足立議員の質疑応答より雑考。

投稿者: | 投稿日時: 2009年04月23日 14:43

昨日のニュース記事「労基法「パンドラの箱」は2004年から開き始めた?」で取り上げられていた足立信也議員の参議院厚生労働委員会での指摘は、大変興味深いものでした。

先日、梅村議院が指摘したような「パンドラの箱」を開ける作業、すなわち医療に実際に必要なコストと医師数、看護師数を推計する材料は既に出始めている、というのですね。

その質疑応答の中ででてきた「新医師臨床研修制度よりも、これらの労働基準法順守に向けた医療機関の動きの方が、地域の医師不足に与えた影響は大きかった」という指摘とその説明からもまた、いろいろ考えさせられました。


足立議員の説明部分を引用すると、
【2002年に厚生労働省労働基準局が出した通知を元に、宿日直許可を受けている医療機関6600か所に対して労基署からの調査が入り、04年には2700か所に改善指導がされ、悪質だった596か所に監督指導がされていた・・・。このうち、労基法上の宿日直許可基準に違反していた医療機関については、06年3月時点で200か所が改善されており、そのうち過半数の115か所が医師を増員して許可基準を満たせるよう対応していたと示した。これらが急性期を中心とした大病院だったことを指摘した上で、「これは地方の病院の人員が減る一因になっている大きな要素」と述べた。】


労基署の監督指導により、115箇所の大病院が医師の増員を行って宿日直許可基準を満たすよう改善した、ということですが、これって実は、病院側のモラルの問題だったのでは?と、これだけの説明からは思えてしまいます。私の認識では、病院には医師を増員するだけの医療収入がない(診療報酬が十分でない)ために、医師が不足し、過重労働や受け入れ不能の問題が起きていると思っていました。実際、多くの医療機関ではそうなのでしょうね。ただ、この115院についてみれば、監督指導を受ければできることをやっていなかっただけのようにも読めるので・・・。

そうでなく、この115院にしてみても赤字増を覚悟で、身を切って医師を雇ったのでしょうか。だとすればやっぱり、医療費の不足は依然問題で、医師の総数も足りていない、労基署の指導は大病院の勤務医の労働実態を改善させて、地方病院の実態を悪化させただけ、ということになりますね。


個別の病院に対する指導の足並みが厚労省下の担当部署(東京都を含めれば)によってばらばらであることは、愛育病院問題で明るみになりました。そして今回、労基署の指導がまさに「木を見て森を見ず」の結果をもたらしていることもわかったんですね。つまり、根本的な問題(医師数や医療費を増やすこと)が改善されないうちに、しかし生真面目に、自分に与えられた仕事だけをこなした結果、たとえて言うなら「こっちの車のバックミラーがとれたのを直そうと思ったので、あっちの車からとってきてつけました」みたいなことになった、という感じでしょうか。(←ちなみにこのエピソードは、知人がナポリで車の修理を業者に頼んだら実際に起きたこと。笑い話と同レベルなんですね!)


また、この記事へのコメントにも書き込みがありましたが、厚労大臣が「公立病院などでは収入についても明らかになっていないと指摘。『会社を経営する、組織を動かす時には収入や支出がいくらあって、その差をどうするか考えないといけないが、こと医療機関はその感覚が非常に薄いと思う。』」という部分については、普通に驚いてしまいました。公表されていないだけでなくて、把握できていないんでしょうか。「その感覚が非常に薄い」のは、公立病院の基締めである厚労省ですよね?たしかにちょっと他人事的発言にも受け取れる気がしてしまいました。

いずれにしても、これから手をつけるというんなら、徹底的にやって挽回していただければとは思いますが・・・。

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コメント

堀米様
>労基署の指導がまさに「木を見て森を見ず」の結果をもたらしている
このご指摘は、一見するともっともな理屈のようで、良く考えると社会制度に対する大きな誤解があるように感じます。
堀米様は労基署の病院に対する是正指導が、結果的に日本の医療を崩壊させる後押しをしている。病院など医療機関と医師は日本に住む1億3千万人の生命という、地球の重さでも比較できないほど重い使命を担っているのであるから、労基署が労基法を杓子定規に当て嵌めるべきでない。すなわち健康と生命を支える医療体制の維持を、労基法の一律適用より重くみるべきであって、労基法や労基署の方が医療の重要度を鑑みて考慮すべきだ、労基法適用で医療が崩壊したら本末転倒である。このようにお考えになられていると拝察致します。
労基法が医療を崩壊させるという捉え方に異論があります。少々長くなりますがこのコメント欄をお借りして、以下に私見を述べさせて頂きます。
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現在の疲弊した医療体制の根本原因は何か。それは言うまでもなく提供できる医療資源に対して、日本国民の受診の要望や必要度が大きすぎて、医師をはじめとする医療従事者に人間として耐えうる限度以上の労働を強いている結果です。すなわち国民の医療需要に比して、人的な医療資源(特に医師数)が過小であることが、医療崩壊の最大の原因です。
そして1日8時間週40時間の割で計算した年間2,085時間の法定労働時間を遙かに超え、中には年間4,000時間をも超える過重な労働に医師が服務することで、かろうじて国民が要求する診療需用を満たす医療の提供が維持されているのが現実です。つまり1人の医師が2人分働いて、ようやく維持しているのが日本の医療体制なのです。過酷な診療科からの医師の逃散や、比較的労働時間が少ない診療科に研修医が指向する原因は、この医師不足による過重労働が最大の原因だと私は考えます。
そしてこの医師不足の現象をもたらした根源は何かと突き詰めれば、それは言うまでもなく過去数十年間の医師養成の政策的な失敗の結果です。その医師養成の政策決定を担ってきたのは「厚生」労働省を中心とする、広い意味の「医療界」です。決して労基法や労働行政が医師養成の拡大を阻害してきたのではありません。むしろ労基法は「厚生」労働省医政局を筆頭とする医師供給数の政策決定を所管する部門に対し、医師供給数を増やして医師の過重労働を軽減し、機械ではない生きた人間である医師の稼働能力を長く保つことにより、日本の医療体制崩壊を防ぐ方向に働くファクターです。
もちろん労基法を順守して医師の労働時間を減らすなり、時間外労働の賃金支払いが増えることは、短期的には病院の医療供給能力を阻害することになります。しかし労基法の適用を手加減し、医師の過重労働を是正しないことによって医療供給を維持しようとしても、生身の人間である勤務医が永久に過重労働に耐えることは不可能で、結果的に数年の内に医療供給能力は大きく減少してしまうでしょう。昨年より新規の医師養成枠を拡大する方向に政策転換しましたが、その効果が現れるのは少なくとも10年以上先の将来です。それまで2人分も働くような医師の過重労働で支えられている、見せかけだけ立派なハリボテの医療供給体制が維持できるでしょうか。
その医師供給が増加して医師の過重労働が軽減されるまで、医師の皆さんの多数が肉体的にも精神的にも耐えられるのであれば、それまでの期間を限定して労基法の医療への適用を加減するような法令改正と、労働行政の医療への遠慮は意味を持ち、検討する余地が生じます。しかし現状の過重労働での医療提供は10年も保つ訳がない、これが医療の現状を理解している人々の衆目の一致する予測ではないでしょうか。
だとすればどうしたら良いのか、そのように順序立てて考えるのが大事です。
現状は医療需要が医療提供能力より過大なんです。そして医療提供能力を劇的に増やすには10年~15年の年月が必要なんです。そうなれば出て来る答えは一つです。医療需要を現状の医療提供能力で応じられる範囲内に減らして貰うことです。
国民の医療需要を検討すると優先度に序列を付けることが可能です。時間外や夜間お構いなしのいわゆる「コンビニ受診」や、取り敢えず薬を頂戴などの「ナントナク受診」を抑制しても、国民の健康維持が大きく損なわれたり、生命にかかわるような重大な社会問題が頻発するとは思えません。また電子カルテのファーマットを政省令で規定して互換性を高め、患者が街医から高次の医療機関に移る場合などでの医師の情報提供業務の軽減を図るとか、健保・労災・自賠責・医療扶助など異なる社会保障制度での煩雑な書類仕事を軽減するなど、医療行政の側で行える施策が数多くあるように思います。
「厚生」労働省の医政部局と、医療行政の政策決定に関与してきた「審議会委員」を輩出した医療業界は、こうした施策を従前より渾身の努力で実施してきたにも関わらず医療崩壊をもたらした結果を真摯に反省し、国民に医療供給体制の厳しい現実を包み隠さず提示説明して、医療需要抑制や医療費の増大に国民の納得と合意を得る努力を為して来たのだろうか。こうした広い意味での「医療界」がまず先に政策転換を図った上で、初めて労働法令の適用なり労働行政の側に弾力的運用を論ずるべきと思う。
この流れを逆にして、労働行政が医療を崩壊させるから労基法の適用を手加減すべきだとの論旨こそ「本末転倒」であり、「木を見て森を見ず」の議論と言うべきであろうと思います。
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以下これは蛇足ではありますが、私自身はこのロハスでの堀米様の存在を高く買っております。こうした医療問題を扱うメディアにおいては、往々にして医療者だけが集まり、医療者の論理や常識だけで議論が進みがちです。しかしそうした中に堀米様のように非医療者が混じり、いわゆる素人感覚の意見や見方が混じるのは、非常に良いことだと思っています。
ただし医療の素人であるから出せる意見が貴重ということと、現実社会に対する勉強や認識も雑で構わないということは、等価ではないと思います。
このエントリに於いても「公立病院の基締めである厚労省ですよね?」などという記述がありますが、都道府県や自治体などが設置した病院も、その全ての病院経営を厚生労働省が直接管理しているのかと、病院待合室に居るロハス誌の読み手に錯覚させるような不正確な記述です。
確かに厚生労働省は全国の病院や医療機関の元締めではありますが、それはあくまでも監督官庁としての行政責任を所管するのであり、病院経営者としての財務や労務管理の全責任が厚生労働省にあるのではありません。先の「公立病院の基締めである厚労省」という記述は、「バス事業の元締めである国土交通省」に、全国の市営バスなどの公営バス事業の赤字の責任を押し付けるような違和感を感じます。
少なくとも医療問題を取り上げることで維持される、営利企業のロハスの「契約コメンテーター」という立場であれば、単なる医療問題に関心のある「巷間の素人投稿者」や「素人の勝手ブロガー」とは違った責任感と真剣さをもってコメントなさるべきと思います。素人的視点ならではの問題感覚や主張内容と、素人だから間違った資料読みや誤解や勘違いもアリなんだ、ということは全く違うことと思う次第です。少なくとも医療メディアを標榜するロハスのインサイダーでおられるなら、医療制度や資料読みについてはそれなりの勉強はなさるべきでしょう。
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なお以下は全くの蛇足です。
厚生労働白書など手元の資料では、8,943の病院(H18年)の内で国立病院は292ヶ所似すぎません。しかもその中で厚生労働省が直接所管する(経営管理が厚生労働省の責任になっている)国立病院は、146ヶ所の国立病院と、6ヶ所のナショナルセンター病院、13ヶ所のハンセン病施設、そして1ヶ所の国立障害者リハビリテーションセンター病院の都合166ヶ所です。言うまでもないことですが全国立病院292ヶ所の内、残る126ヶ所の管理所管は厚生労働省ではありません。また1,351ヶ所の公立病院(多くは自治体が設置者)や、7千余りの民間病院の経営責任も厚生労働省の直接責任ではありません。
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非常に長い投稿となったことをお許し下さい。

法務業の末席さま

丁寧なご指導をありがとうございます。表現の不適切なところ(厳密さを欠くところ)はご指摘のとおりでした。素人ではありますが、こうしてブログに文章を掲載し、皆様にご指導を頂いている身として、ますます勉強せねばと思います。

ひとつだけ、書き方の訂正を含めて、改めて書かせていただいてみようと思います。

労基署のやった指導は当然“間違い”ではないと思っています。それは労働者としての勤務医の身を守る観点からいえば、労基署の指導が理念としては最優先されるべきだからです。ただ、結果が地方の医療にはかばかしくない状態をもたらしてしまったのも事実です。医師の絶対数が足りないのですから、そうなるのは考えれば最初からわかったことです。わかっててやることは、地方医療をさらに疲弊させるのを容認することですから、そうではなかったと想像します。きっとこの結果と足立議員の指摘は、労基署にとって想定外だっただろうと思います。

私が気になるのは、行政のやることがそんな風にばらばらで、場当たり的でいいのかな、ということです。これだけ医師不足や医療費の不足といった根本原因が言われているのに、各部署がそれぞれの理屈で目先のつじつまあわせを繰り返してごまかしているのは、これまでと何も違いません。幸い今回の件は足立議員に指摘されたから、医師不足、医療費不足がますます強調される材料となりましたが、そうでなければ、労基署のやったことはやっぱり結果的には、都市部の医師の負担を減らして、地方の医師不足を増やしただけです。そうなってしまったのも、その上の厚労省がきちんと足並みを揃えさせていないからではないか、それこには、なんとか医療費増額という厄介なところに手をつけずに、下の部署の対応で状況を改善できないかと考える厚労省の身勝手さがあるのではないか、と邪推してしまうのです。

さて、いただいたコメントでさすがのご慧眼と思いましたのは、
>医療行政の政策決定に関与してきた「審議会委員」を輩出した医療業界
というご指摘です。医療界もこれまで、厚労省側に人を送り込んできていたのに、医療崩壊への道をたどってきてしまった。それはきっと送り込まれた人材そして送り込んだ医療側の一部上層の人間たちの思惑が、下と乖離していたことも大きかっただろうと推測します。しかしそれさえ、外から見れば内部の事情です。そこは内部から変わっていただくしかないですし、声を上げて外に理解を求める以上、変わることは必須ですよね。

以上、私のご返信も長くなってしまいましたが、今後もご指摘いただいたように勉強を続けねばと改めて思います。また、難しいことが正しくわかるようになるだけでなく、その上で、難しいことをやわらかく噛み砕けるようでありたいと思います。

(法務業の末席さま)

>しかし労基法の適用を手加減し、医師の過重労働を是正しないことによって医療供給を維持しようとしても、生身の人間である勤務医が永久に過重労働に耐えることは不可能で、結果的に数年の内に医療供給能力は大きく減少してしまうでしょう。昨年より新規の医師養成枠を拡大する方向に政策転換しましたが、その効果が現れるのは少なくとも10年以上先の将来です。

>時間外や夜間お構いなしのいわゆる「コンビニ受診」や、取り敢えず薬を頂戴などの「ナントナク受診」を抑制しても、国民の健康維持が大きく損なわれたり、生命にかかわるような重大な社会問題が頻発するとは思えません。

同感です


>私自身はこのロハスでの堀米様の存在を高く買っております。(略)
>ただし医療の素人であるから出せる意見が貴重ということと、現実社会に対する勉強や認識も雑で構わないということは、等価ではないと思います。
>このエントリに於いても「公立病院の基締めである厚労省ですよね?」などという記述がありますが(略)
>単なる医療問題に関心のある「巷間の素人投稿者」や「素人の勝手ブロガー」とは違った責任感と真剣さをもってコメントなさるべきと思います。素人的視点ならではの問題感覚や主張内容と、素人だから間違った資料読みや誤解や勘違いもアリなんだ、ということは全く違うことと思う次第です。少なくとも医療メディアを標榜するロハスのインサイダーでおられるなら、医療制度や資料読みについてはそれなりの勉強はなさるべきでしょう。

同感です


(堀米さま)

まずは、厳しくてごめんなさい

>行政のやることがそんな風にばらばらで、場当たり的
>各部署がそれぞれの理屈で目先のつじつまあわせを繰り返してごまかしている
>そうなってしまったのも、その上の厚労省がきちんと足並みを揃えさせていないから
>医療費増額という厄介なところに手をつけずに、下の部署の対応で状況を改善できないかと考える厚労省の身勝手さ

思い込みや断定、棘のある言葉が目立つので、感情に火をつけることはあっても、憶測ではない事実や新たな情報がコンテンツにないので、冷静な読み手にとってはあまり意味のある記載になっていないのではないかと思います。


「正確な情報に裏付けられた事実を報じること」
「憶測をむやみに垂れ流さないこと」
「事実誤認があれば、直ちに訂正する潔さを保つこと」
「事実、伝聞、推測が容易に判別できるように書くこと」

指摘されてかわすのではなく、それを受け止めて是正していた堀米さまの素直で謙虚なスタイル(例えば結核のエントリーなど)が私は好きでしたが、残念ながら最近、そのようなスタイルが減ってきてしまっているようで少々悲しく思っていますが。

 私立病院であろうが公立病院であろうが、監督省庁が「厚労省」であることは間違いありません。もちろん私立病院の経営が報告されているわけではありませんが、その経営サンプルとしての病院を厚労省が持っていることは事実なのではないでしょうか?
 経営サンプルともいうべき国立病院がすべて黒字であり医師充足率、救急受診、看護婦充足率など良好であるならば他の経営母体の病院の運営が間違っているという事は言えますが事実はその逆です。自分たちのところでさえ達成できないのに、私立だったらできるからという論理はおかしいのではないでしょうかね。

>「バス事業の元締めである国土交通省」に、全国の市営バスなどの公営バス事業の赤字の責任を押し付けるような

 比喩の設定が完全に間違っていると思います。医療の場合、収入であるバス運賃も支出コストである燃料費や人件費も監督官庁が事実上決定しているようなものです。
 収入は値上げを認めず、燃料費に相当する人件費や人員配置は高いレベルで一方的に決めてしまうことに相当しています。

>医療行政の政策決定に関与してきた「審議会委員」を輩出した医療業界

 実質上の医療の方向を決定する、例えば中央社会保険医療協議会へ医療者を委員として派遣しているのだから医療側が納得するのが悪いという議論は乱暴なのではないでしょうか?
 保険点数改訂の時をはじめとして、日本医師会など医療側は毎回、要望や提言などを提出していますが、実際には財務省をはじめとする経営者側の論理で全て決まってきたのではないですか?
 この中央社会保険医療協議会は、労使交渉の場ではありません。労働者側にはその権利および実力行使としてのストライキという方法がありますが、医療側にそれをやれというのでしょうか?(ちなみに私は医療全体のためなら方法を選んでやるべきだと考えますが)

>医療需要を現状の医療提供能力で応じられる範囲内に減らす

 医療崩壊した英国が結局こうなりました。結果はというと手術適応の患者が5年待ち、救急患者の診察が5時間待ちという状態になり、行政側は過ちを認め医療福祉予算を1.7倍へあげたわけです。日本の国民はそれで納得していただけるのでしょうか?

 法を遵守し、さらに自由競争に任せるというなら(保険)医療の崩壊は決定づけられています。少なくとも日本の医療の方針を決定してきたのは厚労省(厚生省)であり、その方針が間違っていたことについて責任があるのが当然だと考えます。

英国では結果的に強固なホームドクター制が採用され、それまで医療機関が担っていた業務の一部が薬局に移譲されたのではなかったかと思います。

本年6月に施行される改正薬事法は、医療へのアクセスを間接的に妨げることで医療費の削減が見込める訳ですが、販売側に有利な日本の医療市場では医療者が考える万が一の場合(思い込みでの間違った治療や受診の遅れ等)に適切に対応できないのは明らかで(立場によってこの見解は異なるのでしょうが)、そこは圧倒的に英国と異なります。随分後になって、保険免責制やOTC類似薬の保険適用除外の方がましだったなんて話題が出るのでしょう。

日本が理念のない国とはよく言ったものですが、これからの時代にはある程度の覚悟が必要です。

とかく日本ではこのような手法が行われがちですが、正攻法ではどうにもならないから横から仕掛けるかの如き舵取りでは、広く国民の理解を得られるような制度づくりは難しいと思います。
また反論する医師会とて、医療を生業とする自負があるのであれば、出来高払いを悪用しての恣意的な算定を自ら是正するくらいの提案が出来なければ、建設的な議論をスタートすることも難しいでしょう。

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