第5回

投稿者: | 投稿日時: 2006年08月15日 13:36

食べては痛くなり、痛くなるから食べられない。

「ナニヲタベレバイタクナラズニスムノダロウ」

崩壊した食生活の中で、1、2ヶ月の経験から編み出した答えは、
「水分の少ないパサパサしたものを少量ずつ食べる」だった。

飲み物も飲まずにパンを1個食べる。
痛くない瞬間にクッキーやビスケットのようなものを1枚つまむ。

とにかく、パサパサ、ポソポソしたものであれば痛まないような気がする。
頼り無い経験値からの知恵だった。

私の食生活は見事に狂っていく。

「痛みから逃れたい」気持ちの一方で、
「カロリーを摂って内臓脂肪をつけなければ治らない」という強迫観念がつきまとい、
とにかくパンだけを食べた。
菓子パンや調理パンではない。生地だけのシンプルなパン。
パンさえ食べていれば衰弱して死ぬことにはならないだろうと本気で思い、
朝昼晩とパンを食べた。
痛さから逃れられる唯一の選択だった。

季節は、本格的な暑さがからだに堪える頃。
夏バテは思いのほか深刻で、からだはパンすら受け付けなくなる。
点滴にも通えない現状に、とうとう体重は最低ラインを下回った。

「このままでは、図らずも本当に拒食症になってしまうではないか!」


パニックになりそうな頭で考えたのは、
手っ取り早くカロリー摂取が可能な
高カロリーのアイスクリームを口にすることだった。

一日の大半をみぞおちの痛みに苦しみながら、
こんどは毎日毎日アイスクリームだけを食べつづける。


「ふつうの食事をしたいのに、食べられない」という欲求不満と、
気が狂うほどの痛み。
からだだけでなく精神をも蝕んでいった。


「もう死にたい。」


こんな異常な生活をしながら、
キャスターとして笑顔で仕事をし、同じ量の仕事をこなしていく

それはあまりにもつらい現実だった。


誰に話しても「拒食症ではないか」といわれ、
外野はみな無責任に「食べろ、食べろ」と言う。

いつもと変わらない私を演じる自分と、悲鳴を上げている自分が混在し、
多重人格症のような気分になる。

毎日を、一日一日確実に生きていく、ただそれだけのことが本当に並大抵のことではない。


情緒不安定、募るいらいら。
自分のことながら自分で持て余す。

「私のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)って何だろう」
考えはじめると、死んだほうがマシという結論にしかたどりつかない日々だった。

<次回へつづく>

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