夢で見た医療事故

投稿者: 真木魔愛 | 投稿日時: 2008年02月06日 23:07

先月は、医療事故や医事紛争が授業のテーマでした。

そしたら最近、
学生から来年度の卒業研究について、
医療事故をテーマにしたいという相談を受け、
ADRやAi(オートプシー・イメージング:
患者の死亡後に画像診断を行い、
結果を正確な剖検につなげ、
死因解明に役立てるシステム)など、
テキスト外の情報も紹介しました。
(こちらは、もっばら私自身の勉強課題ですが)

そんなある明け方、夢を見ました。

病院で仕事を始めた数ヵ月の頃、
ある初老の女性が救急車で運ばれ、
処置後病状が安定したので、
経過観察入院となり、
ご家族が安心して帰ったら、
翌朝ベッドで突然死していた
出来事がありました。

院長は、救急担当医師が、
抜かりの無い検査や処置をしたことを迅速に確認した上で、
担当医師の上司であった心臓血管外科医の副院長(当時)と、
看護部長と共に、
取り乱して、狂ったように叫び続けるご遺族と面会しました。

最後の最後は担当医師も席を外して、
院長一人で対応しました。

時間は4~5時間に及びました。
それでも、静かに、ずっと話を聞き続けました。
(普段はとても短期?ですぐに怒鳴るのに、、)

でも謝罪は一言もしませんでした。
(だって謝る必要はないだろ、と後で言ってました)

ただ、ただ、耳を傾けて頷いていました。

築20年以上の事務棟にある面談室からもれる
ご遺族の罵声や、泣き声が
フロアーを深い闇に沈み込ませていく
息苦しさの中で目が覚めました。


そんなことが、あったなあと
記憶を辿りました。

その後、
ご遺族と病院側との話し合いは半年以上続きました。
その全てに院長が対応したわけではありませんでしたが、
最終的に、ご遺族は院長に
(病院で医療を施されたことに)お礼を言って、
争いごとにならずに終りました。

管理者であり、
臨床経験を重ねた院長だからこそ、
なのだろうし、
全てが同様の結末になるわけではありません。
(実際、病院として、医療訴訟中の大小の案件も抱えていました)

このケースは稀だったのかもしれませんが、
初期段階で、ご遺族の話を聞く、
とにかく聞き続ける、
この姿勢がいかに大切で、
家族を突然失った者の気持ちが状況を受け入れるために必要か、
そしてその役目は誰でも簡単にできるものではないことを、
強く思います。

院長は常々、
『医師が何ら落ち度無く、
誠意を尽くした医療行為については、
たとえ医事紛争になろうとも病院として全身全霊でバックアップする。
守り抜く。
しかし、そうでないケースは個人で責任を負ってもらう』
と憚りませんでした。

『安心して医療行為ができる場所を提供しなければ、
若い医者が育たない、
自分達もそうやって経験を積んできた』、とも。

当時 心の中で、
「何で今さらそれを医者の前で言う必要があるねん?」
と何も考えず、わからず、聞き流すことしかできませんでした。


それが最も難しいコトなのだと、
今になってわかります。

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