの総エネルギー摂取量の1%未満にすべきとされた。
●諸外国の対応は、
○含有量の規制措置を実施:デンマーク、ニューヨーク市/カリフォルニア州、カナダ
○トランス脂肪酸含有量の表示を義務付け:米国、韓国、台湾、香港、フランス
○自主的な低減措置を実施:EU、英国、オーストラリア、ニュージーランド、日本
●日本では、トランス脂肪酸の平均的な摂取量は一日当たりの総エネルギー摂取量の1%未満(<国際機関が設定した目標値)であることから、脂肪のとりすぎを避けてバランスよく食べるという食生活指針の基本を守れば、トランス脂肪酸による健康リスクは低いと推定。
●よって農林水産省では、現時点では日本で食品中のトランス脂肪酸についてすぐに規制を行う必要性は低いと考えている。
とのことでした。
要するに、日本では、規制を行っているような国ほどには油脂類そしてトランス脂肪酸の摂取が平均的に少ないから、大丈夫でしょう、ということらしいのです。
しかし、毎日ファーストフードを食べるかどうかは別としても、毎朝マーガリン(あるいはファットスプレッド。←マーガリンよりも油脂の割合が低い。ただ、一般的には「マーガリン」と認識されている商品が多いように思うので、ここでは「マーガリン」と区別せずに進めます)をパンに塗って食べている人は日本にもたくさんいます。体型や体脂肪率をさほど気にする必要のない人だったり、その他の食事が割と淡白な人だったら、マーガリンが好きであれば、それこそそのときくらいたっぷり塗って食べたいかも知れません(かく言う私も、毎朝パン食ではないものの、もしトーストを食べるとなれば、マーガリンはしっかり塗りたいほうです)。
また、「バターはコレステロールが高いから」といって、調理にも、バターのかわりにあえてマーガリンを使う人も、たくさん知っています。トランス脂肪酸についての正しい知識(悪玉コレステロールを増やす可能性)が浸透しているとは思えず、「バター=高コレステロール」というイメージが先行しすぎて、消費者の選択の判断基準を誤らせているかもしれない状況なのです。
さらに、全然意識されていないところで使われていることが多い「ショートニング」も曲者です。ファーストフードの揚げ油はサラダ油だと思っている人がどれだけいるでしょうか。それどころか、「私はパンにはマーガリンもバターもつけません」という人も、もしスーパーやコンビニで大手メーカの袋入りの食パン等を購入していれば、その原材料名にはしっかりと「ショートニング」の文字があったりするのです。そこまで気にしていない人が大半でしょう。
たとえバランスのよい食生活を送っていたとしても、自分たちの食べているものの安全性は気になりますし、正しい知識を持っておくことは大事なことです。ですからトランス脂肪酸について取り組んでいる企業には大々的にそのことを宣伝してもらって、人々のトランス脂肪酸に関する認知を高めつつ、イメージの向上を獲得してもらいたいと思います。そして何より、農林水産省には、ぜひ積極的に動いていただき(業界からの反発等に屈せずに!)、せめて含有量の表示を義務付けていただきたいのです。
つい先日もスーパーマーケットでマーガリンを購入する際、トランス脂肪酸の含有量表示がないかと思って商品の裏側まで探してみたのですが、当然のごとく表記はありませんでした。なお、昔はとあるメーカーから「塗るバター」的な商品が発売されていたので、もしあればそちらを購入したかったのですが、マーガリン・ファットスプレッドは売り場に10種類ほどもある(これもすごいことです)のに、「パンに塗るのに便利なケースに入ったバター」というのは1つもありませんでした。仕方なくその他の観点からマーガリンを選んで買ったのですが、なんとなくすっきりしませんでした。
エコナは特保にも認定され、テレビCMも多く放送され、画期的商品として人々の認知も高かったことだろうと思いますので、なおさら安全性に関しての一般消費者の関心も高く、行政や企業自身も動いたのかと思います。しかし、トランス脂肪酸については特定の商品をどうにかすればすむ問題でないがゆえに、行政の対応もそれだけ慎重になってしまう(生還してしまう)し、影響の大きさから業界も「お互い様」化して腫れ物に触れぬようにしているのではと邪推してしまいます。しかしそれだけに、実際にはもっと問題が大きいはず。とにかくまずせめて、含有量だけでも表示してほしいというのが、一消費者としての現実的な希望です・・・。
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コメント
トランス酸はコーン油や菜種油等の液油を硬化する際に生成します。
しかし最近のマーガリンは、液油の硬化をしていないため、
既にトランス酸含量が少ないものが多く売られています。
テレビによる報道だけを信じてしまうと
間違った理解をしてしまうため要注意ですね。
テレビ局は常に話題を探しています。
特に大きなニュースがない時は特に騒ぎ立てます。
日本人はその情報に踊らされていることが多いように思います。
バターとマーガリンはどちらが健康に良いとは限定できません。
その人の健康状態によっても異なります。
一人一人が知識を持ち、選択できることが大切なんです。
重要なのは自分で情報を集めて判断することだと思います。
ちなみに欧州では健康素材としてオリーブオイルを使用した
マーガリン等が市販されています。