フォーク並びの1人目は誰?

投稿者: | 投稿日時: 2009年03月23日 10:53

先日、「コップの外でザワつこう」というエントリーで、「コップの内」にいる人に、「コップの外」にいる私たちの意見のやり取りのオブザーバーになってもらいたい旨、書きました(これだけでは意味不明なので、もし興味を持っていただけましたら是非、そのエントリーをご参照いただければ幸いです)。

それについて、さらに面白い例えをしてくれた人がいました。以前にもコメントを下さった方です。

その方は、「トイレのフォーク並びを広めた人って、どんな人なのかな」と考えていたといいます・・・。

「たまたま、そのトイレを利用した人が『こうやって並ぼう』といって定着させたっていうのは考えにくいので、最初は駅か百貨店か、その施設の職員か、ともかく、そこにいる人だったんじゃないかと思います。好き勝手にしたい利用者に、こうしてといい続けることや、ずっとそこにいることは正直無駄なことに思ったこともあるかもしれません。文句をいう人もたくさんいたでしょう。それでも、定着してみれば、利用者は当然気持ちよいけれど、施設職員としても余計なトラブルや苦情に煩わされることが減ったでしょうし、また、フォーク並びを守れる利用者は、マナーがよいでしょうから、トイレの設備が壊されたり、ひどく汚されることもすくなく、掃除の手間や設備の補修に費用がかさむということも減ったのではないでしょうか」

以上の話のポイントは、
「フォーク並びというものを知っていても、一利用者が突然に率先して、他の利用者に呼びかけて始められる人はなかなかいないだろう。しかし、その施設の人間ならば、呼びかけるのはそれほど難しいことではない。しかもその結果、職員側にも利用者側にもメリットがある」
ということです。


この例えには、医療崩壊をくい止めるために、医療関係者がオブザーバーとしてのみならず、一般の人のアクションをリードする存在になってほしいという思いが託されています。リーダー役を買って出る、なんて考えるとちょっと身構えてしまうかもしれませんが、「フォーク並びを促すくらいのこと」と思っていただけたら、どうでしょう。それくらいのことなら、できそうに感じられないでしょうか。

大事なのは、すでに、「問題意識は持っているけど、何ができるのかわからない」「なにかしたいとおもってるんだけど・・・」という人が少しずつでも一般の人の中に増えているのではないか、ということです。周産期医療の崩壊をくい止める会や、その他の医療関係者の方々が、ほうぼうで声を上げ始めたのが、じわじわ効いてきていると考えてもいいかと思います。その人たちの声をすくって表に出す手助けだけでよいのです。


もちろん、まだそういう人たちは少数派です。まだまだ、コンビニ受診や救急車のタクシー的利用をしてしまっている人たちもいます。それはたいてい、コンビニ受診やタクシー的利用が何を引き起こすのか、けっきょくはわが身に降りかかってくるのだ、という点について、知識もしくは実感がないためです。医療は完全であるべきだ、という声もあります。それもたいてい、「医療臨床の現場ではすべてを科学で解決できない。あいまいで複雑な人間の体は、データだけではとらえきれない」(by米山公浩氏)という医療の本質をわかっておらず、医療サービスを有償で受けることについて、工業製品を買うのと同じような感覚でいるためではないでしょうか。


彼らにどう「当事者」になってもらうか。


フォーク並びの例を教えてくれた彼女は、自らmixiで“医療サポーター”のコミュニティを立ち上げました。彼女は言います。「ネット上には、何かしなくちゃいけないと問題意識はあるけど署名を集めたり、街頭にたったりはとてもできないという人がたくさんいます。そういう人たちに、まずは自分の病気や健康に関心をもってもらうこと、自分の地域に関心をもってもらうこと、そして調べたことを、他の誰かに伝えることができたら、もう立派な医療サポーターだと私は思います」。彼女の頭には、オバマ氏が大統領選挙で使った「SNS戦術」があるようです。


ロハス・メディカルがくい止める会の活動に協力して行っているワンクリック募金もきっかけのひとつとして期待します。拡声器を持って街頭に立つことが出来る人なんて、実際、ほとんどいません。ワンアクション、ワンクリック、入り口はできるだけ気軽で簡単なほうが現代的で、現実的です。そうして手軽でありながら、“自分が参加し、何かを築きつつあることが、目に見えて実感できるしくみ”をつくることが、リーダーと同じくらい大切なのかもしれません。

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