新人看護師、「辞めてもいい」―日看協副会長 コメント欄

投稿者: 新井裕充 | 投稿日時: 2009年05月02日 14:01

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厚生労働省は4月30日、「新人看護職員研修に関する検討会」(座長=石垣靖子・北海道医療大看護福祉学部教授)の初会合を開いた。 続きを読む

コメント

>同日の会合では、「医療安全」や「医療事故の防止」といった言葉は一度も出なかった。

この一文に鋭い新井さんを感じました。


>「新人看護職員研修の制度化・義務化」「ガイドラインの策定」などが同検討会の目的であることを改めて強調した。

基礎教育では”就職した病院の医療水準(環境)、医療機器、人員配置などに即した医療事故防止策”は教えてもらえないので、新人研修は重要と思いますが、
この技官の発言をみると、臨床医研修の失敗部分を繰り返すだけのように思えてなりません。

基本「何故離職するのか?」の検討をシッカリして欲しい!
離職の意味付けをプラスに変えての発想はすばらしい逆転の発想と思うが、現場レベルで考えると「医療崩壊」にますます拍車をかけてしまうと思うし、中にはいつまでたっても「青い鳥症候群」が居て、看護師そのものの評価は一般から見放される危険もある。ポイントはむしろ『卒後教育体制』の制度的な均一化と、時間をかけてもペイできるような体制作りにあると考えるが、看護協会としてはどうなんだろう?

労務管理の専門家として気になること、それは「離職」という言葉の使い方です。厚労省の担当者やこの検討会の委員の方々は、「離職」を退職によって勤め先の職場(病院等)を離れること、或いは退職によって看護師が医療界から離れてしまうこと、の両方の意味を引っかけて「退職」ではなく「離職」という言葉を使っているように感じる

しかしそもそも「離職」という用語は、普通は雇用保険制度の中でしか使われない用語です。そして雇用保険での「離職」とは、雇用契約の終了または中途解除の意味を総括する用語ですが、その中に次のような雇用契約の終了または中途解除の事例が包括されてます。
1:労働者から申し出た、自己都合の「退職」での雇用契約の終結
2:使用者から申し出た、使用者都合の「解雇」での雇用契約の終結
3:期限のある雇用契約期間満了による「雇止」での雇用契約の終結
4:就業規則の規定による「定年」での雇用契約の終結
5:労働者の死亡による「死亡」での雇用契約の終結
6:その他、休職期間の満了での「自動退職」等の雇用契約の終結

この記事での検討会で検討したいのは、新人看護師が自己都合の退職で勤め先の病院を移る「転職率」を問題にしたいのか、それとも勤め先を退職後は医療界は別な業界(無職も含む)に移る「業界を離れる率」問題にしたいのか、どちらであろうか。どうやら此処をゴッチャにしたまま、雇用保険の中でしか使われない「離職率」というテクニカルタームを、労務問題の素人である厚生労働省医政局看護課の担当者が使ってしまったのが、そもそもの躓きの元であろうと思われる。

退職した看護師は別の病院に移る「転職率」の高さの問題であるならば、それは退職者が多い病院の労働処遇の悪さを先ず検討すべきである。何故ならば短期間で退職する看護師は、勤めてみたら想像以上に処遇が悪い、もっと処遇が良い病院があることを知ったから、そっちに移りたいと考えて「退職」を申し出るのである。すなわちこうした「転職率」の問題は、看護師を雇う医療機関の、労務管理の巧拙の問題であって、退職率が高く看護師がすぐに辞める病院と、看護師の就職希望が多い人気のある病院との、労働処遇の実態を比較しなければ解決策は見えてこない。

なおここで言う労働処遇には、勤務時間や賃金などの労働条件の他に、看護師としての能力向上の為に勤務先が配慮してくれる、業務研修や教育訓練の実施の良し悪しも労働処遇に含まれる。

また、退職した看護師が別の病院などに移る「転職」ではなく、医療業界とは縁のない職業や無職に転じる「離業率」の高さを問題にしているのであれば、これは医療業界と他産業との労働処遇の魅力差を検討しなければならない。

いずれにせよ看護師が勤め先の病院などの職場を選ぶなり、看護師として医療界で働き続けるか否かを決断するのは、その看護師資格を持つ労働者の選択の結果である。すなわち様々な職場や職業と比較選択された結果、勤務先病院に退職を申し出るなり、退職した看護師が資格が医療界から離れてしまい、有資格者が社会に死蔵されてしまうのである。

そのように、自分達の提供している労働処遇の何処に問題があるから看護師が居着かないのか、そこを考えなければいけない。そしてその労働処遇についての検討会が医療界の人間だけで構成されていて、労無管理の専門家(労働経済学者や社会保険労務士など労務コンサルタント)が含まれていないのは、非常に奇異に感じられる。

この検討会は、医療界の中だけで物事を決めようとする、内向き指向体質の象徴のようなものだと思う。

>法務業の末席様

医療の末端にいる身から見ますと、

>医療界の中だけで物事を決めようとする、
>内向き指向体質の象徴のようなものだと思う。

というのはちょっと違うと思います。単純に医療界の偉い人たちは労働処遇に問題があるという事実に気づいていない(または意図的に無視している)だけのことです。したがって、労務の専門家に声をかけるという発想がないのは当然のことです。

医学教育でも看護教育でも浮世離れした奉仕の精神を信奉させられ、自身の処遇に関心を持つことは「悪」そのものであるかのごとく扱われます。滅私奉公を美徳とする上層部にとって、処遇問題という概念自体が頭に存在しないのでしょう。

処遇が改善される見込みがない状況で、押しつけられた理念と目の前の現実のギャップに苦しんだ看護師が退職してしまう…なんのことはありません、医師よりずっと前から「看護師の立ち去り型サボタージュ」が起きていただけのことです。ただ、7:1看護導入以前は辞めた分だけ入ってくる構造であったため、問題が顕在化しなかったのでしょう。

問題の本質を捉えていない検討会なのですから、そこから導かれる結論も推して知るべし、でしょうか。

法務業の末席 様

他所でも我々が「井の中の蛙」であったことを思い知らされるコメントで
大変勉強になります。今回も、自分も「離職」の用語について何にも
知らなかったことがわかりました。↑↑の背景があることでで、議論の裏側が
なんとなくわかりました。

一方、純千葉県産 奴隷医師 様のコメの
>というのはちょっと…
>医学教育でも…
には同感です。
ただし、教授クラスでも40代ぐらいだと変わってきてる感じ
もボチボチ。

いずれにせよ、貴重な解説を待っているのは自分だけではないと
思いますので、無理にならない範囲で続けていただければありがたいです。

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