指定基準を再編しても。 |
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投稿者: | 投稿日時: 2009年03月28日 11:45 |
ちょうど1ヶ月ほど前、「周産期は妊産婦だけのものにあらず。」というエントリーを書かせていただきました。
愛育病院の総合周産期母子医療センター指定返上問題でそのことを思い出したので、これを機に、周産期母子医療センターの指定基準に関するその後の動きを確認しておこうと思います。
私が先のエントリーを書いてから間もない3月4日、厚生労働省の「周産期医療と救急医療の確保と連携に関する懇談会」が、周産期母子医療センターの指定基準の見直しについて最終報告をまとめました。
周産期センター、4分類に再編へ
(2009年3月5日20時59分配信 医療介護CBニュース)
●従来の制度:2つに分類
①総合周産期母子医療センター
MFICUを6床以上、NICUを9床以上を有すなど相当規模の産科病棟・新生児病棟を備え、複数の産科医と新生児科医が24時間体制で緊急患者を受け入れて、高度な周産期医療を行える医療施設
②地域周産期母子医療センター
総合周産期母子医療センターに近い設備や医療体制を持っているが、基準を満たしていない施設
●新制度:以下4つに分類
①総合周産期母子医療センター(母体・胎児・新生児型)
要件:産科、MFICU、小児科(新生児)、NICU(小児外科・小児心臓外科)、救命救急センター、麻酔科、脳神経外科、心臓外科など
②総合周産期母子医療センター(胎児・新生児型)
要件:産科、MFICU、小児科(新生児)、NICU(小児外科・小児心臓外科)、麻酔科
③地域周産期母子医療センター(母体型)
要件:産科、小児科(新生児)、救命救急センター、麻酔科、脳神経外科、心臓外科など
④地域新生児搬送センター(新生児型)
要件:小児科(新生児)、関連診療科(地域における新生児搬送およびそのコントロール機能を持つ)
ちなみにMFICU=母胎胎児集中治療室、NICU=新生児集中治療室
これまでの「総合」「地域」という分類では、妊婦が脳内出血など急性疾患になった場合に対応ができるかどうか不明確でした。この再編で、各施設の機能を明確にし、的確で迅速な患者受け入れを目指すとのこと。新しい4分類を、この4月から導入したいということでしたが、実際今、どうなっているのでしょうか?この報告書が出されて、何かが具体的に進められているのかどうか。私も知りたいのですが、いまいち情報に出会えません。
しかも結局、この話もいつもと一緒で、とにかくカタチだけ作ったり整えたりしたけれど、肝心の中身が全然追いついていない、ということなのでしょうか。分類しなおしても、標榜はともかく、人員が揃っていなければどうしようもないと思うのですが。
この懇談会は、昨年、東京都内で容体が悪くなった妊婦が相次いで受け入れ不能とされた問題を受け、11月に議論を始めました。しかし今回、 総合周産期センターの指定返上がこうして騒ぎとなっているのを見ると、3月までの数カ月間、何のために議論をしてきたのだろうと思ってしまいます。もちろん将来を見据えたものなのだとは思いますが、優先順位がどうなんだろうなあ、という感じずにいられません。
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コメント
>3月までの数カ月間、何のために議論をしてきたのだろうと思ってしまいます。
正しくそう思います。
周産期医療センターの問題が、労基法の問題を完全に無視していた訳ですから、遅かれ早かれ、必ず誰かから声が上がって指摘されたことだろうと思います。
2002年の東京ER以降、東京の救急医療体制でも、同じ問題が起こっていることについては、まだ東京も厚労省も沈黙しています。
しかし、必ず公にして、都の犯罪、政策の不作為の罪を暴きます。
主な都立病院の運営責任者は石原都知事そのものです。
下水道局の不祥事では、責任者のクビを提唱しておられたそうですから、自らの首を世間に晒して、罪の重さを償って頂きたいものです。
とある一地方ですが、こんな区分が出来るのは東京・大阪だけでしょう ほとんどの地方ではこんな過剰な設備(特にNIの病床数)は不要で、半分くらいの県では大学の付属病院に必然的になるであろう現実を厚生労働省はわかっていないなぁと思います 基準を作ったら、今度は基準に合う運用をしなかったと厚生労働省の逃げ道を作るための施設基準のような気がします 実際、事故が起こるとそんな言い方をして基準を守ってない方が悪いと・・・がん・肝炎の拠点病院にしてもそうだし、だいたい、都道府県ごとに作るという発想が、都道府県に責任を押しつける、無策さを感じてしまいます
>Med_Lawさん
やはりそうなのですか。救急の状況も気にはなっていたのですが・・・。
石原さんも東京マラソンだとか東京五輪招致だとか、お祭りごとだけじゃなくて(嫌いではないですが)、もっと深刻な“政”のほうにも力を入れていただきたいですよね!
>tuneさん
>基準を作ったら、今度は基準に合う運用をしなかったと厚生労働省の逃げ道を作るための施設基準のような気がします
確かに、私も研究室で“門前の小僧”的に、官僚的なものの考え方を(はからずも)習いましたが、そんな感じに見えますね。もし本当だったら、ほんとうにあきれてしまいます。そして、たとえそこまでの意図はなくても、やっぱり現場感覚の欠如は否めませんね。理想論かなあと。
>都道府県ごとに作るという発想が、都道府県に責任を押しつける、無策さを感じてしまいます
まったくもってそう思います。医師不足は現場や地域レベルで解決すべき段階を超えてしまっています。都道府県レベルでさえありません。以前、「たらい回し」についてエントリーを書かせていただきましたが、病院が患者を“たらい回し”せざるを得なくなっているのは、行政がこの問題をたらい回しにしている結果なのですね。
基準と言って補助金と直結させている間はダメでしょうね。
その施設でやることやらないこと、他の施設と協力できることできないことをはっきりさせる、あるいはそういうcommitmentを出すというところに手を着ける必要があります。
まず現実をありのままにはっきり記述することがないと、何が欠けているのかがわかりません。医者がいるふり、やってるふりで済んでしまうからです。
できていること、できないことを明らかにしてはじめて、前者を維持するか否か、維持するなら必要な努力が何かを議論できますし、後者を何とかするための方策を考えることができるようになります。
>中村利仁先生
なるほど。基準先にありきで上から与える、というやり方だから駄目なんですね。そこに補助金がからんでくれば、病院側も体裁だけ整えてごまかそうとするのは目に見えている、と。そうでなく、個々の病院の実態を明らかにし、公表し、それに基づいて他との協力関係を具体化していく、というように、逆の方向から手をつけていくべきなんですね・・・非常にわかりやすい解説をありがとうございました。