救急搬送・受け入れルール策定し、地域医療にPDCA機能を-開出英之消防庁救急企画室長インタビュー |
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投稿者: 熊田梨恵 | 投稿日時: 2009年07月16日 21:55 |
インタビュー
開出英之氏(総務省消防庁救急企画室長)
「救急搬送に今までなかったPDCAサイクルを機能させてほしい」-。都道府県に救急患者の搬送・受け入れルールの策定を義務付けた改正消防法が、今年4月に成立した。救急搬送の受け入れ照会数や現場滞在時間のデータを出せるようになるため、事後検証して医療提供体制の改善につなげられる。今後の救急医療現場や地域医療体制への影響について、この法改正の裏方を担った総務省消防庁の開出英之救急企画室長に聞いた。(熊田梨恵)
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コメント
ある県の救急医療に関わる医師です。MC協議会にも参画しています。
まず、この新消防法はいわゆる「大都会の論理」だということを強調させていただきます。
法の実施背景に、搬送困難事例が多発(?)したためとありますが、実際に日本国内のほとんどの医療圏では「5件以上に応需要請をした事例(いわゆるたらいまわし)」はごくまれで、ちなみに当県では数千件に1件というオーダーです。しかもそれらはクレーマーといわれる有名問題患者を断る事例ばかりで、急を要する患者ではありません。
ただ、東京や大阪のように半径10km以内に数十の救急病院がある地域では「どこか他の病院が取ってくれるだろう」という意識が働き、安易に不応需となります。
救急病院が1つしか存在しない地方では不応需はありえません。
もうお解りのように、開出室長が描いているような「疾病別、重症度別の受入先選定」という概念は大都会でしか通用しません。ほとんどの地域は「うちで充分な初療はできないかも知れないが、とりあえず受け入れます。他にいく所がないのだから」という状況で応需しているのです。
先日、県の医療課から法の11月実施に向けてMC連絡協議会に説明がありましたが、各医療圏のMC委員長全員が「まさに絵にかいた餅。こんなことをすれば逆に地方の救急は崩壊する」と異口同音に述べていました。県の担当も法と実態との解離を理解したようでした。
各病院の救急体制が不十分である(例えば日本では救急告示病院の8割以上に救急専門医すらいない、など)という根本的な問題を解決しなければ、いくら法をいじっても同じ事です。
スケアクロウ様
コメントありがとうございます。
仰るお話、これまでに開かれていた消防庁の会合中の議論でも出ていたことを思い出しました。
「救急患者を受け入れられる病院が1つ2つしかないような地域では、救急隊もそこに運ぶことを前提に考えているし、病院も受け入れざるを得ない」といった趣旨の意見が何度かあり、「そうした地域ではそのままの体制で、実情に合わせたルールにするしかない」といった形に落ち着いていたかと思います。
今回の作業部会でもあった搬送先のリスト化のような話は、それができる医療機関の多い地域の話なのだろうと私も理解しております。