第2回ポリオ不活化ワクチン検討会 進展なし

投稿者: 堀米香奈子 | 投稿日時: 2011年10月16日 03:17

一昨日、第2回「不活化ポリオワクチンの円滑な導入に関する検討会」が開かれ、傍聴してきました。正直なところ、予想していたとおりの=厚労省の筋書き通りの展開で、残念を通り越して摩訶不思議な感覚に襲われました。世間でこれだけ議論が巻き起こり、生ワクチンに対して向けられている「NO」の声も、あの厚労省の会議室の中では“どこ吹く風”。世間と隔絶された空間にいるようでした。


今回の議事内容をざっと振り返ってみると、第1回(8月31日)から約1ヶ月半経過していることもあり、まずはポリオ生ワクチンの接種率の調査結果報告が行われました。それを含め、要点は以下のとおり、


●ポリオの生ワクチン(OPV)を今年4-6月に接種した人は、前年同期に比べて17.5%減。

●不活化ワクチン(IPV)を個人輸入している医療機関でワクチン接種を受ける人が、今年に入って急増、医療機関への患者への不活化ワクチンに関する問い合わせ・希望も増えているが、希望者に比べ実施施設が少ないのが現状。

●輸入ワクチンはサノフィ・パスツール社製がほとんどで、1回当たり接種料金は診療所の場合4000~5000円が最も多い。

●厚労省は10月4日付で各都道府県に対して、「(IPVの導入は)早くても2012年度の終わり頃の予定」「(OPVの打ち控えは)おすすめできません」「ポリオワクチンを接種することが、ポリオを予防する唯一の方法です」等とするリーフレットを添えて広報依頼の通知を行った。

●OPVだと免疫がつきやすいのは確か(腸管免疫も得られる)で、万が一の流行時のためにストックは必要。ただし、IPVでも合計4回の接種で免疫がほぼ完全となる。

●OPVからIPVへの切り替えには、①ある時期から一斉に切り替える方法、②生まれた時期で線引きをする方法、③一定期間はIPVとOPVの併用(合計4回接種のうち、IPVとOPVを組み合わせる)などが考えられる。

●ワクチン関連麻痺(VAPP)は、OPVの初回接種後に生じるケースが最も多い。IPVを2回接種した後にOPVを接種すると、VAPPの発症は相当低下する。

●ワクチン製剤の種類が増えることによるワクチンの互換性(有効性・安全性)や、単抗原ワクチンの開発の遅れによる問題(DPT接種開始後でOPV未接種の人が20万人以上になる見込み⇒DPT-IPVを接種すると、結果的にDPTが過剰になり、局所反応が強く会われる可能性)なども課題。


これらのうち、まずは接種率について。上記の数字でも、内訳を見ると、関東では22.4%減と深刻です。また、保科構成員によれば、「接種率減少が10.2%減と最小の中部地方も、実は関東より状況がいいとは言えない。関東、とくに東京ではIPVを扱っている医療機関が比較的多いけれども、中部では例えば県に1箇所とか、隣の県まで行かなければ打てない状況で、OPVもIPVも打っていない人口がこの減少分の大方を占めるのでは」とのこと。


また、坂元構成員の話では、「今回出てきたのはあくまで春(の接種シーズン)の数字。最終的な集計結果が出るのは12月になるが、秋はもっと落ちているはず。川崎市では、現時点で59~60%ちょっとというところで、前回よりさらに2割減が見込まれる(←これについては峯参考人からも「東京では、集団接種の会場には想定の半分しか来ていないところも。」という話もありました)。また、来年度の末に定期接種に導入されるのが、DPTとの4混であることをよく理解されていない親御さんが多い。単価はまだ予定が立っていない、としか言えないが、すでにDPT(3混)を接種し始めている人たちも多く、どうするのかは実際に問題。ただ、“朗報”としては、小宮山大臣の呼びかけ以後、接種率がやや回復している」とのことでした。


清水構成員も中国でのポリオ流行などによる海外からのウイルス輸入の危険性の高まりを指摘、岡部座長も、「どんなワクチンでもそうだが、免疫保有者が60%-70%というのは、大変クリティカルな状況。保有者は大丈夫だが、免疫のない人たちの間で流行が生じる数字」と懸念を示しました。


一方、小山構成委員はIPVについて、「(IPVを)やっている医療機関でも、今後インフルの時期に入り、とても手が回らないという話も出てきている。そもそもIPVの供給がぜんぜん追いついていないようで、『ワクチンの奪い合い』のような状況になってきている。あるお母さんは『いま予約しても来年の1月にしか打てない』と言っていた。『地元(神戸)では手に入らないので、実家のある他県に打ちに行きます』という親御さんもいて、私もあのあたりでは、四国の医療機関を紹介している。また、『IPVを希望していたが受けられず、仕方なくOPVを接種したが、高熱が出て関係があるのではと不安』という相談もあった」との旨、報告しました。


こうして、OPVの接種率低下や、他方、IPVの供給が需要に追いついていない現状が確認されたわけですが、ここで改めて丸橋構成員が、

「被害者としては、『生ワクチンを打たねばならない状況は許されない』としか言えない。IPVへの問いあわせの多さ、接種希望の多さを考えると、(それにも関わらず依然、国としてOPVを打たせ続けて)もしこれで被害者が出たら、誰が責任をとるのか。なんとしてもIPV単抗原ワクチンを早期導入して混乱を抑えてほしい」

と発言。


自然と、これに対する答えに注目が集まりますが、これに対し正林結核感染症課長は、

「製薬メーカーには早くと言っている。早ければ4価(4混ワクチン)は来年度終わりにも導入できるだろう。単価も同じ頃にできればと、急ぐよう働きかけている。中国での野生株ポリオ流行も考えて、手元にある生ワクチンをPRしている」

との旨だけ回答。予想していた通りではありますが、分かりきったことを繰り返すだけで、回答にも何にもなっていないなあ、という内容でした。分かってはいても、がっかりです。傍聴席にもあきらめたような、白けたような、やっぱりなという空気が漂いました(と、私は勝手に感じました)。


しかしそこで終わらずに、なおも場をかき混ぜたのが、やはり保坂構成員でした。

「緊急輸入には、個人的には賛成ではないけれども、だめな理由等をこの場で説明してくれればいいが、(国は)緊急輸入について全く考慮していない、とこちらは思っている」として、緊急輸入についての国のスタンスを明確にするよう求めました。


さらに保坂構成員は畳み掛けます。細元参考人(福島医大小児科)提出の資料、日本小児科学会と日本小児科医会を対象とした「不活化ポリオワクチンの個人輸入の実態調査〈速報〉」の中で、調査項目に「不活化ポリオワクチンによる健康被害に対する保険をかけていますか?」という質問があり、病院の100%、診療所の94.9が「補償制度のある輸入代行業者を利用している」との回答でした。それについて、

「この『保険』は、まったく無意味に等しい。予防接種後の有害事象にはそもそも“紛れ込み”も多いものだが、本当に何かあったときには、この『保険』ではどうしようもないことを知っておいてもらいたい。この『保険』というのは、接種後の副作用であると訴訟を起こして、原告が勝った場合に、それでも医療機関側に責任がないと認められる場合にのみお金が出るものであって、定期接種について予防接種法が規定したり、任意接種についてPMDA法で規定されているような、『救済』とは全然違う」

と指摘したのです。


ただ、相手も筋金入りですから、まったくブレません。赤川審査管理課長は、「まず、前半の緊急輸入、これは薬事法に基づいて安全性・有効性を確認しなければいけないわけですから・・・(中略)・・・国内での臨床試験結果が蓄積していない今では・・・」云々と、基本原則の説明をして終わりました。要するにそれが回答ということなのでしょうが。


これに岡部座長も補足し、緊急輸入が過去2回あったが、1回目は5000~6000人の患者が出た1960年のポリオ大流行時の措置、2回目は先の新型インフルエンザ騒動の治験を前提としたものであったことを説明。さらに清水構成員が海外の状況と接種率の低下によって「流行リスクが大きくなった場合でも、緊急性がないといえるのか」とちょっぴり食い下がるも、岡部座長と林課長補佐が「ウイルスが入ってきた場合など、緊急性が高い場合はWHOの方針としてもOPVを投与するはず」「危険性が差し迫ったときはOPVという判断も、保護者の合理的判断としてもありうる」と、これまた教科書どおりの美しい答えであっさり受け流します。


ここで岡部座長はさすがに気が引けた(?)のか、「一方で、丸橋構成員のような被害者がいらっしゃることも確か。不活化ワクチン導入のプロセスは始まっている、進めていく」といったようなことを一応言い添えたのですが、これに加えて林下方補佐が「定期接種で被害にあわれた方については救済制度があり、そちらで対応しますので・・・」という趣旨のダメ押しの一言を投じました。


でも、これってどうなんでしょうか。


確かにどんなワクチンにも副作用のリスクはついて回りますし、だからこそ救済制度が設けられています。しかし、その前提には、「“その”ワクチンがその病気を予防する唯一あるいは最善の選択肢だ」というコンセンサスがあるからこそ、ごくわずかな副作用の被害者の発生も致し方ない(大多数の人が病気に普通に感染してひどい目にあうよりまし)と判断し、また納得でき、受け皿として救済制度が作られているはずですよね。しかし、このポリオに限って言えば、今すでに「生ワクチンが最善だ」というコンセンサスはすっかり崩れてしまっている、少なくとも当事者である保護者のおそらく半分近くがNOと言っている、そして実際、IPVというもっと安全かつ十分に有効な選択肢が、国がその気になって動けば苦もなく手が届くところに存在しているのです。


それなのに、IPVを緊急輸入をしない理由さえ結局は明確にしないまま、「定期接種=OPVで被害が出たら救済制度がある」という発言は、実は横柄な態度ではないでしょうか。でなければ、思慮に欠けていますよね。揚げ足取り、と言われるかもしれませんが、そもそも「救済制度がある」で済まされないから、IPVへの切り替えを進めているのですから・・・。


この後、話はIPVへの切り替えの方式、単抗原ワクチン導入の時期と兼ね合いといった話に切り替わってしまいました。30分以上そのあたりの話が続き、次に斬り込んだのは、丸橋構成員。単抗原ワクチンの検定について「できるだけ早く対応したい」という清水構成員の発言を受けたものです。

「検定自体、切り替えを進めるために行うものだとわかるが、時間がかかるのも事実。『急ぐ急ぐ』と言っているが、待っているだけではだめだと思う。なぜサノフィパスツール製の不活化ワクチンを今、導入しないのか」


これには目黒調査官が回答。
「薬事法に基づいた審査をなぜやっているか。製造物の有効性・安全性を第3者に確認し、販売後にどういう注意が必要が知ってもらうための添付文書を作成しなければならない。どうしても薬事法上のプロセスとして必要・・・」云々。


正直、「ああ、またか」という感じの答えで、どっと疲れが出ました。このあたりまでくると、もはや私の集中力も続かなくなってきます。その後もこのような調子で、少しでも“不穏な”動きが見られると早い段階にきれいにはぐらかされて、まるで交通整理がされていくように、予定されたゴール(といっても前回同様、「あくまで本日この場で結論を出すわけではないですが」という断りが座長から、ことあるごとに差しはさまれるのですが)に向かって話が流れていくのでした。


ちなみに上記の第2回検討会は、こんな記事↓が掲載されたのと同日の出来事です。
●ポリオワクチン:輸入急増 副作用恐れ自費で「不活化」
(毎日新聞 2011年10月14日)

すでに世間のお母さんたちの関心は、生ワクチンどうするか、というより、不活化ワクチンどうするか、どうやったら受けられるのか、に進んでいます。そして、医療機関もそれに対応するために動いています。よくあることですが、結局は行政が取り残されていくのではないでしょうか。あるいは、すでに取り残されていないでしょうか。その最たるところを見てきた気がしてなりません。

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コメント

そこで、単独不活化ワクチンの治験は、3ヶ月連続接種+1年後の追加接種による合計4回を要求されているが、これを3回接種でいったん承認申請、追加接種の治験をやってさらに承認申請、の2段階方式にできないのか、と小山構成員が質問したはずです…

松山剛さま

補足をありがとうございました。
たしかにそれについては前向きに検討するようなことを厚労省側もコメントしていましたね。その後、実際に検討されているのかどうか、次回の検討会でそういう話が出るのかどうか、とりあえず注目したいと思います。

ちなみに私の次男、ちょうど1年ほど前に1ヶ月おきに3回不活化ワクチンを接種したので、それから1年たった今回、4回目としては定期接種を利用して生ワクチンを受けようかとも考えていました。腸管免疫つけさせてもいいかと。が、風邪と重なってしまい、それきりに。その後、インフルエンザのワクチンのワクチンを優先させているので、不活化ワクチンを打つにしても、もっと後回しになってしまいそうで困っています(その後はムンプスと水痘の同時接種を考えています。←同時接種、かかりつけの小児科で先生に直接お願いしたらやってくれることになりました。受付ではあっさり却下されましたが。だったらもっといろいろなワクチンを同時接種してもいいと思うのですが。そもそも混合ワクチンもあるくらいなのですから)。ただ、生ワクチンを接種した1歳年下のお子さんなどと接触した際に、自然にウイルスを取り込んでいるかも、などと思ったりもします。

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