「いのちの授業~がんを知る」狛江三中第三部~質問タイム

投稿者: 川口利 | 投稿日時: 2012年07月11日 17:08

今日は、狛江三中で生徒から出された質問とそれに対する講師回答のご報告です。

今回は、授業と関係ないような質問は一つも出ることがなく、密度の濃い質疑応答となりました。

吉野さんに対する質問がもう少し出るかと期待していたのですが、久住さんに対して病気に関する質問が多く出されました。3年生が積極的に質問をしてくれ、また、生徒全体が質疑応答の内容を一生懸命に聴いてくれており、関心の高さをうかがわせました。全体で約17分間、真剣なやり取りが進められました。

以下に、質問と回答を記載いたします。

1 3年生男子
吉野さんは「いのち」についてどう思うか?

1 吉野
苦しい手術も9度も経験したし、そのたびにこれはだめかもしれない終わりかもしれないということをたくさん経験した。先程から申し上げているように、或いは川口さんも言われたように、「いのち」が今、今日あることは当たり前ではない。ありがたいことに神様から与えていただいたり、家族や先生方などいろいろ周りの方に支えていただいて今生きているということにすごく感謝をしている。自分1人で生きているわけではない。本当にいろいろなことが揃って、今初めて生かされているということをすごく感謝しているし、生かしていただいていることが、何か社会に恩返しをしたいと思って生きている。

2 3年生女子
久住さんに質問。「がん」を予防する方法はあるのか?

2 久住

「がん」に絶対にならずに済む方法はない。寿命が延びてきて、なぜ今「がん」にかかる人が増えているかというと、「がん」にかかる人は高齢というか、50歳以降に増えてきて、60、70、80代と「がん」になる割合が増えていく。これは、たぶん避けられないことだと思う。ただし、リスクを下げることはできる。一つは、知っていると思うが、肺がんやのどのがんに関してはタバコが危険因子である。赤身の肉を食べ過ぎると大腸がんになると言われているし、女性の方は肥満傾向があると乳がんになりやすいと言われている。いろいろなりやすい因子、リスクというのがあるので、それをなるだけ避けていくということ。しかし、「がん」になりたくないからあれも我慢するこれも我慢するというのでは、逆に人生の輝きが失われてしまう。自分の人生をどうしたいか、バランスを取ることである。自分はこれで行くということで満足なら、それでもいいと思う。

最近話題になっている子宮頸がんワクチンやB型肝炎という病気を防ぐワクチンもある。このようなワクチンを打つことで、将来的に肝細胞がんになったり子宮頸がんになったりするのを防ぐ方法がある。生活だけではなく医療の力を借りてがんを予防することができる。

「がん」は20%の人しか根治できないが、バリウムを飲んだり等、「がん」を早めに見つけるためのがん検診があるので、一定の年齢以上、かなりリスクの高くなる50歳以上では定期的に検診を受ければ、仮に「がん」になったとしてもそれで「いのち」を落とさずに済むということになると思う。

2 吉野
いつもこの質問が出てくるし、皆さん一番気になることだとは思う。久住さんのおっしゃったとおりなのだが、自分の肉腫もそうだし小児がんの場合も、原因が遺伝子の中の染色体の転座というとても難しいことにある。タバコを吸って肺がんになるとか、肉を食べ過ぎて大腸がんになるとかとは違い、防げない、理由・原因が分からない「がん」というのもある。なるまでもそうだし、なった後いかに生きるか、ストレスに思わないことがすごく大事だと思っている。

3 1年男子
吉野さんの、病気はまだ続いているのか?

3 吉野
2カ月前、4月10日に9度目の手術を受けた。これで終わりかというと、そんな保証は全然ない。たぶんこのまま闘いは続いていくと思うがあきらめないで頑張っていきたい。


4 3年女子
吉野さんに質問。手術の傷跡はまだ残っているのか?

4 吉野

女性はすごく気になるところだと思うが、残っている。同じところを開ければいい場合は前の傷跡のところになるべくする。医師の方がなるべく傷は増やさないようにする。だんだん薄くなってくるので、7年も闘病しているためもう分からないようなところもある。新しく切ったところ、去年とか今年手術したところは残っている。

講師2人(縮小).jpg

5 2年女子
久住さんに質問。寿命には遺伝的なものがあるか?

5 久住
遺伝的なものはある。寿命は何で決まってくるのかは正確には分からない。遺伝子はいろいろなことで傷がつく。紫外線に当たり過ぎると皮膚がんになるとか、放射線に当たると「がん」になるとか、遺伝子に傷がつくが、その傷を修復する機構がある。修復する機構が強い方はどんどん、どんな傷がついても修復し続けることができるので、細胞の機能が維持されて、寿命が長いということがある。「がん」に関して言うと遺伝子の傷であるしその他血管の寿命、心筋梗塞や脳梗塞、血管が老化しやすい方というのはコレステロールを調整する仕組み、糖尿病になりやすさ、そういうものが遺伝的に決まってくる。一つの遺伝子で決まっているわけではなく、いろいろな体質が寿命の決定因子になってくるが、ある程度プログラムされているので、おじいちゃん・おばあちゃん・お父さん・お母さんがみんな長生きという家庭のお子さんは長生きという傾向が高い。ちょっと不幸ではないかという話になってくる。ただ、寿命が長ければいいのかという問題もある。健康で充実した人生が送れれば70歳でも十分かもしれないし、90年生きたけれど自分の人生はつまらなかったというのはどうか。絶対的に長さだけを求めること、日本の平均寿命は世界一であるとか言われてきていて、長生きすることが善のような考えがずっと医学を支配してきたが、質というもう一つの価値観、価値基準があるので、それを両方で考えれば、仮に自分は短い傾向があるからといって世をはかなむ必要はないと思う。

6 2年男子
久住さんに質問。今までで「がん」以外に厄介だった病気は何か?

6 久住

病気というのはみな厄介である。「がん」が厄介かどうかというと、実は自分は厄介ではないと思っている。「いのち」を取られてしまうことが多い病気だが、朝おじいちゃんを起こしにいったらが冷たくなっていたというのと、おじいちゃんあと3カ月くらいかもしれないよと予告を受けて、その間にいろいろな思い出を作ったりできるとすると、もしかすると脳梗塞より「がん」の方がお別れする時間がいっぱい作れるからいい病気かもしれない、という考え方もできる。

医者にとって「がん」以外に厄介な病気というと感染症になる。自分はずっと白血病の治療を専門にしていたので、骨髄移植とか、白血球がゼロになるような抗がん剤治療をしてきたが、最終的にそういう状態の時に人の「いのち」を持っていかれてしまうのは感染症になる。多剤耐性菌というのは聞いたことがないだろか? 抗生物質をどんどん使っていると効かなくなってくる。この世の中にある抗生物質がどれも効かない菌というのがあって、それに感染してしまうと助けられない。「がん」は治療できてコントロールできるのだが、感染症で亡くなってしまう方がたくさんいて、非常に厄介であった。

7 3年生男子

久住さんに質問。「がん」を発見するきっかけにはどんなことがあるか? 肉腫というのはどのようにして発見されるのか?

7 久住
筋肉の中にできてくるようなものなら、やはりしこりによって発見されたり、骨肉腫という骨にできてくるものだと、骨が痛い関節が痛いということや骨折して発見される場合もある。吉野さんの場合はお腹の中の臓器にできたのだが、腸の壁にできる肉腫の場合は、食べ物が詰まってしまって腸閉塞の状態になって発見されたりする。したがって、どこにできたかによって全く症状が違ってくる。肉腫が厄介なところというのは、乳がん、胃がん、大腸がんのように頻度の多い「がん」は検診がされていて、検診の有効性もある程度確かめられているが、肉腫の場合はどこにできるか分からないので年に一度全身CT検査というようなことになると、CTは結構被曝するので毎年受けたらそれで「がん」になる人が増えてきてしまう。検診をすることのデメリットの方が大きいから、肉腫を見つけたりするというのは非常に厄介である。しかし、99%が肉腫ではない普通「がん」なので、みんなのお父さん・お母さんとかおじいちゃん・おばあちゃんは検診はしっかり受けて、早めに見つけるように、もし受けていなかったら言ってあげてほしい。

川口-3.jpg

明日は、授業最後に講師お2人から生徒に伝えられたメッセージと、生徒からのお礼の挨拶をお伝えいたします。

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