逆鱗(ゲキリン)~もてなしの心~その2

投稿者: 真木魔愛 | 投稿日時: 2006年09月20日 23:27

院長は、まず私に学生のことを質問しました。(最初は怒っていませんでした)

「もう帰したのか?
病院のどこを案内したのか?
どんな質問を受けたのか?
昼飯は食わせたのか?」

など静かにひとつずつ聞きました。

次に、
「I先生はどうした?」
と言いました。
それは昨日既に報告と確認をしたつもりだったのですが、もう一度伝えると、少しずつ院長の顔色が変わってきました。

その土曜日、
朝8時前から院長は、I先生をお見送りするためにホテルにいたのです。
I先生はホテルロビーのソファに腰掛けていらっしゃいました。

車両管財課長はホテルの入り口に車を付けて、車の横に直立不動で待っていたのです。
もし院長がその場に行かなかったら、いつまでもI先生はロビーでお待ちになっていたかもしれません。

「なぜ自分が行けないのなら、昨夜の夕食から総務の女性職員を同席させるなどして、I先生と顔を会わせる機会を作り、今朝はその女性をホテルに向かわせて、I先生を車まで誘導することまで手配できないのか。女性でなくとも、もう一人同行者を付けるべきだった。俺が自ら山形まで迎えに行くべきほど大切な先生を何と考えているのか。その扱いは何だ」

だんだん怒りの感情が沸々と甦ってきたようで、声が荒くなります。

「それに、ご高齢のI先生を1泊2日のタイトスケジュールで、山形から来させるとは何事か。相手の立場を考えた、ゆとりのある予定がなぜ組めない?
そんなことも考えられないほどの馬鹿か。自分の仕事の都合しか考えてないんじゃないのか。
アンタのその合理的なやり方は外国の会社や外の研究所では常識なのかもしれないが、俺のこの病院で、そんなやり方は許さない。通用しない。そんな心のこもらないもてなしを二度とするな!!
このテンガロンが!アンタが男だったらぶん殴ってるぞ」

後半は頭が割れそうになるほど、院長は怒鳴っていました。

返す言葉がありませんでした。

院長室を離れたにもかかわらず、秘書室業務の大半を総務課に持ち込んでいたこと、それならI先生の接待は院長室にいる秘書にやらせればよかったのに・・・・とか

日程の確認をしたけれど翌日に帰りたいとおっしゃったのはI先生で・・・・とか、

合理化の問題ではなく、外で待機していた車両管理課長の対応ぶりの問題・・・とか、

言い訳は後から頭をよぎりましたが、『心のこもらないもてなし』をしたと強烈に指摘されたことが本当にショックで何も言えませんでした。
ド迫力に圧倒されて言葉がでなかったほうが正しいかもしれません。

「申し訳ございませんでした。今後は同じことがないように心します」

頭を下げて、謝罪の言葉を述べることが精一杯でした。

つづく

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コメント

貴女のお気持ち、現場にいる様に理解出来ます。
院長先生は真木さんの母上と同じお歳と以前のブログで読ませて頂いておりますので、私達とは基本的に同年配。
私は基本的にはコミュニケ-ションがきちんとされていなかった事が原因ではないかと考えます。
真木さんがもし院長の気持ちの総てを心得、行動していたら、多分貴女が他の人から睨まれる結果になると感じます。
私は総務部長に責任有りと感じます。
組織は上下関係の統率が必要な場合が多大です。
総務部長辺りになれば、院長の総てを心得ていなければなりませんね。能力、性格、癖、
私がその立場なら、
院長が貴女に暴言をはかせる様な事はしなかったとおもいます。

まず自分で出掛ける。自分に時間が取れなければ、課長を行かせる。
本来上司がその様にして自分の行動を部下に示し、教育を行うものだと考えます。
敗戦後、最後の日本海軍の大将に井上成美(しげよし)と言う方がおられました。
当時、公職追放、で大変貧しい生活をされておりました。
この時大将は近所の子供達に英語を教えておられた様です。
神奈川県横須賀市の長井にお住まいが有り、
大将亡き後、私も尋ねてみました。
幸い大将の教え子に出会え、当時のお話しを聴くことが出来ました。
以下は戦後ある作家が記された内容です。
大将は子供達に英語を教えられる日には必ず、玄関を掃き清め、水をうって子供達を迎えるとお聞き致しましたが”、、、、。
そう、それが教育と言うものです。
院長が此処まで部下に対しておやりになっていたら。全く文句はありません。
人間の世界は実に難しいですね!!、、、。


たくましく、強くなってゆくのが、合点!とタメイキ交じりに感心した・・シダイ

> m,n.様

いつもコメントをありがとうございます。

すごく、大事なことを忘れてました。

当時病院には不在のポストがあったのです。

するどいご指摘に、さすが長年人を育ててこられた方は、全てをお見通しなのだと恐れ入りました。

次の続きは、忘れていた「不在のポスト」から始めることにします。

>のんち様

強く、たくましくではなく、めげる一方でした・・

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