苛酷な勤務 最大の原因は医療界自身に コメント欄

投稿者: 川口恭 | 投稿日時: 2009年07月26日 00:21

第64回日本消化器外科学会学術総会の特別企画『消化器外科医の勤務環境改善のために何をなすべきか』(18日開催)で日本臨床外科学会会長の出月康夫・東大名誉教授が大変に踏み込んだ特別発言を行ったので、ご紹介する。(川口恭)

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コメント

>もうひとつ最大の原因は、医療界自体にあったと思う。

>日本医師会が今まで何も手を打ってこなかった。
>加えて勤務医や私たち学会も何も言ってこなかった。
>私たち自身に責任のあることだと思う。

>学会の中だけでやっている限りマスターベーションに過ぎない。

>『先生方そういうことを言うけれど何もしてないじゃない』と言われてしまうのがオチ。

>そういう職種を医師としても育てていくということを皆でしなければいけない。
>それにもし医師会が反対するようなら医師会を蹴飛ばせばよい。

それにしても、よくぞまぁズケズケと言い放ったこと。
でもねぇ、医療界の外にいる者として、大いに肯けることばかりです。

医療崩壊の元凶の一つが医療費抑制政策であることに異論はありませんが、しかし問題はそんなに単純ではないとも思います。

診療報酬を上げることは医師会も訴えていますが、仮に医師会の言うとおりにやったとしても勤務医の労働環境が改善するとはとても思えません。なぜなら医師と言う医療資源が有限だからです。仮に診療報酬が上がったとして、現在の勤務医がより開業しやすくなるのであれば残された勤務医の労働環境が改善することはありません。つまり勤務医の労働環境を改善させるのに最も必要な施策は、勤務医と開業医との待遇の勾配を逆転させることだと考えます。一昔前、医療崩壊の進行と時を同じくして開業ブームがありましたが、こんなのは以ての外で、当時の勤務医の逃散を止めきれなかったことこそが傷口を更に大きくさせてしまったと考えています。

じゃあそのことをなぜこれまで勤務医が誰も訴えてこなかったのかと言えば、生涯一勤務医で生きることを決めている勤務医などごく僅かであり、ほとんどの勤務医が開業医予備軍であるからに他なりません。ご発言に
>『先生方そういうことを言うけれど何もしてないじゃない』と言われてしまうのがオチ。
とありますが、それはこのことをまずマスコミの方に理解してもらうしかないのでは?とも思います。


ただし、数少ない生涯一勤務医が教授なのですが、多くの教授様達が自分の医局員の派遣先における労働環境に全く無頓着であったことは大罪であると思います。これも仮にですが、各地域・分野で人権を握っている教授達が自分達が派遣している医師の労働環境を少しでも改善しようと言う気概さえあれば、それなりの効力を発揮できるのではないかと思います。医師会幹部に勤務医がいないのと同様、学会幹部のほとんどは教授です。医療費のことや裁判の話をする前に自分達の権限内でできることの見直しを学会内でされた方が賢明なのではないかと思います。

一昔前に比べ教授の権限も大分落ちぶれており、大学の復権を声高に訴えられている先生もよく見かけますが、本当に復権したいなら医局員を身体を張って守ってみせるぐらいの気概を見せて欲しいものです。

地方小児科医 様

>教授達が自分達が派遣している医師の労働環境を少しでも改善しようと言う気概さえあれば、それなりの効力を発揮できるのではないか

労務のプロとして、このご意見には強く同意します。

医師を派遣してくれという要請を受けたとき、
「当直の回数は月に何回以下、日勤~当直~日勤の連続勤務は不可、最低限これが守れないところにはウチから医師は出しません!」
と医局の教授が条件を付けるだけで、医局からの医師派遣に頼っていた公立病院の労働環境は全然違って来るであろう・・・。

今からでも「過重労働を常態とする病院とは縁を切ります!」と大学医局が通告するだけでも、もの凄いインパクトがあるはず。

あ~、でも研修医制度のせいで、大学医局の権勢も低下したか。

法務業の末席 様
コメントありがとうございます。

>あ~、でも研修医制度のせいで、大学医局の権勢も低下したか。
今や有力な施設は大学に頼らずとも自前で自由にレジデントを雇用・育成できるようになりましたので、このような施設に対する大学医局の権限は格段に弱まりましたが、地方病院とか誰も行きたがらないような病院は未だに大学からの派遣医師に頼らざるを得ない状況もあります。

ですから、
>今からでも「過重労働を常態とする病院とは縁を切ります!」と大学医局が通告するだけでも、
>もの凄いインパクトがあるはず。
これはこうした施設にはまだまだ有効な手段であるはずです。

逆に言えば、誰も行きたがらない病院に自分の医局員に行ってもらっているにも関わらず、彼らの労働環境、即ち時間外勤務時間数やそれに対する正当な報酬の有無に全く無頓着な教授の医局などそのうち全医局員から見放されたとしても仕方ありません。

当の教授本人は地方医療を支えるために医局員を出しているつもりなのでしょうが、医局員の労働環境を無視した医師派遣を続けることがいずれはその地域医療を崩壊させることになるのだと早く悟るべきだと思います。

研修医・勤務医時代は学会発表に追われ、「学問」を求める(あるいは、学会発表だけでなく論文も書いて、アカデミックに「出世」しようとする)。医学部に残るなら、教授、ひいては学会長(定年間近の教授の花道)が目標。教授選に敗れると、しかるべき病院の部長か院長か副院長あたりに急いで就職。医学部に残らず勤務医をしていても、院長はたいてい大学教授の天下りなので副院長か部長が上がり。
でも、大学や大病院の勤務医のおかげで、学問としての医学医療は、どんどん進歩してよくなってきていることは事実。これすべて、医者が自腹切ってやってるんです。大学院の授業料まで払って、実験器具はバイト代で払って。医学が進歩すれば、医療費はどんどん上がる。新薬、最新検査項目、手術機器。患者さんは、最新医療に殺到する。
勤務医としての激務に疲れてくると(あるいは親が開業医や病院オーナーで「戻ってこい」と言われると)、開業医になって、医師会の幹部になる。政治に顔が利くようになり勲章をもらうのが目標。
医師会は患者国民は「お客様」として大切にはするが、あくまでも、政治力での自分たちの報酬確保が目標。学会も、「患者」という言葉が設立趣旨に見当たらない学会も多く、目標はあくまでも「医学の進歩」と「学問」優先で、製薬会社からの寄付で各地持ち回りの年次総会で地域振興に貢献するぐらいか。「市民講座」を学会で開催するようになったのは良いことではあるが。
昔は開業医は「往診」して結構24時間過重労働だったが、いつ頃からだろう、9時5時というか、勤務時間を限定するようになったのは・・・ビル診療が増えて地域住民でなく勤め人を患者にすれば、それですむのだから。開業医が担っていた24時間の地域医療が救急に転嫁されるようになって、患者が期待する医療レベルがぐんと上がってしまったことは紛れもない事実(往診カバンひとつの町医者に、CT撮れなんて要求は誰もしなかった・・・)。
勤務医は、労働条件がかくも悪化しても全く声も挙げず、かなり「権利の上に眠る者」だった。まあ、それの報いを今受けていて、逃散するか権利を主張しようとするかの選択はし始めたけれど。
で、どの医者が一番「患者の味方」かというと、経済的に中立なのは勤務医なのだけれど、それも、私立病院は売上が少ないと居心地が悪くなるのでそうそう患者さんの立場だけでは診療できない(外来の数をこなしても赤字で忙しいだけというむなしさ)し、最近は患者が主権者のはずの公立病院でも稼げという圧力がすごい。開業医は要するに数をこなすこと、とてもとても病院の勤務医のように長い時間をかけて説明などできない。
医者が患者のために良心的に働いたら報酬も保証され、ちゃんと休みも交代で取れる、そういう制度にすると、どのぐらいの消費税アップになるのだろうか(現実的解決策は、医者を増やし医療費を上げるしかないので、財源はやはり消費税しかない・・・官僚が天下りをやめるはずがない以上)。
とにかく、国民のみなさん、今のままではもう日本の医療はもちませんよ・・・国は医療費抑制しようとしているけれど、病院単位では稼がにゃつぶれるんだから。この矛盾。どっちなの、病院は儲けちゃいけないのか、それともつぶれちゃいけないのか?はっきりさせてほしい。
病院で、医療費を稼ぎ出しているのは、すべての指示を出し手技手術をしている医師なのだが、その医師を助けることによって給料をもらっている事務員や検査技師の給料は報酬には全く無関係。で、労働条件が良く、時間外手当全額支給の彼らのために、医師が時間外手当なしで土日も出勤して夜中も呼び出されて過労死してるの。電子カルテになって、医師が全部入力すべしってことになって、事務は楽になって医師がコンピュータに向かってて患者さんの顔見る暇がないの。
おかしいですよね・・・。

>昔、学生の時代にストを打って宮城前を駆け回ったのと同じように何らかの行動を医師はきちんと示さなければいけない。それが国民に現状を理解していただく最大の手段だろうと思う。

学生がストを打って皇居前を駆け回った時、国民は現状を理解したのですか?
「学生は元気があってええのお」か「親のスネかじっていい気なもんだ」、
せいぜい「まあ言いたいことがあるのはわかった。何が言いたいのかはわからんが」がいいところではなかったですかね。

どんなに医者が現状の過酷さをアピールしても、国民は絶対理解を示さないと思います。
「でも年収1000万円でしょ」でおしまい。
時給換算ではコンビニの店員以下だ、などと反論しても、
「でも1000万円もらってるんでしょ」で判断停止。
「うちのダンナは残業残業でへとへとだけど、年収400万円いかないんです」
「今の時代、仕事があるだけでもありがたいと思いませんか」
「それだけ貰えるなら、どんな忙しくても俺がやりたいよ」等々。
この溝は大きい。そしてこういう国民の言い分は、ある程度スジが通っている。
根本のところでの価値判断が間違ってるけれど。

だからゲバ棒を振り回しても無駄だと思われます。
粛々と逃散するしかないんでしょうね。国民が価値判断の過ちに気づくまで。
気づかざるを得ないような状況になるまで。

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