続・改めまして

投稿者: 川口恭 | 投稿日時: 2008年07月14日 17:23

ここから、皆さんにいただいたご意見を参考に
学会での発表から、もう少し発展させた部分になります。


「経済学的には統制価格下で「均衡」したら、パレート最適ではなくなります(大幅に供給が減ります)。今起こっている現象は、正にそれでしょう。」(会計士X様)
と、いうご指摘をいただきました。
なるほどと思いました。


ただし、統制をうまくやることで状態が改善しないかどうか
業界の中で「資源」が偏在してないかに関しては、もう少し精査が必要だと思います。
外部の人間にはサッパリ分からない複雑怪奇な仕組みでお金が動いているので
「資源」の絶対量が足りないと言われても素直に頷けません。
また、もし全体として、その余地がないとしても
少なくとも面倒なことをするリーダーやエージェントのコストも出せないほど
医療界が貧しいとは思えません。
日本医師会本部へ行かれれば私の言っている意味はお分かりいただけると思います。


同時にご指摘から一つのことに思い至りました。
パレート均衡を考える際の前提条件となる「資源」パラメータは
「個別性」を考慮に入れないマクロの話だと思います。
事実、医療制度で統制されているのは、診療点数という名の「貨幣」です。
しかし社会的交換の視点から「個別性」を考慮に入れることはできないでしょうか。
世の中には
Aさんにとっては無価値に近いものが、Bさんにとっては大いに価値がある
ことも実際にあるわけで
医療者に必要な「資源」、現在不足している「資源」が
「貨幣換算可能なもの」だけかという視点は必要だと思うのです。


もちろん医療者に振り分けられる「貨幣資源」が
人として生活できない程に少なければ、この主張は戯言でしかありませんが
そこまで薄給ではないでしょう。
「兵庫県立柏原病院の小児科を守る会」の活動によって
医療者が覇気を取り戻せたということは示唆に富みます。
何らかの「資源」が医療者に対して振り分けられたと解釈できます。
その「資源」とは一体何なのか。


思い当たるのが、医療者の抱いている「正当に評価されてない感」です。
「正当に評価されている」という確信を抱けたなら
そのために人々が何らかの「資源」を振り向けたなら
(まずは尊敬・感謝・共感といった言葉で表現できるものでないかと)
医療者の多くを包んでいる閉塞感が少しは晴れないでしょうか。
何より「正当に評価」されたなら
医療が壊れるような「貨幣資源過少」状況も恐らく改善に向かうことでしょう。


この論理でいくと、社会が医療を正当に評価することは、非常に大切です。
私自身、そのために自分のできる役割を果たしていきたいと思います。


さて
医療系のブログなどで、社会に対する不満の声として出てくる代表的なものが
・医療の不確実性
・勤務医の劣悪な労働環境
の2つについて「社会が分かってない」ことではないでしょうか。
他にも「医療費不足」など、いろいろな表現形がありますが
突き詰めると上の2つに収れんするかなと思います。


社会一般に、この点に関する理解が不足しているのは、その通りだと思います。


で、問題はここからなんですが
こうした事柄に対して社会一般の人に理解してほしいと思った時
どうしたらよいでしょう。
社会の人が自分で勉強すると思いますか?
本来は自分自身の命に関わることですから、そうあるべきなんでしょうが
しかし、誰かが説明しなきゃ、絶対に分からないとは思いませんか?


さて、この説明、誰がするべきでしょう。
説明プロジェクトの音頭を誰が取るべきでしょう。

(次項に続きます)

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コメント

>こうした事柄に対して社会一般の人に理解してほしいと思った時
どうしたらよいでしょう。
社会の人が自分で勉強すると思いますか?
本来は自分自身の命に関わることですから、そうあるべきなんでしょうが
しかし、誰かが説明しなきゃ、絶対に分からないとは思いませんか?
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ここなんですね。問題は。
医療者は市民が勉強して当たり前って思ってるんですが、組織だった機関からの情報公開の少ない中
なかなか市民は理解できません。
勉強不足と言わず、どんどん情報発信して教えて欲しいです。
医師会も全国医師連盟もまったくといっていいほど、市民に情報発信もなければ、意見の吸い上げも
ないです。

 私は前項では医師会を批判しましたが多少の擁護もしておきます。
 日本医師会では、一昨年でしたかマスコミ関係者に対する勉強会も開催していました。もっと頻度をあげてマスコミとの接触を図るべきだと思います。
 日本医師会・日医総研では各種統計や予測を発信しており、少なくとも厚労省が発表する数値よりは正確だと思います。ところが、なぜかマスコミも厚労省も一般受益者もこれが話題に上ることはありません。
 これは勉強不足で、厚労省側か医師会側の数値か、どちらが正確か判断することが出来ないのでしょう。せっかく情報発信していても役立ててくれていない事も多々あります。こういう点ではマスコミ側の勉強不足を指摘したいと思います。

今まで医師会は色々と情報を流しています。主にマスコミに対してですが。それをしっかり扱わなかったマスコミにも問題がありませんか?

診療報酬引き下げのときも「そのようなことをしたら医療がおかしくなる」と発表していますが、それに対するマスコミの対応は「医者は儲け過ぎている。どうせ自分達の利益が減るからそんな事言っているのだろう」といった論調でした。

先日の脳神経外科学会でも、「くも膜下出血は5%程度診断できない、今の医療には限界があることを皆さん御理解ください」と学会側が声明を発表しても、マスコミの論調は「今の御時勢であっても誤診が5%ほどある。医師は怠慢すぎる。」といったものでした。

医師側が声明を発表しても、マスコミフィルターにより曲解されてしまったり、下手したら無かったことにされてしまうのです。

今の世の中では、マスコミが取り上げなければPR不足と言われるのです。反対にマスコミ以外を利用してPRをする方法を教えて欲しいぐらいです。

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