おたふくかぜワクチン とにかく安全なワクチンを!

投稿者: | 投稿日時: 2011年10月03日 13:49

先日のワクチンフォーラム、「気になったこと」「これは大切かも」と思ってメモったところについて、すこし調べながら振り返っていきたいと思います。まずは任意接種となっている、ムンプスワクチン、水痘ワクチン、そしてB型肝炎ワクチンのうち、今回はおたふくかぜワクチンについてです。

●おたふくかぜ(ムンプス、流行性耳下腺炎)について
⇒なぜJeryl-Linn株ワクチン(MMR)を導入しないのか?

①おたふくかぜのワクチン株には数種類あるが、世界的に主流となっているのは、Jeryl-liynn株。日本では別の種類の株が使われている。

②1993年、日本ではMMRワクチン(麻疹・流行性耳下腺炎・風疹の3種混合ワクチン)のうち、Urabe株を使ったムンプスワクチンを原因とする髄膜炎の発症率が想定以上に高かったとして、接種が中止された。その後MMRワクチンからムンプスワクチンを除いたMRワクチンが2005年6月に認可され、定期接種に組み込まれている。

③Urabe株に比べ、Jeryl-Linn株のほうが髄膜炎を引き起こす可能性が圧倒的に低く、安全(前者は1/2,000、後者は1/800,000の頻度)。しかし日本ではいまだに導入されていない(個人輸入のみ)。世界的ワクチンの権威とよばれる人も、日本がJeryl-Linn株を導入しないことに対する疑問を発信している。


調べてみると、イギリスでも日本と同時期にUrabe株を使ったMMRワクチンによる髄膜炎の患者が多く出たそうですが、使用を中止してしまった日本とは違い、MMRのうちムンプスワクチンをJeryl-Linn株に置き換えて接種を継続したそうです。日本はどうしてそうしなかったのでしょうか。


おたふくかぜは自然に感染したときの合併症の発生率が高く(髄膜炎は100人に1~15人、難聴も100人に4人、そして男性では患者の4分の1が睾丸炎を発症)、ワクチンによる無菌性髄膜炎のリスクと比べれば、打たないよりは打ったほうがよいのは確かです。ちなみに、おたふくかぜに普通に感染して合併症を経験した知人が身近にいます。その人は男性で、成人後におたふくかぜにかかってしまい、生殖機能が半分失われたそうです。ワクチンを接種していればおそらく違ったことになっていたのかもしれません。


とはいっても、ポリオのワクチンと同じで、より安全なワクチンのほうがいいに決まっています。本末転倒にならないよう、少しでも髄膜炎の発生率の低いJeryl-Linn株を導入するのが国民の命を守る国の役割ですよね。


ご存知の方も多いかもしれませんが、1993年当時にMMRワクチンの定期接種が中止された折にも、安全性のみならず、ワクチンの採用の経緯等についても一部で問題がすでに指摘されていました。問題のUrabe株は、その名前から想像していた通り、「卜部株」と書いて、日本で開発されたもの。下記の2つの資料に、詳細が明らかです。

①富田薬品『あじさい』May.1993 Vol.2 No.5 トピックス
「MMR ワクチン一時中止とその背景!」

②『論座』1996年7月号に発表された被害者の父親の手記
「MMRワクチンを問い直す -「お上の」予防接種は安全なのか?-」
栗原敦 MMR被害児を救援する会々員

お読みいただければ分かりますが、私もとにかく驚いてしまい、この2つの内容が事実であればあきれて物が言えません。厚労省は製薬会社3社の平等を図るために、それぞれ1種類ずつワクチン株を採用して「統一株MMRワクチン」を作ったとしか思えません。その危険性を訴えた予防接種委員会の使用停止決定は審議会でうやむやにされました。そもそもの臨床試験もずさんとしか言いようがないことも明らかになりました。さらに統一株MMRにムンプスの卜部株を提供していた阪大微研では、薬事法に反し無届けで2回も培養方法を変更。培養方法が違えば髄膜炎の発症率も大きく変わるのに、です。


さらに調べてみると、その後、阪大微研はムンプスワクチンの製造を中止し(といっても、卜部株が問題になってからかなり後のことですし、資料①にあるように自社株は、髄膜炎の発症率が統一株よりは低くなっていましたが。)、ピーク時には5社が製造していたワクチンは、現在、化学及血清療法研究所(宮原株、添付文書はこちら)と武田薬品(鳥居株、添付文書はこちら)の2社のもののみ。ちなみに北里第一三共(星野株)も製造してきましたが、震災により年末まで工場閉鎖とのこと。停電のためにウイルス株が死滅したという話も聞かれますが、再開等を含めて要確認です。ただ、星野株は髄膜炎の発症率が高いとの噂もあるとかないとか・・・。


現在、国内におけるおたふくかぜワクチンの接種率は、MMRワクチン中止後、30%程度に留まっている(10%以下という報告もあるとか)とのこと。やはり「任意接種」「費用自己負担」ということで、積極的でない親御さんが多いのでしょうか。それにしても、私も何も考えずにお金を払って上の子におたふくかぜのワクチンを受けさせていましたが、やはりリスクをもっと認識しておくべきでした。そう思って、下の子にはどこかでJeryl-Linn株を受けさせられないかとちょっと調べたのですが、全く見つかりませんでした。仕方がないので、近所の小児科で、星野株か宮原株のワクチンを接種することになりそうです。本当は、Jeryl-Linn株をつかったMMRが導入されていれば、一番手っ取り早くてスケジュール管理も便利なはずなのですが・・・。と、のんきな母(=私)はインフルの季節を前に、まだ受け残した任意接種のワクチンがいくつもあることにはたと気づいて愕然とするのでした。

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