夜遅くに食べない方がいいもう一つの理由

投稿者: 堀米香奈子 | 投稿日時: 2017年01月01日 00:00

あけましておめでとうございます。年末年始で連日楽しい宴会が続いているかと思いますが、そんな時期に一つ耳の痛い(?)情報を・・・。

夜遅くに食べると太る、というのは多くの方がどこかで聞いて知っていますよね。『ロハス・メディカル』2015年6月号の「それって本当?」のコラムでも、体内時計(時計遺伝子)の働きで、夜食べると太りやすいことをご紹介しています。でも、太るだけでなく、夜寝る直前に食べると老化を早める原因にもなるようなのです。カギを握るのは、成長ホルモンです。


老化を早める! 成長ホルモンの減少


成長ホルモンは、脳の真ん中あたりにぶら下がった脳下垂体と呼ばれる直径1センチ程度の部位から分泌されるホルモンの1つ。「成長ホルモンって、子供の身長を伸ばすものじゃないの?」くらいに思っている人が多いかもしれませんが、侮ることなかれ。


「大人でも毎日きちんと一定以上の量が出ていますし、出てないといけないんです。太ってきますし、どんどん老化します」

「ちゃんと夜早く寝てますか? ちゃんと寝ないと、成長ホルモンがちゃんと出ないから、今はまだいいかもしれないけれど、そのうちどんどん老けますよ」


これは、某大学病院で内分泌専門の医師を別件で受診した際、私が言われた言葉です。


私自身、身長が低いのですが、これまで単に「遺伝だから仕方ない」と思ってそれ以上に考えずに生きてきてしまいました。しかし改めて考えれば、小さい頃から成長ホルモンの分泌が人より少なかったことが、(分泌が少ない原因はどうあれ)低身長につながったというのが実際のところではないでしょうか。だとすると、今も人より分泌が少ない可能性は高いかも……。


急激に懸念に襲われて、調べてみました。成長ホルモンは、全身の代謝調節作用に関わっているようです。

① 脂質代謝(脂肪分解コレステロールの肝臓への取り込み

筋肉増強(タンパク質合成)

抗インスリン作用(糖尿病になる?⇒後述します)

腎臓での水・電解質代謝(細胞外液の増加)

骨代謝(骨形成と骨吸収の両方に作用、バランスが大事)


ですから、成長ホルモンが不足すると、次のようなことが起きてきてしまうのです。

●内臓脂肪型肥満、メタボリック症候群
●コレステロール異常と動脈硬化
●心筋梗塞、狭心症リスク上昇
●骨密度低下
●筋力低下
●皮膚のシワ、かさつき


・・・これって、いわゆる老化現象ですよね。


大人になってからも成長ホルモンは毎日出ているとは言え、その量は加齢と共に減ってきます。思春期前の分泌量を100%とすると、思春期後期で増えて200%と2倍くらいになり、その後は減る一方で30~40歳台では50%、60歳では30%くらいになってしまいます。

seichouhorumonn.gif
(グラフ出典:
http://ghw.pfizer.co.jp/adult/adult/growth.html">http://ghw.pfizer.co.jp/adult/adult/growth.html

病的に分泌が低下している場合は、内分泌科で「成人成長ホルモン分泌不全症」と診断されます。ただ、子供の頃に成長ホルモンが足りないなら背が伸びないので分かりやすいですが、成人の場合は通常の生活習慣病と認識されたままになってしまうことも多いようです。


メタボやうつの原因かも?


成人成長ホルモン分泌不全症の患者100人を検討したところ、20%に糖代謝障害が、35%に肥満症、57%に血中脂質の高値が見られ、内臓脂肪の増加が特徴的だったと報告されています。筋肉量、骨量、運動量も、健常者と比べて著しく低下していました。頸動脈の超音波検査を行うと、血管の内膜 ・中膜が肥厚し、高頻度でプラーク形成が見られるなど、動脈 硬化も進んでいました。そこで、患者に成長ホルモンの補充療法(自分で注射を打ちます。口から摂取しても消化されてしまうんだそうです。怪しいサプリなどには注意が必要!)を行うと、糖や脂質の代謝が改善し、筋肉量や骨量、運動量が増加したと言います。


死亡率にも表れています。1997年のスウェーデンの長期予後調査では、患者は心血管系障害での死亡率が一般人口に比べて2倍高く、死因は1位が脳血管障害、2位が心血管障害と報告されています。同じ頃に行われた日本国内の調査でも、当時の一般の平均寿命が69.4歳だったのに対し、患者の平均寿命は57.4歳と、12歳も短命でした。


特に興味深いのは、内臓脂肪の分解と、抗インスリン作用です。ご存じの通り、血糖値はインスリンによって下がりますが、このインスリンの働きは血中の脂肪酸によって抑えられます。成長ホルモンは中性脂肪を分解し、血中の脂肪酸を増やすので、それがインスリンの働きをブロックし、結果として血糖値が上昇します。これが「抗インスリン作用」です。もしも成長ホルモンが過剰に分泌されると、インスリン抵抗性を生じて糖尿病になってしまいます。


ところが、日本医科大学の研究では、メタボリック症候群のモデルとして高脂肪食を食べさせて太らせたマウスに、成長ホルモンを6週間投与した結果、皮下脂肪も内臓脂肪も3割程度減少しました。その後、メタボマウスにブドウ糖を投与したところ、驚くべきことに、血糖値の上昇を抑える力が強くなっていたというのです。成長ホルモンを過剰に投与することで、インスリン抵抗性が生じて血糖値は上昇するはずでした。そこでさらに調べると、成長ホルモン後の脂肪組織では、細胞にダメージを与える酸化ストレスを解除する抗酸化酵素の産生が高まっていて、また、インスリン抵抗性を改善して動脈硬化を防ぐアディポネクチンという物質も多く作られるように変化していました。同大学では、成長ホルモンの投与によって「内臓脂肪の質が改善した」と結論づけています。


さらに、「成人成長ホルモン不全症の診断の手引き」を見ると、さらに気がかりなことが書いてあります。


「易疲労感、スタミナ低下、集中力低下、気力低下、うつ状態、性欲低下などの自覚症状を伴うことがある」


感情の起伏が激しくなったり、落ち込みやすかったり、イライラしやすい、集中力の低下なども、成長ホルモン分泌が足りないことで起きてくるんですね。多くの人は病的な分泌障害とまでは言えないかもしれませんが、加齢と共に誰しも成長ホルモンの分泌は減るもの。体の健康と共に気持ちも健やかに過ごすためにも、成長ホルモンの分泌を妨げるような悪習慣は改めたいものです。


そこで大事なのが、質の良い睡眠をとること、なんだそうです。


高血糖だと分泌されにくくなる

成人でも毎日成長ホルモンが出ている、と書きましたが、常時同じ量が出続けているわけではありません。1日のうちでも波があります。概日リズムがあり、睡眠中、特に眠り始めて睡眠が深くなっていく初期の頃に最も多く分泌されます。

成長ホルモン概日リズム.jpg
(グラフ出典:
http://www-sdc.med.nagasaki-u.ac.jp/genetech/genkenbunshi/pdf/H23.12.8.pdf


グラフを見ると、11時ころに眠り始めて、1時間半後には分泌のピークを迎え、眠り始めてから3時間後にはもう分泌は低下してしまっています。その後はもう眠っている間に分泌が増えることはないことが分かります。


だからこそ、良い睡眠をしっかりとることが大切。眠り始めにスムーズに深い眠りに落ちていけるよう、寝る前に気を付けるべきことがいくつかあります。ざっと挙げるなら、

●夜7〜8時以降は,強い光に当たらないようにする。商店街の明かりやコンビニの照明はNG。家庭の照明も、夜は白熱球がおすすめ。

●寝る2〜3時間前までに入浴を終える。体温低下と共に人は眠くなりますから、寝る直前に体温を上げるのはよくないのです。

●体内時計を乱さないよう、寝る2〜3時間前に食事を終える。コーヒーや緑茶などの刺激物は避ける。

といったところでしょうか。『ロハス・メディカル』2016年1月号~4月号の「歳をとっても快眠」特集(1.意識しよう概日リズム2.光と温度を味方にする3.昼に体を動かしてすんなりぐっすり4.よく眠れる食事)も参考にしてみてください。


特に、先ほどの医師によれば「寝る前に食べるのはもってのほか」だそう。


「成長ホルモンは、お腹が空いている時によく出るんですよ。寝る前に食べてしまうと、顕著に分泌量が下がってしまいます。ほとんど出なくなると言ってもいいでしょう」


空腹とはつまり、血糖値が低い状態のこと。空腹感と言うのは、血糖値の低下を察知した脳が、「お腹がすいたから何か食べろ」と指令を出している結果です。脂肪を分解して血中の脂肪酸を増やし、インスリンの働きを弱めて血糖を上げるのが成長ホルモンですが、既に血中の糖分が多ければわざわざ分泌されない、と言うことらしいです。


「おそらく成長ホルモンは、飢餓と闘う人類の歴史の中で、オオカミなどの襲撃から身を守るために必須だったんでしょうね。というのも、筋肉はブドウ糖をエネルギー源として動いていて、血中に充分なブドウ糖がなければ、外敵の襲撃に瞬時に対応して逃げることもできません。成長ホルモンが出ることで、飢餓状態にもブドウ糖の供給を絶やさないようにしているということでしょう」


なるほど。寝る前に食べない方がいいのは、眠っている間はエネルギー消費が少ないので太るから、というだけでなく、成長ホルモンが分泌されにくくなってしまうから、なんですね。寝る前にお腹が空いて眠れない、という場合は、血糖値やインスリン分泌への影響の少ないようなもの、つまり野菜類や、せめて高タンパクだけど脂肪や糖分をあまり含まず消化の良い食品にしておきましょう。豆腐と野菜のスープなどがよさそうです。

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