言葉の花束

投稿者: 真木魔愛 | 投稿日時: 2008年05月17日 22:53

今週前半に、医療情報学科一年生全員を対象に行うリレー式講義の順番がまわってきました。

準備をしている時、私は以下のように考えていました。

自分の経験を交えて話してみようかなと、、、、 (元々、普段の講義では触れない、体験談などを話して欲しいと言われていたのですが、 20歳前後の健康が当たり前、元気溌剌学生達には受け入れにくいだろうなァと乗り気でなかった)


内心、かなりの緊張で迎えた当日。スライド30枚、50分。

その日は5月とは思えないとっても寒い雨の日で、季節外れの暖房ががんがん効いている昼下がり、
大講義室はスライドショー投影で、照明を落としており、絶好のお昼寝タイム・・・

にもかかわらず、ほとんどの学生は最後まで真剣な眼差しで聞いてくれました。

講義後のレポート。
9割の学生が、普段の授業からは想像できない闘病の様子に驚いたという感想でした。

【病院で仕事をするってどういうことだと思いますか?】には、

凹んだ心のスキマを埋めるってどうしたらいいですか?
他人事でなく患者さんの辛さを受け止めるにはどうしたらいいのか?
支える医療ってやつ?どういう風に支えたらいいのかわからない。
医師でも看護師でもない医療事務に何ができますか?小さなことでもできることって何だろう?

純粋すぎるまっすぐな問いかけは、医療の現場を垣間見た人間には、ずっしりと重く響きます。

元気溌剌学生達と思い込んでいましたが、60名ほどの中に
一人は、
「リウマチの話を聞いて恐かった。実は私もかかっているから。エンブレルをしています。だから共感できることばっかりで、泣きそうになった。聞いててすごくツラかった」

別の一人は、
「授業中、先生の手を見ていてお母さんの手に似てるなって思ってました。うちのお母さんもリウマチなので。私もリウマチ科にかかっているけど、お母さんの手術を何回も見ているけれど、話を聞いて、もすこし優しくしてあげようかなとか、もすこし考えてあげようかなって思えました」

自分の浅はかさに恥じ入るばかりで、自身のことを話してよかったのかと暫く落ち込みました。

「まだ授業始まって一ヶ月だけど、体調の悪い日とかなかったですか?」
「授業中、字を書いたり、立ちっぱなしとかで辛くないですか?」
「自分も頑張ろうって勇気をもらった。ありがとう」

言葉の花束に埋もれながら、何もわかっていなかったのは私の方だなあという気持ちと、
このような試みを初めてやらせてもらってよかったなあと思っています。

来週、グループに分かれて、病院で仕事をするってどういうことか、
そもそも仕事をするってどういうことか、各々の考えを出し合います。

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コメント

こんばんは。
初めて、投稿させていただきます。
愛知県に住むととろちゃんと申します。

わたしも、講義聴きたかったです。学生には程遠い年齢ですが、ある病院の薬剤部で薬剤師補助兼事務をしています。
当然、患者さんたちとは関わることもなく、でも院内の内部的な話や、患者さんとスタッフの関わり方など、耳に入ってくるとこんな私にも出来る事はないだろうか、
でもあまりでしゃばらない方がいいのだろうか、こんなパートのおばちゃんの言うことなど、きっと取り合ってはもらえないんだろうなぁ、と心を痛めている毎日です。

今の若い人たちの中にも、ものすごく純粋にまっすぐに真面目に考えている人たちがいて(偏見ぽくてすみません)そんな人たちがその純粋な思いを実行できる世の中に、どうしてならないんだ!人の為にこんなに思いやれることがどうしてできないんだ!と思います。

真木先生の講義が拝聴できた学生さんたちにはとても貴重な時間だったと思います。
いいなぁ~、うらやましい。

>ととろちゃん様

はじめまして。読んでいただきコメントありがとうございます。

やり切れなさ、もどかしさが、ひしひしと伝わってきました。
私は、現場で日々闘っておられる医療者の方々の足元にも及びません。

「まじで大変そう」「もっと日本の医療のことを知りたい」等々の感想文を目にして、現状を把握したとき、果たして本当に医療機関に就職を望む学生が残るのだろうか、、と暗澹たる思いです。

だからといって、絶望するよりは、医学・医療に支えられて、多くを学び育ててもらって、幸せな気持ちを少しでも伝えられたらと、、願っているのですが。

真木先生 様
コメントを載せていただきありがとうございます。

本当の意味で医療に関わっている人たちにとって、
これからの医療がどうなっていくのか、不安は尽きないと思います。
希望を抱く者あり、絶望を見る者あり、そんな中で理想論になるかもしれませんが、
「本物の1人」が出てくることを信じています。
こんな私ですが、ほんの少しでも関わる機会のできた患者さんたちには、私なりに精一杯の
「心こそ大切なれ」との思いで接していきたいと思います。
また、遊びに来ます。

>ととろちゃん様

ととろちゃん様と、病院で出会えた患者さんは、医療に絶望や不信を抱くよりは、きっとご自分の病に積極的に関わっていくことができる幸運な人だと思います。

今後ともどうぞよろしくお願いいたします。


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