謎の食中毒が増えてるそうです。

投稿者: | 投稿日時: 2009年06月28日 16:19

前々回、「カビはほんとに侮れない。」という話をさせていただいた時に、一言だけ、食中毒についても触れました。実際、食中毒もこれからの季節は件数がうなぎのぼりです。

東京都の過去10年の月別発生状況を見ても、2~5月までは月平均7件未満だったのが、6月には9件を超え、7・8月には12件以上、人数にすると各月とも200人を超えています。(ちなみに12・1月も件数が上昇しますが、これは特にここ数年、ノロウイルスの人⇒人感染が増えていることによるようです。)


しかも先日、原因不明の“謎の食中毒”が増えているのだとか・・・。

「謎の食中毒」増殖中…短時間で発症・回復、年間100件超
読売新聞 2009年6月22日


記事によれば、この数年、首都圏や瀬戸内海沿岸、北陸地方などで数が増えており、

【〈1〉主症状が下痢や嘔吐〈2〉食後、発症まで平均4、5時間程度と短い〈3〉軽症で回復も早い――という共通点がある。保健所などが残飯や吐しゃ物を検査しても原因となる細菌や毒素などが検出されず、原因が特定されていない。食中毒と断定されるには至らなかった有症苦情事案にも同様ケースがあるという。】

とのこと。


ノロウイルスも公式に食中毒の原因と特定されたのが10年ちょっと前で、それまでは原因不明とされていたそうですから、今後、同じように解明が進んでいくのでしょうか。(にしても、あくまで私の独断と偏見ですが、記事を読む限り発生が報告されたり多かったりする地域は、広島、神戸、東京、瀬戸内、福井など今のところ海に面した地方が多いようです。何か関係があるのでしょうか?また、原因不明にもかかわらず、これが他の疾病等でなく「食中毒」であると断定されるに至った経緯もちょっと興味深いです。)


さて、一般的に食中毒を防ぐために、気をつけるポイントをちょっと確認しておきます。詳しく知りたい方は、最後にご紹介する参考サイトにあたってみてください。今回の“謎の食中毒”も、食中毒であるならば、基本的なことを徹底していればおそらく予防できるはずです。症状は軽いようですが、小さな子どもやお年寄り、病気などで体力の落ちている人は油断すべきでないですよね。


【基本知識】

※食中毒は、化学物質による汚染や、食べた物自体(貝類、フグ、きのこなど)が自然由来で有している毒素によって起きる場合もありますが、今回は食品に付着した微生物によるものを見ていきます。


○200以上の疾病が、食品を介して感染すると考えられています。世界では毎年、何十億人もの人が、発展途上国・先進国を問わず、食品によって起こったと知らずにかかっています。

○食中毒を引き起こす多くの微生物(細菌、ウイルス、カビ、寄生虫など)は、分裂によって増えます。増殖するためには微生物は、栄養(食品)、水、時間、温かさを必要とします。その点、食肉、水産食品、ご飯、ゆでたパスタ、牛乳ほかミルク、チーズ、卵は、前者2つの条件を当初から備え、食中毒の原因となりやすいものです。

食品のにおいや味、外観は、必ずしも、食べて病気になるかどうかの目安とはなりません。

○食品を媒介とする病気によく見られる症状は、胃痛、嘔吐、下痢です。食べた直後に症状が出るもの、数日から何週間か経ってから現れるもの、いろいろですが、大部分は食後24~72時間の間に症状が出ます。

食中毒予防の三原則は、食中毒菌を「付けない、増やさない、殺す」です。


【予防① 購入と保存】


○生鮮食品を購入する際は、新鮮なもの(消費期限表示があるものはよく確認を。)を選び肉や魚からの水分が漏れて他につかないようビニル袋に小分けし、持ち帰ります。

○買ったら、寄り道などせずできるだけ早く帰り、家についてからもすぐに冷蔵庫・冷凍庫に入れること。とくに肉や魚の汁がほかにつかないよう、ビニル袋にいれたまま保存します。

○冷蔵庫・冷凍庫は詰めすぎると庫内の温度が上がったり、保ちにくくなるため、7割程度に(低温だと細菌等の活動は鈍化・停止しますが、死滅するわけではありません)。

○肉、魚、卵をさわる前後には、必ず石鹸で手を洗います。よく水で流すことが大切。


【予防② 台所・調理】


○調理代はもちろん、タオルやふきんをいつも清潔なものにしておきます。

手洗いは基本。トイレの後、鼻をかんだ後はとくに念入りに。生の魚、肉、卵をあつかった後も、よく手洗いを。

○生の肉や魚の汁が、果物やサラダなど、その後加熱せずに食べる食品にかからないよう注意します。まな板は熱湯消毒してから使います。(切る順番を考えたり、まな板・庖丁を使い分けるともっと安全です。)

○ラップしてある野菜やカット野菜もその都度、洗います。

○冷凍してある食品を室温で解凍すると食中毒菌が増える場合があるため、解凍は冷蔵庫の中や電子レンジで行います。また、水を使って解凍する場合には、流水を使います。

一度解凍した食品を再冷凍しないこと。繰り返すと、原因菌が増えることがあります。

○包丁、食器、まな板、ふきん、たわし、スポンジなどは、使った後すぐに洗剤と流水で良く洗います。漂白剤につけおき洗いしたり、熱湯・煮沸消毒するのは有効です。

○加熱食品は、十分に火を通すこと(中心部の温度が75℃で1分間以上)。特に、鶏肉、豚肉、羊肉、ひき肉、川魚など。鶏卵も、とくに夏の間は、衛生的に生産され新鮮であることが確かでない場合は、しっかり加熱するのが無難です。

○調理をある程度の時間中断する時は、冷めてから冷蔵庫に入れておきます。その後調理する時も、十分に加熱を。

○調理したら、清潔な手で、清潔な器具を使い、清潔な器に盛ります。とくにお弁当を調理・箱詰めする時は、できるだけ素手で触らないようにします。おにぎりは、ラップにご飯をのせ、ラップごと握ります。


【予防③ 食事と残った食品】


○食べる前にも手洗いは基本です。

温かい料理は65℃以上、冷やして食べる料理は10℃以下に保っておくこと。常温だとすぐに菌が増えます。

○残った食品を扱う前にも手を洗い、清潔な容器に保存します。

○残った食品は、早く冷えるよう浅い容器に小分けし、冷めたらすぐ冷蔵庫・冷凍庫へ

○食卓に出ていた時間が長い時は、思い切って捨てること。

残った食品を温め直す時も十分に加熱します(75℃以上)。味噌汁やスープなどは沸騰するまで。

○ちょっとでも怪しいと思ったら、食べずに捨てること。味などでは分からないので、決して口に入れないように。

【かかってしまったら・・・】


○下痢や嘔吐をしたら、しっかり水分をとります。

自分で勝手に判断して薬を飲まないこと。まずはお医者さんに診てもらいます。

さかのぼって3日間のうちに、食べたもの、食品の包装、店のレシート、吐いた物が残っていたら保管しましょう。食中毒の原因を調べたりするのに使います。

○特に症状が重くなりやすい人は以下のとおり。乳幼児や高齢者、妊娠中の女性、肝臓疾患、がん、糖尿病の治療を受けている人、 鉄剤を飲む必要のある貧血の人、胃腸に問題がある(胃腸の手術をうけた、遺産が少ないなど)人、ステロイドが入っている薬を飲んでいる人、HIVに感染しているなど免疫力が落ちている人。医師に伝えましょう。

かかっている恐れのある人や、治って2日を経過しない人は、家族のためあるいは飲食店で調理はしないこと。そうした人が使った調理器具は熱湯消毒が必要です。また、下着や衣類は別に洗濯し、家族の後にお風呂に入り、毎日湯船のお湯は替えること(残り湯は洗濯に使わない)。

○患者を介護したり、汚物の処理などをした人は、手を良く洗うこと。本来は、事前に手袋・マスク着用をします。


【参考サイト】


○家庭でできる食中毒予防の6つのポイント (厚生労働省)
食品を買ってくるところから保存、調理準備等に分けて大変丁寧に気をつける点が書かれています。 

○WHO 食品をより安全にするための5つの鍵 《5Keysマニュアル》 日本語版 国立保健医療科学院作成 (国立医薬品食品衛生研究所)
上で紹介した“5つの鍵”の解説。微生物についての解説から、化学物質による食中毒まで、より専門的ですが、平易な言葉で書かれています。

○原因からみた食中毒の種類とその予防 (富山県)
食中毒の原因はいろいろありますが(詳しくは下記サイト)、中でも私でもよく耳にする原因細菌(腸炎ビブリオ、サルモネラ、カンピロバクター、黄色ブドウ球菌、ノロウイルス、O-157等)などについて役立つ解説が載っています。ざっと読むのにおすすめです。

○食中毒をおこす細菌・ウイルス図鑑 (農林水産省)○食中毒かな?と思ったら (農林水産省)


ちなみに、私は10年ほど前、中国奥地でサルモネラにやられ、帰国後にひどい目にあいました。当初、風邪と誤診を受け、症状が悪化して悲惨でした。身体的苦痛としては今振り返っても過去1番かと思うほど。上に挙げた食中毒の典型症状がいっぺんに襲い掛かり、激烈な腹痛は、陣痛よりつらかったです。小学生の頃、生牡蠣にあたった時(ノロウイルス)も、一家共倒れになったのを覚えています。きちんとした旅館で出された赤貝であたったこともあります。食中毒、表沙汰にならないケース(本来は医師が保健所に届け出る義務がありますが、診断が確定できないことも多いようです)でも、外でもらうことも意外と多いのです。


ただ、今思えば、サルモネラの時も、赤貝の時も、ちょっと~かなり怪しいと思ったりもしたのです(ヤギを屠殺した大鉈みたいなのでメロンを切っていたり、夏に海沿いでもないのに赤貝のお刺身が出たり・・・)。でもなんとかなるだろうと思ったのが、やっぱりダメでした。ま、大丈夫なことのほうが多いんですけどね。生卵とかもサルモネラ汚染が言われますが、それほど世間では大騒ぎになっていませんし。でも、あたると実際、非常につらいものです。健康な人でも、とくにこの時期は油断大敵。甘く見てはいけませんね。

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コメント

最近どこかで記事見たんですが、忘れたんで、ググってみました。この「アナフィラキシーショック食中毒」なんてどうでしょう?
http://case-report-by-erp.blog.so-net.ne.jp/20080802

リュートさま

参考URL拝見しました。青魚のヒスタミン中毒ですね。これが謎の食中毒かどうかはちょっと怪しいですが・・・。

とはいえ、これ、実はうちの子供(現在2歳)がその一歩手前のような状態によくなるのです。他の子は大丈夫らしい時でもうちの子だけ発疹が出たりして。今のところそれだけで他の症状がないからいいのですが。なんだろう、と思って小児科を受診したら「アレルギーではないんですが、魚に含まれるヒスタミンのせいですね」といわれたことがありました。中毒とまで言われるようなものだったのですね。ちなみに息子はマグロ、カジキマグロ、鯖などで今まで発疹が出ました。

いずれにしてもご紹介ありがとうございました。他人事とは思えず、大変興味を持ちました。いずれまた調べて書かせていただこうかなと思います。

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