初動は見事だったと思います。この調子でできるだけ頑張ってほしいと思います。

恐らく他の国でもここまできちんとやっているところはそうそうないかも知れません。この連休中、関係者は対応に追われると思いますが、どうかうまく乗り切ってほしいと思います。

検疫所のスタッフ不足が心配でしたが、空港や海港の集約化と他の検疫所からの応援に加えて、例えば防衛相が自衛隊医官の派遣を検討していることなどを表明したので、少し安心しました。こんな風に色々なところから支援があるということは、日本もまだまだ捨てたものではないですね。

今回は想定していたH5N1ではなく、意外にもH1N1でした。

今更ながら以下の方々がいかに慧眼であったことかと思います。

http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA02812_05

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/special/pandemic/topics/200811/508503.html

そろそろ２週間経ちます。

初動の水際対策や株の迅速な入手などは良かったのですが、そろそろきちんとした臨床経過や個々の死亡者の基本的な疫学データ（年齢、性別、発症後何日で死亡、主要症状および経過、基礎疾患、最終死因（推定の有無））などが整理されて示されても良い頃なのではないかと待ち望んでいます。（独り言）

サイエンスの電子版に今回のメキシコの新型インフルエンザアウトブレイクに関する国際共同チームによる分析結果が載ったという記事がありました。
http://www.sciencemag.org/cgi/content/abstract/1176062

概要までは無料で見られるので、役に立つかなと思い、勢いで訳してしまいました。

Pandemic Potential of a Strain of Influenza A(H1N1): Early Findings

要約
新型インフルエンザA(H1N1)は瞬く間に世界中に拡がった。その潜在的な蔓延能力を評価することは限られたデータからは困難であるが、適切な保健対応策のためにともかく情報を提供することは欠くべからざることである。メキシコのアウトブレイクや国際的な蔓延の初期データ、ウイルスの遺伝子学的多様性などを分析することによって、感染性と重篤度の早期評価を我々は行った。我々の推計では、４月下旬までにメキシコでは23,000名（6,000-32,000の範囲）が感染し、同時点までに報告された確定感染者死亡及び疑似感染者死亡をもとに患者死亡率(CFR)0.4%(0.3%-1.5%の範囲)が推定された。
VeracruzのLa Gloriaという小集落のコミュニティーアウトブレイクでは死亡に感染が寄与していないということがCFR0.6%の上限95%で示された。未だ不明な部分は残るが、臨床的な重篤度は1918年のものよりも低く、1957年のものと比較可能である。La Gloriaの小児に対する感染率(clinical attack rate)は成人の2倍（15歳未満61%、15歳以上29%）であった。３つの異なる疫学分析の結果R0推定値（再生産数）は1.4-1.6の範囲であり、同時に遺伝子分析では推定中央値の1.2が示された。この数値の範囲は４月下旬にメキシコにおいて発生したヒト・ヒト感染の14から73世代の間で不変であった。従って感染性は季節性インフルエンザよりも実質的に高く、前回流行のインフルエンザの低めのR0推定値と比較可能である。

今頃になって気づきましたが５月７日付けでNew England J Medのウェブサイトに米国内で発生した642例の患者についてできる範囲で分析した論文が掲載されていますね。
http://h1n1.nejm.org/

これで臨床像についてもおぼろげながら何となく理解できるような感じにはなってきましたが、肝心な死亡例についてのまとまった分析が未だにないのが残念です。

毎年春の花粉症のせいでしょうか日本人は人前でマスクをすることに割りと抵抗感がないようなのですが、米国人の場合は表情が見えなくなることを嫌がるのか、或いは格好悪いと思うのか、どうも人前でマスクをすることに心理的な抵抗感があるのではと私には思えます。