抗癌剤と民主主義 |
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投稿者: 加藤大基 | 投稿日時: 2008年02月17日 20:45 |
なにやら意味ありげなタイトルですが、なんとなく思いついたことを書いてみます。
がん患者さんの中には、抗癌剤は毒であるから一切の抗癌剤治療を拒否するという方もいらっしゃいます。
確かに固形癌の場合、大半は奏効率が50%未満であり、過半数の人にとってその考え方はあながち間違いではないのかもしれません。
しかし、手術や放射線治療が適応とならないがんに関しては、抗癌剤の治療成績を上回る治療法は現時点で存在しません(患者さんの体力や希望を考慮して治療法が決定されるべきであることは言うまでもありませんが)。
このことを考えていたときに、かの英国首相・ウィンストン・チャーチルの有名な言葉を、ふと思い出しました。
「民主主義は最悪の政治形態ということができる。これまでに試みられてきた民主主義以外のあらゆる政治形態を除けば、だが。」
これに倣えば、
「抗癌剤治療は最悪の治療法ということができる。これまでに試みられてきた抗癌剤治療以外のあらゆる治療法を除けば、だが。」
ということになるかと思います。
漫然と抗癌剤を使うことは避けなければいけませんが、抗癌剤を一切拒絶するということは、特にエビデンスのある癌種においては、勿体ないことだと思います。
今後は、患者さんひとりひとりの遺伝子情報などから、オーダーメイドの治療法が選択されることになるのかもしれませんが、現時点では、チャーチルの箴言にならった上記の言葉が的を射ているのではないでしょうか。
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コメント
はじめまして。
初めてコメントさせていただきます。
以前から先生のことは存じ上げていましたが、インターネットを最近繋いだので今頃のコメントとなりました。
患者さんの遺伝子情報からのオーダーメイドの治療ができるようになればいいですね。
先日中学時代の友人が亡くなりました。30歳です。肝臓癌でした。
もうその友達は返らないですが、いつかはそういう治療が出来るようになるといいなぁと思いました。
先生、お体大切に、頑張ってください。
よこさま
はじめまして。
コメントをくださり、ありがとうございます。
また私の体のことをお気遣いくださり、重ねてお礼申し上げます。
自分より若い患者さんを少なからず看取ってきましたが、自分の友人では(事故死はいるものの)病死した近しい友人はいなく、
自分ががんになって、若年死というものを改めて身近に感じました。
よこさまのご友人も30歳の若さで亡くなられたとのことですが、医学の進歩が少しでも今後の世代に福音をもたらすことを願っています。
がん罹患後は、改めて命あっての物種だと感じています。
よこさまもご自愛ください。
先生、コメントへのお返事ありがとうございます。
先生こそ、私へのお気遣いの言葉ありがとうございます。
先生の命あっての、という言葉、胸にずしりときました。
小さなことにクヨクヨすることもありますが、先生のその言葉をきいたら、自分はなんてちっぽけなんだろうと感じると共に、頑張らないとっていう気持ちになりました。また、すごく前向きな気持ちにもなれました。
素敵な言葉、ありがとうございます。