がんワクチンが効かない理由~坂口志文・大阪大学特任教授セミナーより

投稿者: 川口恭 | 投稿日時: 2017年07月21日 09:53
坂口志文2017年7月11日.jpg
 7月11日に開催されたプレスセミナーで非常に興味深い話を聴いた。講師は、制御性T細胞の研究でノーベル賞の呼び声が高い坂口志文・大阪大学免疫学フロンティアセンター特任教授(写真)。私が特に重要だと思ったくだりとスライドを、備忘録を兼ねて、皆さんと共有したい。

 今、がんの免疫療法は、結構注目を浴びておるんですけれども、例えばエフェクターですね、がんを攻撃するエフェクターの尻を叩くといういう意味で、抗PD-1抗体でありますとか、抗CTLA-4抗体が使われ始めたんですけれども、実はですね、がんを壊した時、がん抗原が出て来る、あるいはがん細胞から自己抗原が出て来る、そうしますと次に活性化されるのは制御性T細胞なんですね。


 先ほど、がん組織の中には制御性T細胞が多いと言いましたけれども、それはがん細胞が、がんの組織というのは、がんが増えては死んでいくわけで、炎症も起きているわけです。そうしますと、制御性T細胞というのは、どんどん集まってくるわけですね。


 ですから、まず次にやらないといけないのは制御性T細胞を消すということです。で、消した後で、がんワクチンをやって、エフェクターを活性化する、あるいは免疫チェックポイントですね、抗PD-1抗体なんかを使ってエフェクターをより活性化すると。


 そういうことで、今そのコンビネーションということが言われるんですけれども、コンビネーションだけじゃなくて順番ですね、何を最初にやってどういう組み合わせにしていくか、そういうことを考えれば、結構今のがん免疫療法というのは、もっとよくなる、と思います。


 そういうことを考えながら制御性T細胞を壊すような抗体あるいは薬剤を開発していくことが重要ですし、がんワクチンだって、やっぱり捨てたものじゃない。ただ、がんワクチンだけでは絶対に効かない、効かない理由はですね、がんワクチンをやって次に活性化されるのは、まず抑える方なんですね。これも証明されてます。ですから、こういう順番をうまく考えてやれば、このがん免疫療法というのは、もっと発達するだろうと思います。



坂口志文セミナー44.png


 衝撃的な話だったので講演後の質疑応答で質問した。


 がんワクチン投与の後、まず立ち上がってくるのが制御性T細胞であることは証明されているとおっしゃいましたが、もう少し詳しく教えていただけないでしょうか。

 

坂口 これは色々なマウスを使った実験があるんですけれども、ご存じのように、がんワクチンというのは結構期待されてたんですけど、がんワクチンそのものは余り効かないということで、なぜ効かないか研究、基礎的な研究としてもなされました。我々もそういうことに参加しとったんですけれども、そうしますと、まず一つはがんの中に入り込んで来るリンパ球がどういうものが最初に入り込んで来て、何がドミナントであるかということを見ていくと、制御性T細胞であるということが一つ。で、そういう所から制御性T細胞を消してやりますと、他のリンパ球がどんどん入り込んで来て、がんに対する免疫反応が高まるということです。それは同時に、がんワクチンをやりますと、制御性T細胞を除いた時と除かない時では、がんワクチンに対する免疫反応が全然違うと、除くことによって高まる、ということですね。そういうようないくつかの実験事実があって、そういう重要であることが分かって来た。ですから、それを人に応用した場合に、がんワクチンもやっぱりもう1回考え直して、コンビネーションとして、まずTregを除いておいてから、がんワクチンをやるとか、そういうことをもう1回考え直さないといけないんじゃないかというのが我々の主張でもあるわけです。

 

 現象として観察されているということで、機序としてそうなるのではないということですね。

 

坂口 機序と言われますとですね、このスライドで示しますように、がん細胞が壊れて、その中には、もちろんがん抗原も出ますし、どんな細胞にもある自己抗原もがん細胞から出るわけですね。そういうものは区別せずに抗原提示細胞というのは、ちゃんと提示いたします。提示した時に、我々はがんを攻撃する細胞を何とか活性化したいと思って、がんワクチンをやったりするわけですけれども、どちらがより活性化されるか、制御性T細胞の方が簡単に活性されちゃう、活性化を受けるんですけれども、その分子メカニズムは何かと言われたら、これは制御性T細胞というのは既に、いわゆる抗原に感作された、先ほど私が話したメモリーT細胞というのを言いましたですけれども、メモリーT細胞のようなファンクションを持ってるんですね。ですからすぐに反応して、攻撃を抑えちゃうというのが特徴なんです。ですから、そういう意味で、こいつは結構何とかしないといけないというのが我々が主張していることなんですけれども。

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