周産期・救急懇談会3(ハイライト) |
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投稿者: 川口恭 | 投稿日時: 2008年11月25日 20:48 |
前回から3連休を挟んで本日またあった。
阿真さんがいい味を出していて、今回は報告のし甲斐がある。
では冒頭の大臣挨拶から。
「本日は終日厚生労働委員会で、この問題もだいぶ質問されたので、この場で検討いただいていることと12月を目途に具体案を出したいんだということを申し上げている。基本的には委員の皆さんの意見を集約してほしいと思っているが、くれぐれも現場の医療者の負担を増すようなことはよくないので、それでなくても医師不足で悲鳴があがっているところに、さらに悲鳴の上がるのではよろしくない。この具体策によって負担が軽減されることでないと先へ進まない。そのうえで、どうしても必要な人的・物的なものがあれば、それは政治の力で何とかする。今後の予算編成で手当てすることも含めて。ただ、これは国だけが頑張ってもあれなんで、各自治体にも頑張ってもらいたい。東京都が猪瀬副知事の元にプロジェクトチームを立ち上げたけれど、ああいったように各自治体に取り組んでもらって、ここの議論が各自治体を動かして、地域地域で優れた取組が行われるような方向付けをお願いしたい」
産科麻酔の専門家を代表して照井克生・埼玉医大産科麻酔科診療科長がプレゼン。
舛添
「総合母子周産期医療センターに常勤麻酔科医を配置しろという話だが、そもそも、そんな数麻酔科医はいるのか」
照井
「麻酔医は着実に増えている。入局者は年400人ずつ、専門医も年に2000人ずつ増えている。センターの長や産婦人科の部長が麻酔科と連携すれば改善するんではないか」
岡井
「麻酔科の常勤医がいない状況はたしかにある」
海野
「麻酔科医の常勤をセンターの条件に考えると、できるところが限られる。現実にはできなくなってしまうので、まずは最低限のところを確保し、それぞれの施設で育てて充実させていくというのがよいのでないか。センターの陣容が、赤ちゃんに偏っているのも、一番弱い赤ちゃんの命を守るのが最低限必要なことということで、今後は母体救急についても充実させる方向で考えるのではいかがか」
岡井
「全く同感。ただ、それを育てるのに行政の力は絶対に必要。今後大きなテーマになるだろう」
杉本
「麻酔医は確かに増えてるのかもしれないが、病院の常勤はどうか。大阪では、大阪大関係の病院に関しては常勤医を確保するのが非常に難しくなっている。日本全体を見てどうなのか。開業の割合が高いし、女性医師の比率も高い。センターに麻酔科医の常勤を明記したとして、どうやったら確保できるのか」
照井
「御指摘の通り女性医師の比率が高い。2人で1人分とカウントしてもらうなどしないと常勤の働きをsるのは難しいかもしれない。非常勤の麻酔科医がどの程度いるか把握していないが、決して望んで非常勤になったわけではないと思う。病院で疲れ果てて出ていくというのがほとんど」
有賀
「麻酔科医のキャリアアップの観点から伺う。リスクの高くない患者さんから出発するんだろう。産科麻酔は難しい部類なんじゃないか。どの辺りで使いものになるのか。具体的に皆ハッピーな若手と年寄りの混ざり具合を教えていただければ」
照井
「50代の部長、40代の次長、若手と研修医の組み合わせでないか。専門研修の1年目では1人で当直させることはなくて、誰かが指導しながら一通りやらせて、次の年から自律的にやれるようになる」
有賀
「卒後4年から5年で兵隊として使えると」
照井
「戦力になる」
嘉山
「麻酔科の開業が始まったのは仙台からで、麻酔科は受け持ち患者がいないからそういうことをできるんだと思うけれど、常勤麻酔医がセンターに行くためには何をすれば一番いいのか。定員増を提言しているけれど、それだけでセンターへ行くとお考えか」
照井
「麻酔の当直の仕事で一番恐い思いをするのは飛び込んでくる帝王切開。それは産科麻酔のトレーニングが日本ではなぜか抜けていたせいでもある。そこを埋める努力は開始したところだ」
嘉山
「それは麻酔科内の自浄作用の話だろう。ここは国に何かやってほしいと言う場。仙台の場合、年収が少な過ぎるというのが開業の理由だった。そういう事情があるならば、キレイ事じゃなくて、ちゃんと言った方がいい。インセンティブは必要ないのか」
照井
「正直そういった部分は必要。緊急対応が報われる報酬体系を個人としては認めていただきたい」
嘉山
「しばらくは少ない資源を有効に使わないとどうにもならないんだから、言うことは言わないと」
照井
「ありがとうございます」
岡井
「処遇をよくしないと集まらないということ」
大野
「妊産婦麻酔は簡単じゃないということだが、診断がつかず、頭痛いと行って失神してしまうようなCTを取る余裕もなく帝王切開に入るような事例もあるが、そういうものは群を抜いて難しいと思う。そのレベルに達した麻酔科医はセンターにいるのか」
照井
「センターに行ってからも力量を上げていくことは可能」
ここでいったん議論を打ち切って前回の積み残し、阿真委員のプレゼン。
「私が話したいことと、ここで議論していることは随分違うと思うが、この会議は何のためにやっているかといえば、会議の向こう側にいる一般の人に対して、みんなで努力するから安心してと示すためだと思う。
(中略)
私たちは余りにも知らなすぎる。できることは、まず知ることから。どこでどうやって知ればいいのか。自治体の母親学級で知らせたらどうか。お産の危険性について知らせたらどうか。それなら既存プログラムの変更だから、そんなにお金はかからない。それから産後こそ母親学級が必要でないか。
(中略)
この検討会を足早に進めて結論を出すことが国民の望みではない。むしろ時間はかかっても、一つひとつ丁寧に議論して皆で理解していくことこそ国民が望んでいる」
最後の一段落は、本当にまさに仰る通り!
12月までに何とかしろなどと多分多くの国民は思ってない。
岡井
「医療提供側からだけでない視点でご指摘いただいた」
舛添
「宣伝すると妊婦検診が5回分無料だったのを14回無料にしたので、少しはお役に立ったのでないか」
有賀
「私は大学病院に移る前は普通の市町村病院にいた。最初は脳外科部長で行って、それから救急部長になった。何といってもビックリしたのが、小児科医の働きかたの凄まじさ。それまでは自分が一番働いていると思ってた。しかし小児科、特に新生児科の先生たちはベラボーな働きかただった。小児科のドクターたちに負けないように働こうじゃないかと一緒に行った先生方に言ったぐらい。そこで伺いたいのだが、あの先生たちがどうしてあんなに安い給料でどうしてあんなに働いているのかというような議論は、お母さんたちの間で出ないのか」
阿真
「よく出る。まず皆さん医師の給料を知らない。すごくたくさんもらっていると思っている。でも現実を知ると、時間あたりにすれば一般企業よりはるかに少ないのでビックリする」
有賀
「驚いた先に、あの先生たちにちゃんと給料を払ってあげるには医療費を増やさないと、という話にはならないか」
阿真
「これは難しい。医療費無料化の功罪ということで、せめて夜間休日くらい有料でもいいんじゃないかというような投げかけをしてみたこともあるけれど、余りにも皆の意見が異なるので、会として一つになるのは難しい」
有賀
「医師の給料が安いというところまでは」
阿真
「そういう話なら」
有賀
「私マンションに住んでいるんだが、そういう所でもビックリされる。日医の先生方がかなりたくさんお給料を取っているので、そういうのと勘違いされているのもあるんだろうか」
池田
「産婦人科は地域に根ざした医療と思っている。まったく正常な妊娠であっても行くのだから、地域の文化センターであり駆け込み寺のような機能を持っている。その意味で地域にあることが大事で、欧米のように集約化しすぎるのも問題でないかと思うのだが」
阿真
「大きな所に行きたいという人もいるけれど、ほとんどが地域で産みたいと思っている。前回の検討会でファーストコンタクトが救急隊の方がいいのかと聴いたのも、まさにそれだから大体みなかかりつけのドクターに相談している。小児科以上にかかりつけがしっかりしている」
岡井
「スウェーデンの看護師が500人くらい赤ちゃんをフォローしている例をお話になったが、日本では保健師がそういう役割なんでないか。機能してないか」
阿真
「保健師は母親学級には出てくる。でも、どのお母さんをどの保健師が見るというようにはなってない」
岡井
「1対1の関係になれば安心できる?」
阿真
「それもあるし、母親学級自体が産後は地域によってちゃんとやっているところと何もしてないところとバラバラ」
岡井
「どういう種類の情報が伝われば安心してもらえるのか」
阿真
「小児科については、病気の中身とか、こういう時はどうしたらいいのかとか。#7119とか#8000とか、あるということを伝えるだけでも随分違う」
岡井
「救急医療体制について議論しているわけだが、それぞれの地域でどうなっているかというような情報は?」
阿真
「全く伝わってない。だから私の所に教えてほしいと言ってくる」
大野
「大事な指摘。お産が必ずしも安全でないということは段々分かってきたと思うのだが、でもその先に進まず漠然と私は大丈夫だろうと思っている人がほとんど。1次機関として、危険が分かってくれば、高次な機関に行きたくなるんだろうと考えていた。しかし開業して5年経つが、むしろ我々の所へ来たい方々がいるということが分かってきた。たしかに大学では重症の方たちを診てきたけれど、しかし10ヵ月もつき合ったわけじゃない。母親学級で伝えるのもよいだろうが、しかし、命の危険があるというような話を知らない人からバーンと言われて受け入れられるものなんだろうか。何ヵ月も顔を合わせて信頼関係ができてからだったら聴いてもらえるんじゃないか」
阿真
「こういう場で話していることが、お母さんたちにうまく伝わらない。伝わるためにはクッションとなる助産師や保健師が状況をよく理解してどう伝えるかにかかっていると思う。私たちの活動でも、コンビニ受診を控えようとは絶対に言わない。不安がある中で抑え付けようとしてもお母さんたちがついてこない。そうじゃなくて不安を減らしましょうという言い方が必要。それが結果的にコンビニ受診も減らすことになる」
この方法論の必要性は、最近とみに感じており
実は、ロハス誌も軌道修正が必要だと思う今日この頃。まさに仰る通り。
嘉山
「早産が増えているというのを初めて知った。ここで尋ねるのは違うかもしれないが、日本のお産は他国よりリスクが高いのか」
岡井
「不妊症の治療が進んで多胎が増えてる。それからハイリスク妊娠も、妊娠する年齢が高くなっているのと、それから感染もある。環境が悪くなっているのもある」
阿真
「先ほどの大野先生のお話。かかりつけ医が全部果たしてくれれば、私たちのような活動は必要ないかもしれない。何回も何回も診察の中で言ってもらうのがベストだと思う」
杉本
「出産が必ずしも安全ではない。たしかにそうだが、しかし99.995%の人は死なない。それはほぼ安全と考えてよい数字ではないのか。危ない危ないというと却って不安をかき立てる。日本のお産が世界でも安全なことは間違いなく、その年間50人ほど亡くなるのを減らすのはかなり難しい。今回は不安の問題と安全性の問題は切り離して議論した方がよいのでないか。死ぬかもしれない危険だということで不安なのか、何かあった時にちゃんと対応してもらえないかもしれないのが不安なのか」
阿真
「後者」
杉本
「システムができてないということに」
阿真
「はい、そう」
岡本
「啓発の問題は、妊娠してからでなく学校の時から、いのちの教育でやるべきなんでないか。その授業時間が非常に少ない。もっと時間を取って、自分たちが何をしなければいけないのか、たばこの問題とか予防の問題とか、救急車の使い方とか、落ち着いて話をできる時にやっておくことが重要だ」
ということで
専門家的には話が足踏みしたように感じるんだろうが
こういう話をすっ飛ばして何か決めても
国民は議論に参加したつもりがないから(だって何話しているか分からない)
悪い結果が出た時に、それが自分たちにも責任があるとは思わない。
実に意義深かったと思う。
この後、NICUの体制のことなどで議論が行われたが
それは後日ご報告するとして最後の大臣挨拶でハイライトを終える。
「問題提起だけ。麻酔科医が足りないのなら、照井先生のような人に週に1日ずつ出てもらって、2、30人のそういう人が30分以内に駆けつけるという遊撃隊みたいなのは荒唐無稽なのか。常駐してなくても30分以内に行けば助かるというのなら、どうだろうか。
空床補償の話にしても何にしても結局診療報酬の話で中医協で片付ける必要がある。悠長な話になりかねない。そういう政策システムでいいのか。新生児科医が少ない、処遇が悪いと言っても、結局は診療報酬で病院にお金が流れる仕組みしか取れない。ホスピタルフィーとドクターフィーを入れるのがいいのか悪いのか。現在の体系ではホスオピタルフィーでしか誘導がかけられない。私は厚生労働族でも何でもないので、常に疑問に思っている。この会議にはそぐわないかもしれないが、長期的な問題として議論いただけないだろうか。だって12月目途にまとめたって、実現するのはいつなんだという話だ。直接予算を分捕ってきても、反映するには、必ずあの中医協でということになってしまう」
ビジョン会議の際にも少し書き込まれたドクターフィー。
進展するだろうか。